エピローグ
第13話 エピローグ
十二都市同盟基地内にある食堂
ソヴァルは親子丼を食べていた。
「隣りの席空いていますか?」
聞き覚えのある声に顔を上げるソヴァル。
デグラとルミナスが近づく。
「どうぞ」
ソヴァルは促す。
別の席にミラーやタリク、そこから二列離れた席にグレースやアンナたちがいる。
「デグラ。アノマリー基地で目覚める前、花畑にいてトンネルを抜けるとゴミ捨て場に雪風の船魂と戦闘艇センチネル号の船魂がいてさんざん追っかけられた。彼女に刺された後は覚えていなくて気がついたら港にいた。貨物港ターミナルにいて向かい側に発着デッキがあって都市が見えた。貨物港ターミナルにガイアがいて戻りなさいと言われた。その後は覚えていない」
ソヴァルはお茶を飲んだ。
「それはね。臨死体験だよ。あの世とこの世のはざまにいた。多くの人々は花畑だったり大きな河岸、または海岸を歩いている記憶がある。対岸は「あの世」だ。君は一時的に「中継点」「結び目」にいた事になる。亡くなった人々は海の上や川の上を歩いて向こう岸に行く。マシンミュータントやジプシーの場合は宇宙港や普通の港や発着デッキになる」
デグラはわかりやすく説明する。
「じゃあ僕は臨死体験で雪風とセンチネル号の船魂に追っかけられて花畑で踊り、貨物港ターミナルに来たんだ。対岸はアノマリー基地の発着デッキだった。たぶんあれは雪風の記憶だと思う。あの船魂は戻れとか共有しているから戻らないと防衛部隊に戻れないとか戦えないし飛べないと言ってきた」
困った顔をするソヴァル。
「君は雪風、戦闘艇センチネル号と体や動力、コアを共有している。損傷を追えば同じ場所に傷を負う。時々自分の記憶でないものを思い出しますか?」
デグラは核心にせまる。
「雪風の記憶みたいだけど試運転の様子や建造される様子の記憶があったり、戦闘艇があった惑星なのかそこで整備を受ける記憶があったりする」
ソヴァルがうなづく。
「記憶も一緒に共有しているみたいね。ジプシーやマシンミュータントも融合する船の記憶を共有するみたいなの。特にジプシーはヤドカリ生活をするからその都度、船魂と記憶を共有する。慣れるしかないわね」
ルミナスは真顔になる。
「そうなんだ」
ソヴァルは親子丼を食べながらうなづく。
「記憶の融合が起きているんだね。それは大事にしなさい。君は雪風と戦闘艇の船魂と心を一つなんだ。それは何かを守りたいという心だ。ほとんどの船は目的のために建造される。雪風はほぼ宇宙戦艦といってもいいほどの戦闘艦だ。防衛部隊の船でもある。戦闘艇もどこかの惑星を守るための物だ」
デグラは紅茶を飲んだ。
黙ったまま親子丼を食べるソヴァル。
でもそんなに驚いていない。守りたいのは一緒なんだ。
「親子丼おいしい」
笑みを浮かべるソヴァル。
自分には生身の部分はないが味覚はちゃんとある。それはセンサーや感知機器のおかげだが自分には五感の役割をする機器はあるしこの体でも充分に楽しめる。
「ルミナス。僕は時空魔術を使えるの?」
ソヴァルは聞いた。
「君に魔術は使えない。金属をソファのようにやわらかくする能力があれば充分だ。それに他のジプシーやマシンミュータントにはない能力だ。それは武器にもなり守りにも使える。大切にしなさい」
デグラは言い聞かせるように言う。
「わかった」
ソヴァルはうなづいた。
数日後。時間のはざま永久牢獄
グレース、シエナ、ルミナス、ソヴァル、ロドリコは案内の看守の後についていく。
周囲を見回すソヴァル。
ここは永久牢獄と呼ばれる時空のはざまにある刑務所である。場所は時間断層の内部にあるが時間も存在しない。ここに入れられるのは時空魔術師やネクロマンサー、邪神、悪魔に身を捧げた暗黒魔術師や人喰いたちのリーダー、時空侵略者たちが収監されている。脱獄しても時間と時空の永久に彷徨い続けループからは出られない。看守たちは赤紫の外套に軽装備のアーマーを着用。顔には仮面をかぶっている。
長い廊下を進み、いくつかの監房を抜けると面会室があった。
部屋にオレンジ色の囚人服を着たガイアスがいた。アクリル板の向こうにガイアスが座り、背後に看守が二人いる。
「やあ、雪風。また会ったね」
ガイアスは笑みを浮かべる。
椅子に座るルミナスたち。
「僕は刑務所を見学に来ただけ」
そっけなく言うソヴァル。
自分としては来るつもりはなかったが永久牢獄とはどういうものかを見学に来た。ただそれだけである。
「雪風。よくも僕の先祖たちが作った装置を壊したな。代償は払ってもらう」
ガイアスは目を吊り上げる。
「ブラックホール装置と時空ポータル装置でしょ?だってほっとけば月や火星だけでなくて太陽系や天の川銀河だけでなく他の銀河系を飲み込もうと移動する危険な物だから壊しただけ」
しゃあしゃあと言うソヴァル。
「残念だね」
ロドリコが割り込む。
「異世界から来た魔術師よ。覚悟しろよ。僕の仲間は異世界にもいる」
すごむガイアス。
「元いた世界でも君の仲間を見たよ。それは現地の時空管理局に引き渡した。君の仲間にはクロノスや他の時空侵略者もいたからチームでなんとか捕まえて引き渡した」
腕を組むロドリコ。
笑みが消えるガイアス。
「本当にロクでもないわね」
たんかを切るグレース。
「おまえの仲間はいずれ追い詰めて刑務所にぶち込んでやる」
シエナがしれっと言う。
「雪風。君は最大パワーで「解き放つ」を使ったね。おまえはその力に苦しむんだよ。その力でいずれは破壊するんだ!」
声を張り上げるガイアス。
「僕は暴走なんかしない!身近な人たちや仲間を守りたいだけ!」
思わず声を荒げるソヴァル。
「やめろ!挑発に乗るんじゃない」
制止するロドリコ。
黙ってしまうソヴァル。
「雪風。痛みを感じるんだね。エンジンや動力部が損傷すればコアが痛い。共有しているのは知っている。切り離すのは簡単だよ。僕たちの仲間ならできる。完璧にね」
冷静な顔になるガイアス。
「じゃあなんで僕に言わない」
シエナがわりこむ。
「おまえの種族など興味はないし価値はないからね」
クスクス笑うガイアス。
歯切りするシエナ。
「シエナ。気にしなくていいよ」
ソヴァルはシエナの肩をたたく。
うなづくシエナ。
「そういうあんたも囚人服がお似合いね。無様ね」
グレースが怪訝そうな顔で言う。
「おまえに聞きたい事がある。タンガロアやバルボアはどこだ?」
ルミナスが話を切り替える。
「そんなのを口を割ると思うか?」
ガイアスは真顔になる。
「インテリジェンサーやディープビジョンの本拠地をどっかで見ただろうに」
ロドリコが身を乗り出す。
「僕はそれがどこにあるのかは知らないね。そんなものは関係ないからね。僕は手伝いをしただけ」
すました顔のガイアス。
「手伝い?」
ルミナスが聞いた。
「幾層にも連なる時間断層の内部で会議する。覆面をかぶった連中だ。上位の高次元生命体とだけ言っておく。高次元生命体でも生命のエキスがほしい。または人喰いがやめられない連中もいるし、権力に取りつかれている奴もいる。そういった連中のお手伝いを時空侵略者たちは手を貸してあげて手伝いをしてかなえてあげている。そういう請負業だ。代償もそれなりに高いけどね」
ガイアスは成果を報告するサラリーマンのように自慢げに言う。
「じゃあそのリスクは高くつくし、代償も大きい。大いなる宇宙の光の元に連れて行き「分解」の刑となるだろう。ある程度、集合意識でつながっているなら他の時空侵略者に伝えるのね」
ルミナスは語気を強める。
「覚えてろよ!銀河連邦と他の組織め。僕がやられても次が来るからな」
ガイアスは目を吊り上げる。
「連れて行け」
ルミナスは合図する。
二人の看守に腕をつかまれるガイアス。
わめき暴れながらガイアスは看守に引っ張られ出て行った。
スパルタンナイト クリスタルと15歳の決断 ペンネーム梨圭 @natukaze12
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます