第一話「ギルドで依頼を受けよう!」【後編】

GM:足跡は開けた場所を抜け、もう少し奥まで続いています。——しかし、途中まで進んだところで異変を見つけます。そこまでは普通に歩いていた足跡が、急にその場でバタバタと何度も踏みしめられたような不自然な足跡になっています。

アザレア:あら?

GM:おそらくそこで立ち止まって右に行くか左に行くか悩んで何度も足跡が作られたのでしょう。最終的には進んできたけもの道から外れ、背の高い草木がたくさん生えているところへと進んだようです。

グラウム:なるほど。

GM:ただそちらに入ったことまではわかりますが、背の高い草木に覆われた場所で、これ以上足跡を追うのは無理そうです。

クリム:うーん、声かけしたいけど周りの獣が寄ってきても面倒だしなあ。

アザレア:この状況で名前を呼びながら探すのは危ないかな。敵対的な『森のくまさん』になっても嫌だしね。(一同笑)

クリム:もう一度足跡追跡判定しても無理?

GM:もう無理だね。草木が多すぎて追跡すべき足跡がもう見えない状態だ。

アメリア:何か草木が折れてたりとかしないかしら?

GM:なるほど。それを探すなら「探索判定」としようか。周辺で草木が折れてたりなどの異変を能動的に探すということで。スカウトかレンジャー技能で目標値10としよう。

アメリア:了解。(ダイスを振る)あ、いっぱい出た。14。

クリム:一応平目で振るよ。(ダイスを振る)失敗。ウルフのう○こしか見つからないなー。

グラウム:(ダイスを振る)やった! 50点!(←1・1の自動失敗)

アザレア:(ダイスを振る)あー惜しい! 1・2だった。

GM:1・2で惜しいってなんやねん! そういうゲームじゃねえから!(一同笑)

アザレア:スカウトたちがすみません(笑)。

GM:えー、グラウムがウルフのう○こを踏んでる間に(一同笑)、アメリアは足跡が途切れたところから少し離れた場所で、倒れた大木ののようなところに隠れている男性を発見します。

アメリア:あら、あなたは……名前なんだっけ。(一同笑)こっちに人がいるわよー!

クリム:モブ顔がいたか!?

アザレア:トルシエさんね(笑)。

グラウム:今そっちに行くぞ。う○こ踏んだ足を地面に擦り付けながら。

GM:頭を抱えてうずくまっていた男性ですが、アメリアが皆を呼ぶ声に「ひえっ」とびっくりしながらも顔を上げてきます。「き、キミは……?」

アメリア:怪しい者じゃないわ。なんとかって村からの依頼でなんとかって人を探してるの。(一同爆笑)

グラウム:それじゃ何もわからんだろ(笑)。

アザレア:(笑)えーっと、ウィル村長からの依頼でトルシエさんを探しに来てるんだけど……。

アメリア:そうそう、そんな感じ。(一同笑)

GM:「ああ、そうなのか!」と男性は安堵の表情をする。「僕がそのトルシエだよ。よかった、助かったよ……」と言ってきます。

アザレア:やっぱりそうか。無事で良かったよ。

アメリア:しかし、なんでこんなところに?

GM:「この森には狩りをするために入ったんだが、普段なら二人で来るところをあいにく相方が足を挫いてしまっていてね。昨日は一人で入ったんだが……」

アザレア:リッジさんのことね。

GM:「その狩りの最中に……恐ろしいものを見てしまったんだ」と身体を震わせながら言ってくる。

クリム:恐ろしいもの?

グラウム:何を見たんだ?

GM:「あれは……形こそ人の形をしていたが、あれは人間じゃ……生きたものじゃない……」

アメリア:……ゾンビかしら?

アザレア:言葉の通りならアンデッド系だろうね。

クリム:ま、僕らの依頼はこの人を探すだけだし、それは放っておいていいでしょ。

グラウム:そうだな。

アザレア:それじゃあ、一旦トルシエさんを連れて戻る?

アメリア:その方がいいでしょう。それで報酬をもらってから、そのアンデッドの件も追加で交渉してみましょう。

クリム:うん。必要なければそのまま帰ってもいいし。

GM:その会話を聞いていたトルシエは「ま、待ってくれ!」と声をかけてくる。「僕はを見かけたときに、そいつと目があった感じがして、さらに追うように近付いてきたんだ」

アザレア:そ、それは怖いね……。

GM:「それで怖くなって逃げようとしたんだが、気が動転したせいで僕まで足を挫いて動けなくなってしまって……」と言って足をさすっている。少し足が腫れているようだね。

クリム:そうだったのね。……一応ケガの具合を見ておきたいな。病気知識判定とかしていい?

GM:まあ構わないよ。その間にも話は続けよう。「それでそいつに見つからないようにここに隠れたんだが……まだ近くにいる気がしてならないんだ」——さて、ここで異常感知判定をしてもらおう。

アメリア:異常感知? 危険感知じゃなくて?

GM:使う技能は同じスカウトかレンジャーだけど違う判定だね。危険感知はすぐそこに迫ってる危険に気が付く判定だけど、異常感知は危険とは限らない何か変なことや違和感を察知する判定だ。目標値は10で。


 この異常感知判定にアメリアとアザレアが成功。

 また、同時に病気知識判定を行ったクリムは軽い捻挫だけで他に支障はないことを確認した。


クリム:それなら添え木だけしておこう。

GM:クリムが手当てをしている横で、アメリアとアザレアはがしてくることに気が付きます。

アザレア:ん、何やら変な匂いがするぞ?

GM:匂いとしては……何かが腐ったような匂いですね。

アメリア:腐敗臭? どっちから匂ってくるの?

GM:今トルシエが身を隠している倒木の反対側から匂ってくるように思えます。

グラウム:この流れで変な匂いか……。

アザレア:見に行った方がいいか?

GM:トルシエが声をかけてきます。「あいつらがこのままここにいたんじゃこの先狩りもできないよ。キミたち冒険者なんだろう? なんとかアレを退治してくれないか?」

クリム:それはそれ。今の依頼とは別。お金がなきゃやらない。

グラウム:まあそれはそうなんだが……ただ、この男を担いでいくとなるとこのまま逃げれるとも限らないのがネックだな。

クリム:う、確かに。

アメリア:……トルシエさん。それならそいつは私たちが退治してくるから、報酬を増やすように村長に口利きをしてくれない?

GM:「ああ、もちろんだ。キミたちは僕を探すだけで変なのがいるのは聞いてなかったんだろう?」

アザレア:その通りよ。

クリム:だから依頼外のことはあまりやりたくないんだけど……。

GM:「それなら、もし退治してくれたならその分の報酬が出るように必ず僕から村長に言うから」とトルシエ。「だから頼むよ」

アメリア:それならいいんじゃない?

クリム:やるのー?

アザレア:ま、その方が良さそうね。

クリム:仕方ないかー。トルシエさんはどうする?

アメリア:このまま隠れててもらいましょ。

GM:「た、頼むよ。僕はここで隠れて待ってるから……あいつらを倒してくれ」と縋るように頼んできます。

アメリア:大丈夫よ。任せなさい。

GM:「ありがとう。……そうだ、これを持っていってくれ」と言って、救難草二個と魔香草二個を渡してくれます。

アザレア:ありがたい!

クリム:みんなで分けて持とうか。……あれ、「救難草」って何?

GM:救命草の強いやつだけど……あ、基本に載ってないやつか? 『エピックトレジャリー』にあるね。

グラウム:なるほどね……って威力50!? めちゃくちゃ強いな。

アメリア:とはいえ草だからね。戦闘中は使えないし、ひとまず温存しときましょ。

クリム:だね。——それじゃあみんなで行こうか。スカウト先頭で!

グラウム:調子のいいやつだな……(笑)。じゃあ行くか。


 報酬の増額を約束させた一同は、依頼になかったトルシエが怯える〝何か〟を退治すべく移動を始める。アメリアとアザレアが察知した変な匂いの方向に背の高い藪の中をザクザクと進んでいくが——。


GM:匂いの方向に少し進むと、キミたちは足元に石があることに気が付きます。

アザレア:石?

アメリア:どれくらいの大きさなの?

GM:腰くらいの高さの石ですね。ただ、自然な石ではなく丸く削られていて、表面に文字が刻まれているようだ。

グラウム:何語だ? 読めるやついるか?

GM:普通に交易共通語だね。おそらく書かれてるのは名前だろう。

アザレア:……墓石かな?

クリム:お墓だろうね。一応手を合わせておこう。……周りには他に何かある?

GM:そのお墓の近くには何もないけど……キミたちが進んでいた方向をよく見ると、いくつか同じような石が立っているのが草木の隙間から見えるね。ただ、どれも少し風化していたり石が倒れてたりと、時代が経っているのがわかるね。

アメリア:この辺りは墓地ってことかしら? ……新しくできた穴とかないかしら。掘られたか、中から出てきたか。

GM:それなら探索判定をしてみよう。目標値は10。

グラウム:(ダイスを振る)よし、成功。

アザレア:(ダイスを振る)こっちも成功。

アメリア:(ダイスを振る)いっぱい……というかクリティカル(自動成功)だわ。(一同笑)

GM:みんな成功したね。いくつもある石を調べていると、石の前で穴が空いているのを二つほど見つけます。空いているというか……下から何かが出てきたような感じの穴ですね。

アメリア:おや、これは……。

GM:さらに穴の横には足跡も見つかります。穴から始まってるね。

グラウム:穴から始まる足跡? 外から来たわけじゃないってことは——。

クリム:あー……アンデッドが出てきた、ということかな。トルシエさんが見た人影もこれなのかな?

アメリア:でしょうね。二体のアンデッドがここから出てきた、というところね。

クリム:それなら、この足跡を追って浄化するしかないかな。神官として。

グラウム:急に神官風をふかしてきたな(笑)。

クリム:アンデッドなら僕ができることもあるしね! 【バニッシュ】とか!


 クリムもやる気を出し、アンデッドらしき足跡を追いかけることを決意。

 藪の中で見えにくい足跡だったが、足跡追跡判定にはなんなく成功。一同はフラフラとした足跡を追いかけ——やがて人影を発見した。


GM:足跡を追った先で、キミたちは遠くに三つの人影を見つけます。

グラウム:三つ? 二つじゃないのか。

GM:人の形はしてますが、一つは左腕が無く、一つは右の腹がえぐれて無くなっていることはわかります。

アザレア:間違いなく人間じゃないね……。

GM:そしてもう一つは他のより一回り大きい姿をしていて、腐臭がします。

アメリア:匂いの元はこいつだったのね。

GM:——さて、キミたちがそれに気が付くと同時に、その相手たちもキミたちのことに気が付いたのか首をグルリと回してキミたちの方を見てきます。

アメリア:ひえっ。ちょっと怖いわね。

GM:そいつらは「ぐおぉ……」と言葉とも呻きとも言えぬような声を出しながら、敵意を持ってキミたちに近付いてくる。——というわけで戦闘開始だ!


◇ ◇ ◇


GM:敵はさっき言った左腕が無いか右脇腹が無い人のようなもの二体に一回り大きいものが一体、そしてついでにスチームポッドもいます。

グラウム:ついでって(笑)。

GM:それじゃあ戦闘準備から始めよう。


 戦闘準備はお互いに何も無し。続いてクリムが魔物知識判定で、敵は二体いるのが「ゾンビ」、一回り大きいのが「グール」と判明した。(グールは弱点まで判明)


クリム:ゾンビとグールね。

GM:それと、グールには〈剣のかけら〉が3個入っている。これでHPや抵抗力が強化されてるぞ。

クリム:3個? 結構入ってるなあ……。

GM:また、今回はグールだけは判定にダイスを振ります。ゾンビとスチームポッドは振らずに固定値で処理するぞ。

グラウム:(データを見つつ)うーん、ゾンビの方が怖いな。《全力攻撃1》を持ってやがる。グールの二回攻撃は大したことないな。

アメリア:それはあんただけでしょ。(一同笑)

アザレア:グラウムは防護点高いから……(笑)。まあでも《全力攻撃1》の一撃は嫌だね。

グラウム:クリムは回復魔法でダメージが出せるのか?

クリム:そう! グールなら弱点も抜いたから+3点でダメージ出せるよ。


 続く先制判定はグールの12に勝てず、敵に先制を譲ることに。

 (ちなみに、一応平目で挑戦したクリムとアメリアは揃って自動失敗を出し、50点の成長点を得た)


GM:こっちが先制だね。四体全員を前線エリアに配置するぞ。

グラウム:そうなると……こっちは二体以上を前線に出さないといけないのか?


 初期配置では、後攻側は前線エリアに先制側が配置したキャラクター数の半分(最低1)のキャラクターを最低でも配置しなければいけない。今回は四体の敵全員が前線に配置されたため、後攻のPCたちは最低でも二人は前線エリアに初期配置しなければならないことになる。


グラウム:まあどちらにせよ前衛二人が前だな。俺とアザレアが前線エリアだ。

クリム:僕とアザレアは後方エリアだね。


クリム:まずはそよ風でペナルティ消すのがいいかな?

アザレア:さすがにゾンビに連打もらうと倒れかねないからね……。

グラウム:それが助かるな。……いや、そよ風吹かさずにゾンビを倒しにいく方がいいか? クリムもダメージ出せるしな。


GM:ではこちらが先制だ。まずは……グールが攻撃だ。相手は前線に来た二人からランダムで決めよう。(ダイスを振る)グラウムに。

グラウム:俺への殺意高いな?

GM:ランダム対象がグラウムばっかりだな(笑)。


 グールはグラウムに対して「2回攻撃」で攻撃。一回目の攻撃はグラウムが回避を自動失敗して命中。……が、ダメージは2点のみ。さらに回避にペナルティを与える麻痺毒も抵抗され効果が出ず。

 二回目の攻撃で挽回——と意気込むも、今度はこちらが命中で自動失敗。爪が地面に突き刺さった。


GM:くそ、麻痺毒も与えられなかったか。

グラウム:自動失敗かー。50点どうぞ。(一同笑)

GM:グールに経験点はないんだよ!(笑)ええい、今度はゾンビの攻撃だ! 左腕の無いゾンビから、《全力攻撃1》! ランダムの対象は、(ダイスを振る)アザレアだ。ゾンビはダイス振らないので命中は10で固定。

アザレア:う、こっちか。でも10なら期待値で避けられる!

グラウム:なんでフラグ立ててるんだ?

アザレア:(ダイスを振る)OKOK。1足りないです……。(一同笑)

クリム:ちょっと(笑)。

GM:腐った爪を振り下ろす! (ダイスを振る)15点ダメージ!

アザレア:痛い! 9点くらって残りHP17点。

GM:振り下ろした勢いで右腕が逆方向に折れ曲がるけど、すぐに元に戻る。

アザレア:これだからアンデッドは……!

アメリア:全く、嫌な存在ね……。

GM:続いて右脇腹の無いゾンビの攻撃。(ダイスを振る)グラウムに《全力攻撃1》。

グラウム:(ダイスを振る)スチームポッドのペナルティを入れて……危ない、同値で回避!

GM:ぐぬぬ、また回避されたか。


 最後のスチームポッドはアザレアにツルを振るい、回避の出目で1・2を出したアザレアに見事命中。さらにGMのダメージの出目が走り、12点のダメージを出す。


アザレア:い、痛い! 6点くらって残り11点。

グラウム:ちょっと、アザレアやる気出してくれよ。

アザレア:そんなこと……ダイスに言ってくれる?

GM:打撃点はやる気出したよ?

アメリア:GMに言ってないから!(一同笑)

GM:これでこっちは終わり。次はPCだ。

アメリア:なんとか数を減らさないとね。

グラウム:悩みどころだな。スチームポッドから倒すか?

アメリア:ゾンビを早く倒したいところだけど……う、結構HP高いのね。回避力もあるし。

クリム:そうなんだよね。スチームポッドの方が倒しやすい気がする。

グラウム:【ウィンド・サーキュレイション】でスチームポッドのペナルティは無くせるけど、クリムにはアザレアの回復をしてほしいしな。

アザレア:すまない、回復頼むよ。

クリム:やっぱりスチームポッドから倒すのがいい気がするね。魔法攻撃からいくのは?

アザレア:いいわよ。ゾンビもグールも精神抵抗高いから魔法効きにくいしね。——それじゃあスチームポッドに【ファイアボルト】!(ダイスを振る)よし、抵抗失敗!(ダイスを振る)8点の炎ダメージ!

GM:スチームポッドが燃やされる。残りHPは10点。

グラウム:それじゃあスチームポッドを倒すか。アザレアか俺か……アザレア倒せそうか?

アザレア:残り10点だっけ? ……厳しいかな。出目が走らないと倒しきれなさそう。

グラウム:それなら俺がやろう。——まず【ビートルスキン】を宣言して防護点+2。さらに[剣の加護/風の翼]で空を飛んで命中と回避に+1。そして《全力攻撃1》を宣言してスチームポッドに攻撃!

GM:もりもりだな!?

グラウム:(ダイスを振る)10で命中。(ダイスを振る)16点ダメージ!

GM:防護点2点引いても14点くらって……ダウンだ。

グラウム:ヘビーメイスを思いっきり振り下ろす! ごしゃ。

GM:メイスに潰されてスチームポッドの体液が飛び散る。

アザレア:ガタイに任せた力尽く感がすごいな(笑)。次は私だけど、ゾンビの回避が意外と高いから当たるかなあ。

GM:あ、ゾンビはどっちも《全力攻撃1》をしたので回避がマイナス2されてます。今は回避8。それとスチームポッドの不快な蒸気も無くなった。

アザレア:——いくしかないね!(一同笑)


 勢い勇んでゾンビにヘビーアックスを振り下ろすアザレアだったが、出目は1・2で命中値7で命中せず。(グラウム「ホントにやる気出してくれない?」)

 最後はクリムが「しっかりして!」とアザレアに【キュア・ウーンズ】をかけ、9点回復する。


アザレア:回復ありがたい……残り20点に。

クリム:なんとか頑張って!

GM:だが、またこっちの手番だ。


 グールはアザレアに2回攻撃。両方命中し、ダメージは2点で止めたものの麻痺毒をくらい回避にマイナス2のペナルティを受けてしまう。


アザレア:グールのダメージは耐えられたけど……麻痺毒でゾンビに《全力攻撃1》を当てられるのが怖いのよ。


 続くゾンビAは直前で攻撃してきたアザレアに、ゾンビBはランダムで決めたグラウムに《全力攻撃1》。どちらも命中し、打撃点も出目が走りグラウムは8点、アザレアは7点のダメージを受ける。


グラウム:痛え! さすがに全力攻撃は防ぎきれないな……。

アザレア:7点くらって残りHP11点。さっき回復してもらった分がちょうど消えたかな……。

GM:だが、これでこっちは終わりだ。続いてPCのターン。

クリム:僕はまた最後にアザレアに回復だね。

アザレア:ごめん、お願いするよ。

グラウム:……俺は《全力攻撃1》をやめて普通に攻撃しようかと思うんだが。そうすればゾンビの攻撃を回避できる可能性が出てくる。

アメリア:そうね、それはいいんじゃない?

グラウム:それと俺はゾンビBに攻撃してタゲ(敵から見た攻撃対象)を取っとこうかと。連打は痛いから分散した方がいいだろう。

アザレア:なるほど。それはいいな。

グラウム:それじゃあ——ゾンビBにそのまま攻撃。(ダイスを振る)命中は……自動成功!

一同:おおー!

GM:6・6かよ!? ゾンビはダイスを振らないので回避できない!

グラウム:(ダイスを振る)10点ダメージ!

GM:9点くらって残り16点だ。右脇腹が無いゾンビの左腕が粉砕された。

アザレア:それじゃあ私はゾンビAの方を——。

アメリア:ちょっと待って。私とアザレアで攻撃したらゾンビB倒せない?

グラウム:あー、あり得なくはないな。

アメリア:私が先に【ファイアボルト】飛ばすから、それ見てからアザレア動いて。


 アメリアは先にゾンビBに【ファイアボルト】を撃ち込む。抵抗は抜いたが威力の出目が振るわず、7点ダメージで止まる。


グラウム:ゾンビBの残りHPは9点か……アザレア、もう一度聞こう。倒し切る自信あるか?(一同笑)

アザレア:出目が良ければ! ……ひよります。ゾンビAに攻撃。

クリム:その方が安全だね(笑)。


 アザレアの攻撃は《全力攻撃1》で回避が減少しているゾンビAに命中。アザレアのヘビーアックスはゾンビAに9点のダメージを与える。

 クリムは再度アザレアに【キュア・ウーンズ】。アザレアを10点回復させる。


アザレア:ありがとう。残り21点。

アメリア:これならなんとか耐えられそうね。

GM:よし、次はこっちの手番だ。


 未だに誰からも攻撃されてないグールは攻撃対象を選択し、グラウムに2回攻撃。だが、一回目は命中するがダメージ1点のみ、麻痺毒も抵抗される。そして二回目は《全力攻撃1》を使わずに回避力を保ったグラウムに回避されて終わる。


GM:くそっ、硬いんだよなー。本当に初期作かよ。

グラウム:初期作だよ!(笑)

アザレア:リルドラケンに【ビートルスキン】も入ってるからね。私も標準くらいの防護点はあるはずだけど、リルドラには勝てないな。

GM:ええい、今度はゾンビBの攻撃! グラウムに殴られたこいつはグラウムに《全力攻撃1》で攻撃する!

グラウム:(ダイスを振る)回避成功。(一同笑)

GM:マジかよ!?

グラウム:空飛んでかつ《全力攻撃1》を使わなければ基準値5はあるんでね。

クリム:リルドラケンにしては高めだよね。敏捷度高いだけのことはある。

GM:……ゾンビAがアザレアに《全力攻撃1》! 麻痺毒で痺れてるうちに倒す!

アザレア:勘弁して!(ダイスを振る)……よし! 同値で回避した!

一同:おおー!

GM:こっちも!? ……ゾンビAが全力で振るった爪もアザレアには当たらず。

アザレア:ふう、危なかった。

アメリア:次は私たちの手番ね。ゾンビBが残り9点……抵抗されなければ私の魔法で倒せると思うけど。

グラウム:俺はゾンビAを殴る予定だ。こっちもアザレアが一発ダメージ与えてるしな。そしてアザレアにゾンビBを殴ってもらいたい。

アザレア:そうだね、そっちの方が倒せる可能性はある。

アメリア:それなら私は前衛組の攻撃が終わってからかな。

クリム:だね。アメリアは様子見て倒し損ねを狙うのが良さそう。

グラウム:俺は《全力攻撃1》するかどうかだが……。

アメリア:アザレアがゾンビBを倒せたらしてもいいんじゃない?

グラウム:確かにそうだな。アザレア、先に攻撃してもらっていいか?

アザレア:わかった。ゾンビBに攻撃!(ダイスを振る)命中!(ダイスを振る)……うーん、ちょっと足りない。8点ダメージ。

一同:あー。

GM:防護点を引いて7点くらう。HP2点残ったぞ。

グラウム:アザレアよ、もっと本気出していいんだぞ?(一同笑)

アザレア:いや、命中に本気出したらダメージがね……?

アメリア:ゾンビBに【ファイアボルト】。残り2点なら抵抗されてもいける。(ダイスを振る)抵抗されて半減。でも、(ダイスを振る)8点が半減されて4点の炎魔法ダメージ!

GM:ぐっ、HP0。ゾンビBは焼かれて倒れます。

グラウム:ゾンビBは倒れたか。《全力攻撃1》は……いや、安全にいこう。使わずにゾンビAに攻撃。(ダイスを振る)まずは命中。(ダイスを振る)13点ダメージ!

GM:全力じゃなくてもそれだけくらうのか! 残りHP4点!

グラウム:——クリム、どうする? トドメ刺すか?

クリム:二人ともHPはまだ大丈夫そうだよね。……ゾンビAに【キュア・ウーンズ】! 僕がこのアンデッドを浄化する、魔法行使判定!(ダイスを振る)……あ、1・2で8。

GM:ゾンビの精神抵抗力は11なので抵抗成功。【キュア・ウーンズ】の抵抗は——。

クリム:……「抵抗:消滅」なので効果無しです……。

グラウム:クリムー!(笑)

アメリア:残念ね(笑)。


 まだ戦いは続く。

 グールはアザレアに2回攻撃。一回目はギリギリで回避に成功するアザレアだが、二回目は命中の出目が大きく回避失敗。6点の被ダメージを受ける。さらに——。


アザレア:(ダイスを振る)生命抵抗失敗。また麻痺毒がー!

グラウム:また3ラウンドか……。

アザレア:そろそろ解けると思ってたのに……。

クリム:アザレアの動きがどんどん鈍くなっていくよー。


 先ほどまでアザレアを殴っていたゾンビAは、メイスで殴られたことでグラウムに敵意を向ける。が、その爪は空を飛ぶグラウムには当たらず空を切ることに。


グラウム:ふう、さっき《全力攻撃1》しなかったのは正解だったな。

クリム:ごめん、僕の信仰心が足りないばっかりに……。

アメリア:全くよね。(一同笑)

アザレア:厳しいな(笑)。


 再びPCの手番となり、残りHP4点のゾンビAにアメリアの【ファイアボルト】が飛ぶ。抵抗にも失敗したゾンビが耐えられるはずもなく、焼かれ倒れた。

 そして残りはグールのみ。この戦闘で最もレベルが高いグールだが、先ほどから見てわかる通り、前衛の二人を倒すには明らかに攻撃力が足りない。グラウムにはほとんどダメージは通らず、アザレアには多少は通るものの倒せるレベルではない。

 この後は当てては当てられ、避けては避けられ、麻痺毒をまたも抵抗され、【スネア】で転倒させられ……長いラウンドの末、最後はクリムの【キュア・ウーンズ】によってグールは消滅されられたのだった。


◇ ◇ ◇


GM:——戦闘終了です。

アザレア:ふー。

グラウム:大変ではあったが、最後は危なげなく倒せたな。

クリム:しかし、なんでゾンビ系がいたんだろう?

アメリア:グールはどっかから来たか、連れてこられたか……。

グラウム:遺跡があったのも気になるな。

GM:それなら、その辺りの推測ができるかを見識判定してみよう。セージ技能の判定だ。目標値10。


 見識判定は(ゲーム内の世界で)一般的な知識を持っているか・思い出せるかを決める判定だ。ここではゾンビやグールがいる事情を推測できるような知識があるかを判定で決めようとしている。


クリム:(ダイスを振る)10! 成功した!

GM:OKだ。クリムは自身の知識から次のように推測できる——。


 グールは通常遺跡に生息しており、森にいることはほとんど無い。だが、村の人から森の奥に遺跡があったと聞いたことから、そこからグールが外に迷い出てしまっており、外に出ていたため遺跡を調査した冒険者にも倒されずに残ってしまった、と考えられる。

 二体のゾンビは少し前に見た墓から出てきたもので、グールの穢れた魂に影響されてアンデッド化した……という可能性があるだろう。


クリム:……ということらしいよ。

グラウム:ま、プリーストが言うならそうなんだろう。

アメリア:プリースト関係なくない?(一同笑)

アザレア:一般知識の見識判定だからね……(笑)。


 その後しっかりと戦利品判定を行い、グールエキスやゾンビの眼球など、合計一一〇Gの戦利品を入手した一行は、隠れているトルシエのところへと戻ることに。


GM:トルシエはキミたちの姿を見ると「ああ、キミたち、大丈夫だったかい!? やつらは倒せたのか!?」

グラウム:ああ、問題なく。

アメリア:もちろんよ。

クリム:ゾンビの眼球見せようか? 討伐証明に。

GM:「ひぃ!? そ、そんなもの見せないでくれよ」

アザレア:ゾンビはあそこのお墓由来だし、やめておこうよ……(笑)。

クリム:まあ倒したと信じてくれるなら大丈夫かな。

GM:「もちろん信じてるよ。助かった。本当にありがとう」とトルシエは感謝を述べてくる。「……それと申し訳ないんだが、足を挫いているから村まで帰るのを手伝ってくれないか」

グラウム:ああ、俺の背中に乗っていいぞ。

アザレア:一番筋力もあるしね。よろしく。

クリム:じゃ、村に戻ろうか。



GM:村に戻ると、ウィル村長と相方狩人のリッジが出迎えます。「おお、トルシエ無事だったか!」とリッジが喜びの声をあげる。

クリム:無事に連れて帰ってきましたよー!

GM:「おお……本当によかったです。一体何があったんですか?」

クリム:えーっと、もともと聞いていたウルフとか森のスチームポッドとかは問題なく倒していけたんですけど、ちょっと予定外のこともあって……。

アザレア:村長さんも遺跡の話をしてたと思うんだけど、そこ由来のグールと、その影響で出てきたと思われるゾンビが出てきたの。

GM:それを聞いた村長は「なんと……遺跡の脅威は全て倒されたと思っていたのですが」と驚いた様子だ。

アザレア:たまたま打ち漏らしがいたんだろうね。

クリム:でも安心してください! 全部倒しました! 特にグールにトドメを刺したのは私です!

アメリア:そこだけでしょ。何いばってんのよ。(一同笑)

クリム:うう、せっかく活躍できたと思うのに……。

グラウム:まあ回復とかはしてるからな(笑)。

GM:トルシエも「村長。僕もそのアンデッドたちのせいで身動きが取れなくなってたところを助けられたんだ。アンデッドが出てくるなんて想定外だっただろうし、報酬に色をつけてもらえないか?」と言い、村長も「そうでしたか。それならば……」と了承してくれる。

アメリア:よかった、ちゃんと言ってくれたわね。

グラウム:やったぜ。

クリム:優しい世界だ……。

GM:ま、報酬はちゃんと払っていかないと次の依頼を受けてもらえなくなるからね。——そこでリッジは「しかし、あんなところにゾンビが出てくるような墓があるなんて知らなかったけどなあ」と言ってきます。

クリム:あれ、知らなかったの?

アメリア:そうなのね。それはアンデッドが出てきたら驚くわ。

アザレア:村の人も知らない墓場か……。

グラウム:なんだったんだろうな?

GM:「あの森はかなり古くからありますからな」と村長。トルシエも「狩りでもそんなに奥までは行かないからな。気が付かなかっただけだろう」とそんなに気にしてない様子だ。

クリム:ま、本人たちが不安ないならいいかな。

GM:「なんにせよみなさんありがとうございました。報酬をお渡しいたします」と言って、村長は一人当たり五〇〇Gを渡してきます。

アメリア:お、一〇〇G追加してくれたのね。

グラウム:ありがたく受け取ろう。

クリム:やった! (小声で)一〇〇〇Gくらい増えるかと思ったけどなー。

アザレア:それは高望みしすぎでしょ(笑)。

クリム:まあね。……ところで今の時間は? 夕方?

GM:うん、夕方くらいだね。村長は「みなさん、今日は日も暮れますし、ギルドに戻られるなら一晩この村で休んでから明日移動されるとよいでしょう」と提案してくるよ。

グラウム:それはありがたい。

アザレア:よかった、休める。

GM:リッジも「前に狩りをした獲物を振る舞うからぜひ食べてってくれ!」と笑顔で言ってくる。

グラウム:——それは本当にありがたい!(一同笑)

アメリア:ぜひいただくとしましょう!

GM:では、その夜はキミたちは簡単なもてなしを受け、翌日に村の人たちに見送られながらヴァールの街のギルドに戻ることになります。

クリム:村人から闇討ちとかされるかと思ったけど大丈夫だったか。(一同笑)

GM:なんでだよ(笑)。俺そんなに信用ないの?

アメリア:クリムは漫画の読み過ぎよ。(一同笑)ほら、さっさとギルド戻りましょ。

グラウム:ギルド〈プロブキウス〉だな。

GM:だね。ギルドに戻るとギルドマスターのテオドルがちょうど出迎えてくれるね。「おお、お前たちか。依頼はどうなった?」

クリム:楽勝でしたよ!

アザレア:結果的には大きな損害もなく終わったね。

GM:「ん? 何かトラブルでもあったのか?」

アメリア:近所の遺跡から出てきてたグールと遭遇したのよ。

GM:「ああ、そういえばあの辺りは少し前に遺跡が見つかってたな」

アメリア:前に調査したパーティが雑だったのか、単に見つけられなかったのかわからないけど、おかげで困ったものよ。

グラウム:辛辣だな(笑)。

GM:「まあそう言ってやるな。遺跡であれば気付かない抜け道とかもあるからな。おそらく遺跡の中は一掃したが、その前に抜け道から出てしまっていたやつがいたのだろう」とテオドルはフォローするね。「とはいえ、そんなやつらがたくさんいるとは思えんし、お前たちが出会ったグールが最後だろう」

アメリア:それならいいのだけど……。

クリム:なんにせよ被害がなくてよかったよね。

GM:「ま、仮にまた出てきたらまたお前たちが倒しに行ってやればいいんじゃないか?」と言いつつ笑うテオドル。「その時にはまたちゃんと報酬も出るだろうから安心しな!」

アメリア:まあ依頼なら、ね。

クリム:なんにせよ、今日も無事に終わってよかったよー。

GM:「クリムもアンデッド相手なら活躍できたんじゃないか?」

アメリア:あー……順調にリーダーとして勉強できてますよ。棒読み。(一同笑)

クリム:ちゃ、ちゃんとダメージは与えたよ!

グラウム:いや、今はそこじゃなくてだな……。

アザレア:木から落ちた時のことは黙っておいてあげよう。(一同爆笑)

クリム:あー! 忘れてたのにー!

GM:(笑)……そんな中の良さそうな様子を見ながらテオドルは「——ま、これからもしっかりがんばってくれよ? 新米冒険者どもよ」と声をかける。——というところで、今回のセッションを終わりましょう。お疲れ様でした!

一同:お疲れ様でしたー!


第一話「ギルドで依頼を受けよう!」 終

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ソード・ワールド2.5 リプレイ《Ordinary Adventurers in Raxia》 もっぷ @mop124

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