佐倉の自己紹介と状況説明(3)
記事の全文は以下の通りだ。
『神楽大学ミスターコンテストで不正発覚』
昨年の神楽大学のミスターコンテストで、不正な取引が行われていたことが発覚した。
ミス・ミスターコンテストの主催団体の二名、渡辺亘(当時三年)と権田凱亜(当時二年)は、昨年度のミスターコンテストにエントリーしていた小泉航太(当時二年)にグランプリの確約をさせることと引き換えに、彼からグランプリの優勝賞金五十万円を含む現金百万円を受け取ったことが当事者らへの取材でわかった。
【偽りのプロフィール】
九月某日、新聞部の筆者のもとに一枚のメモリーカードが手渡された。そこには昨年のミスターグランプリに選ばれた小泉の真の姿が収められていた。ミスターコンテストの公式ホームページで発表された彼のプロフィールには身長一七五センチ、出身地は東京、趣味はバイク、アルバイトは港区のお洒落なバー、TOEICの点数は八八〇点とあった。しかし今回我々が入手した情報によると、彼の身長は一六九センチ、出身地は埼玉、免許証は原付限定、アルバイトはチェーンのリーズナブルな居酒屋、TOEICの点数は四四〇点という、公開されたプロフィールとはいずれも食い違ったものだった。以下に証拠写真を載せる。
【小泉が明かした主催団体の不祥事】
入手したデータの裏をとった神楽大学新聞部は、小泉の元を尋ねた。彼は潔くそのことを認めた。正直なプロフィール情報を主催団体に提出したのだが、グランプリにふさわしいようにと、いくつかの経歴や人格などの小泉のプロフィールが主催団体によって強制的に変更させられたのだと自白した。さらに彼は、二〇一六年度のミスターコンテストグランプリの確約と引換に、主催団体に現金を要求されたことについても語ってくれた。その取引は主催団体から持ちかけられたのだと言う。強引な彼らの要求を拒みきれなかったことを、小泉は悔いている様子だった。
当初主催団体側は事件への関与を否定していたが、小泉の銀行口座の送金データが動かぬ証拠となり、渡辺亘(四年)と権田凱亜(三年)の二名は罪を認めた。
【大学におけるミスコンについて】
大学におけるミス・ミスターコンテストは普通、大学側から認可を受けて開催するものだ。それは大学名や大学内の施設、人物を使うため、当然のことである。また、主催団体も建前上は大学の広報としての役割をグランプリ受賞者に持たせる名目でやっている。所属団体からの許可を得ない広報とは、おかしな存在だ。
学生諸君も既にご存知の通り、神楽大学はこれまでずっとミスコン開催に対し反対の姿勢を貫いてきている。ミスコンとは、主観に基づいて人を順位付けする野蛮な行為であるためだ。学生側もこの考えに賛同し、神楽大学では過去数十年の間、ミス・ミスターコンテストは開催されてこなかった。
二年前から突如開催された神楽大学ミス・ミスターコンテストは、大学非公認の状態で、本学のごく一部の学生たちが強行したものである。そのような中で、ミスコン主催団体による不祥事は起きてしまった。彼らは一体何のためにミスコンを開催したのだろう。私利私欲のために、本学の名を傷つけたと思われても仕方がないのではないだろうか。
(佐倉創一 法・一年)
【十月二十日 筆者追記】
本日、ミス・ミスターコンテストの元主催団体の渡辺亘、権田凱亜の両名に退学処分が下った。
また、ミスコン主催団体は公式サイトを通じて謝罪文を発表し、今年度のミスコンが中止となることが伝えられた。同団体は解散し、来年度以降もミスコンは開催されない見通しだ』
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