第一話「ギルドで依頼を受けよう!」【中編】
GM:ギルドを出たキミたちは村へと移動します。半日ほどかけ、無事に村へと到着します。道中は特に何も起きません。
アメリア:ホントに?
クリム:マジで?
GM:え、俺そんなに信用無いの?(一同笑)
グラウム:ま、そんなに戦闘とかあってもリソース足りなくなるから助かるがな(笑)。
GM:とにかく、無事に村に到着しました。見る限り人数も多くない小さな村です。周囲には実のついた木々や畑があったり、牧畜をしてる姿が見えたりと、今のところは平穏そのものな普通の村です。
クリム:開拓村みたいな感じ?
GM:できてから時間は経ってるだろうね。ただ大きくなるような村ではないので、変わらない生活をずっと続けているのでしょう。——さて、村に到着したところで依頼主でもある村長さんが出迎えてくれます。
クリム:こんにちはー。なぜかリーダーになってるクリムです。(一同笑)
GM:「ああ、冒険者のみなさん。よく来てくれました。私はこの村の村長をしている——」……(ネーミング辞典を開く)えーっと……「——村長をしているウィルと申します」
アザレア:名前考えてなかったのね(笑)。
クリム:村人が行方不明になったとのことで依頼を受けてきたんですが……。
GM:「ええ、そうなのです」
グラウム:今のところ変わりはないのか?
GM:「まだ帰ってきておりません。その者はトルシエと言いまして、この村では数少ない狩りができる男でしてな」
アメリア:名前はトルシエさん……ね。
GM:「昨日もいつも通り貴重な栄養源である肉を調達するために村の近くにある森に狩りをしに出かけたのですが、夕方になっても戻ってこないのです」
アメリア:あら、それは心配ね……。
クリム:捜索はしたんですか?
GM:「いえ、捜索はできてません。先ほど申した通り狩りができる者はこの村には少なく、森もオオカミなどの動物が少なからずいるため冒険者の方々には大したことがなくとも私たちのような普通の村人では少し危ないところなものでして」
クリム:え、オオカミが出るの。聞いてない。
アメリア:【スネア】が効かないじゃないの。
アザレア:そこ重要なの?(笑) 確かに四足歩行だけども。
【スネア】は土属性のランク1の妖精魔法。相手を転倒させられるのだが、二足歩行の相手にしか効果が無いのだ。
GM:「それにもし怪我をして動けない状態であれば連れて帰らなければなりませんが、その状態で危ない動物に出会ってしまえば村人ではひとたまりもありません。ですので、冒険者のみなさんにお願いをしたところになります」
アザレア:ま、ちょっとした動物くらいなら私たちでも何とかできる……よね?(一同笑)
クリム:そこは様子を見ながら行こう。(村長に)とりあえず探し人の年齢や風貌を教えてもらえますか?
GM:「ええ、もちろんです」
クリムたち一行は探し人の特徴を質問していく。村長の答えによると、トルシエは人間の若い男でこざっぱりした茶色の髪をしているらしい。また、狩りのための弓矢を携行してるだろうとのこと。
クリム:(色んな質問をし終えて)ふむふむ……他に特徴的なところはあります?
GM:(←特に考えてなかった特徴まで質問されて段々めんどくさくなってきている)「——いえ、これといって特徴的なところはありませんかね……」
クリム:なるほど、〝モブ顔〟と……。(一同爆笑)
アザレア:ひどい言いようだな!?(笑)
アメリア:こら! 失礼でしょ! 思ってても言っちゃいけないこともあるの!(笑)
クリム:だってそこらへんにいるような姿の情報しかないんだもん! 猫探しより難しそう!
GM:ま、まあ森の中には人はほとんどいないから。人がいたら十中八九その人だし、名前聞けばわかるよ。物言わぬ死体になってたら別かもしれないけど。
クリム:それもそうか。それじゃあ見た目はそんなところで……次はその狩人さんがその日どこに行ったのか、かな。最後に見た人って誰かいます?
アメリア:村の門番とかが見てるかしら。
GM:「その日は一人で狩りに向かってますし、普段どういう風に狩りをしているかは私も知りません」
グラウム:ふむ。
GM:「ただ、もう一人同じく森を知ってる狩人がおります」
クリム:なるほど。じゃあその人を紹介してもらえます?
GM:「もちろん構いません。こちらです」と言って、村長は一つの家に案内してくれます。
クリム:ありがとうございまーす。……普通に人探ししちゃってるな。悪ガキ感が出ない。(一同笑)
アメリア:別に出さなくていいわよ(笑)。
GM:「リッジさん、ちょっといいかな」と声をかけつつ村長は家に入っていく。キミたちも続いて家の中に入ると、中にはリカントの若い男性がいて返事をしてきます。「ええ。何ですか、村長?」
アザレア:この人がリッジさんか。こっちはリカントなのね。
GM:村長が「この冒険者の人たちがトルシエのことを探しに行ってくれるそうだ」と言うと、リッジと呼ばれた男性は「え! 本当ですか!」とキミたちに向けて声を上げてくる。「トルシエを探しに行ってくれるんですね!」
クリム:ええ、依頼を受けたので。僕たちがやらせていただきますね。
GM:「本当にありがとうございます!」とリッジは感謝を述べてくる。そこで、よく見るとリッジが足首に包帯を巻いていることにキミたちは気が付きます。
アザレア:おや、足首を怪我したのか?
アメリア:(小声で)この人が犯人か……?
クリム:こいつがはんに……ゴホンゴホン。(一同笑)
GM:その言葉には気付かず、アザレアに返事をするよ。「ええ。恥ずかしい話ですが、数日前に狩りに出かけた時に足を挫いてしまいまして」
クリム:なんだ、挫いたのね。
グラウム:しかし、その足では狩りは厳しいだろう。
GM:「そうなんです。普段はトルシエと二人で狩りをしてたんですが、なにぶん私の足がこんな状態なもので、先日はトルシエが一人で狩りに行ったんです。そうしたら昨日は何故か帰ってこなくて……とても心配しているところなんです」とリッジは心配そうに話してくる。
アザレア:そういうことか。
クリム:それなら、普段トルシエさんが狩りをしている場所とかはわかってたりします?
GM:「ええ、わかりますよ。森自体はここから東に一時間ほど行ったところにあるのですが、基本的には森の中に入ってもそこまで奥深くまでは行きません。少し進むと開けた場所があるんですが、いつもはその周辺にいる鳥を狩ったり、可能な時は二人でウルフを狩る時もあります」
クリム:ふむふむ。……この人に【キュア・ウーンズ】かけたら歩けるようになったりしない?
GM:なりません。
クリム:ぐぬぬ、道案内してもらおうかと思ったのに……。
GM:「そんなに悩むような場所ではないはずですよ」とリッジ。「そこまで広い森でもないですし、いつも通ってる場所ならけもの道のようになってるはずなので入ったらすぐにわかるはずです」
グラウム:なるほど、けもの道か。
クリム:わかりました。その情報を頼りに現地まで行ってみますね。……現時点ではこんなところかな?
GM:「お願いします。トルシエは私より狩人歴も長いですし、帰って来れなくなるような事態が起きるとは到底思えなくて……何が起きているのか分からないので、できるだけ早く無事な姿を見たいです」と心配した様子で言ってきます。
アザレア:ええ、任せて。
クリム:あ、森にオオカミ以外に危険な動物とかっています?
GM:「いや、あの森はオオカミくらいしか危険な動物はいませんね。……あ、ただ——」
アメリア:ただ?
GM:「……少し前のことですが、普段狩りをしないような森の奥の方で遺跡が見つかったことはありました」
クリム:い、遺跡……?
グラウム:……嫌な感じだな。
アザレア:リッジさんが見つけたのか?
GM:「いえ、私は見てはいません。そういう話を聞いたもので。でも、その遺跡の調査の依頼は既にしていて、その依頼は既に完了したはずです。そうでしたよね、村長?」と聞くと、ウィル村長も「ええ。遺跡の中は他の冒険者の方が探索されて、内部に番人のようなものたちがいたものの全て退治されたと聞いてます」と答えるね。
アメリア:なら、遺跡の中にもう危ないのはいないはず……ということね。
クリム:その場所はトルシエさんも知っているので?
GM:「場所くらいは知ってると思いますよ。発見当時話題になりましたし。ただ、狩場から離れてますし、近付くことはないと思いますが」
クリム:なるほどー。……ちなみにその冒険者パーティの名前って知ってます?
GM:それは村長が答えるね。「いえ、存じ上げないですね。姿は見ましたが、みなさんと同じような冒険者の方々でした」
アメリア:同じような……下っ端冒険者ってことね。(一同笑)
クリム:頼りなさげなパーティだったってことか……。
GM:(笑)ま、様子から察するに同じような駆け出しの冒険者が対応したのだろう。そんなに強い敵も潜んでなかったと考えられるね。
クリム:——それじゃあ、これくらいで行こうか。トルシエさんを探してきますね、と言って出よう。
アザレア:行きますか。
GM:「よろしくお願いします」と言ったリッジですが……ふと思い出したように「あ、そういえば」と最後に付け加えてきます。
クリム:「そういえば」が多いな(笑)。なんです?
GM:「足を挫いた日のことなんですが……森の中でいつもと違った匂いがした気がするんです」
アザレア:どんな匂いだったの?
GM:「どんな匂いというか……強い匂いではなかったんですが、いつもと違う気がしたんです」
アザレア:違和感があった、くらいか。
グラウム:何だろうな?
GM:「その時はあまり気にしなかったので何なのかはわかりませんが……思い出したので一応伝えておきます」
クリム:わかりました。ま、大丈夫でしょう。——よし、皆のもの、行くぞー!
グラウム:森の中入るか!
一同:おー!
GM:では、森の方へ移動しよう。
○
GM:教えられた通りに小一時間ほど進んでいくと、森に到着します。
クリム:森だ! まずはけもの道を探そう。
GM:森に入ると、すぐに草をかき分けて人や動物が通ったであろう道がいくつか見つかります。いわゆるけもの道です。足元を見ると草木を踏んだであろう跡も見つかります。
アメリア:なら——足跡追跡判定ね。スカウトー!
グラウム:おうよ。
GM:ここは自然環境なのでレンジャー技能でもできるぞ。スカウトかレンジャーの技能レベルに知力ボーナスを足した値が基準値だ。目標値は9です。
アメリア:あら、それなら私も挑戦できる。
アザレア:私もスカウトで挑戦するよ。スカウト1と知力ボーナス2で基準値3。
この足跡追跡判定にグラウムとアザレアがスカウト技能で、アメリアはレンジャー技能で挑戦。ついでにクリムも参加するが、どちらの技能も持っていないので平目(基準値0のダイス目のみ)での挑戦だ。
この判定にグラウムとアザレアが成功。アメリアとクリムは失敗する。
クリム:いやー、何も見当たらないなー。
アメリア:足跡なんて追えないわねー。(一同笑)
GM:失敗したからね(笑)。——アザレアとグラウムの二人は、草木を踏むいくつもの足跡の中から特に新しい人の足跡を見つけることができます。
グラウム:最近入った人のものってことか。
GM:その足跡は森の奥に続いているようです。
アザレア:トルシエさんの足跡かな? とりあえずみんなに伝えるよ。
アメリア:お、さすがね。
クリム:よかったー。ちょっと僕は木登りして上から探してたから……。
GM:クリム木登りしてるの? じゃあ登攀判定だな。(一同笑)
クリム:えー!? やるしかないじゃん!(笑)
全く関係ないところで五メートルほどの木に登ろうとしていたクリムはノリノリで登攀判定に挑戦し——。
クリム:(ダイスを振る)……1・1。自動失敗。
一同:(爆笑)
アメリア:こんなとこで経験点稼いでんじゃないわよ!(爆笑)
——50点の経験点を得た。
ついでに五メートルの高さから落下し、受け身を取るも4点のダメージを受けたクリム。戦闘する前で罠も仕掛けてないのに、このセッション最初のダメージが発生したのだった。
クリム:うぐ、腰が!
グラウム:「何してんだこいつ」という目をしつつ、何だこいつは……と呆れた声を出すぞ。
アザレア:勝手に木に登って落ちて腰やっちゃう最年少って悲しいな……。
アメリア:ちょっとー。せっかく見つけた足跡とか消さないでよ?
クリム:うー。アメリアも足跡見つけてないくせにー。……ちょっと救命草を食べる時間をくれませんか……。
アメリア:えー、こんなところで10分も待つのー?(一同笑)
グラウム:置いてくから後から付いてこいよ。
クリム:ゆ、許してー! それとレンジャーさんに救命草を使っていただきたいのですが……(アメリアの方を見る)。
アメリア:どうしようかしらー?(一同笑)……仕方ない。早くよこしなさいよ。
救命草は回復アイテム。10分の時間を使って回復ができるのだが、レンジャー技能を持っている人が使うと回復量が増える。このパーティではレンジャー技能はアメリアしか持っていないので、クリムは自分の持つ救命草をアメリアに渡して回復してもらおうとしているわけだ。
クリム:お願いします! 救命草をアメリアに渡しました。
アメリア:受け取ったわ。そのまま懐にしまいます。(一同爆笑)
クリム:あー! このエルフー!
アメリア:(笑)冗談よ。ちゃんと使ってあげる。
レンジャー技能のおかげで救命草は8点の回復効果を出し、クリムは無事に全快に。
クリム:助かりますー! いつもより元気が出た気がする。
アメリア:高くつくからね。(一同笑)
グラウム:勝手に木に登って勝手に落ちてダメージ受けるって……バカとしか言いようがないな。
クリム:バカですいません……若気の至りなんです……。
グラウム:ほら、いいから行くぞ。
アザレア:見つけた足跡を追いかけるよ。
ハプニング(?)はあったものの一行は足跡追跡を再開。
足跡を追ってけもの道をしばらく進むと、少し開けた場所に到着した。
グラウム:リッジさんが言ってた狩場だろうか。
GM:おそらくそうだろう。そこに足を踏み入れようとしたところですが……ここで危険感知判定をしてもらおう。目標値は9。
今度の判定もグラウムとアザレアが成功。クリムとアメリアはまたしても失敗する。
アメリア:どうせ失敗するなら1・1出てくれればいいのに……1・2とか一番悲しい出目じゃない。
GM:気持ちはわかるけども(笑)。——足跡はそのまま開けた場所に続いていますが、グラウムとアザレアはその先にウルフがいることに気が付きます。ウルフの方はまだこちらには気付いていない。
アザレア:みんな止まって。ウルフだ。
GM:それとその近くには植物もあります。ちょっと危なそうな大きな植物で、三メートルくらいの嚢を持ったウツボカズラみたいなやつ。ツタも生えていてウネウネ動きそうです。
アザレア:でかい!? 明らかに危なそうな……。
グラウム:う、うーん……(苦笑い)。
クリム:どうしたのアザレア、グラウム?
アザレア:なんかでかい植物が……あるというか、いるというか。
クリム:……動いてる?
グラウム:動きそうな感じはするな。
アメリア:うわ、気持ち悪い。
GM:見えるところにいるので先に魔物知識判定してOKです。ウルフと植物それぞれに判定してね。
アザレア:これはクリムの出番ね。
アメリア:あれくらい知ってるわよね?
クリム:何だったかなー。植物の方から魔物知識判定するよ。
魔物知識判定はセージ技能で行える判定だ。成功すると敵の能力全てがわかる……というかルールブックに載ってるデータそのものを見ることが許される。さらに高い達成値を出せば魔物の弱点を見抜くこともできるぞ。
失敗した場合はデータを直接見ることはできないが、記憶を頼りにするのはOKだ。とはいえ、敵の強さを見誤れば勝てる戦いも勝てなくなるもの。セージ技能の非常に重要な役割の一つだ。
この判定にクリムはどちらも弱点まで見抜き成功。敵は「ウルフ(レベル1/動物」と「スチームポッド(レベル2/植物)」だと判明した。
アザレア:植物の方はスチーム……蒸気? 特殊能力持ちか。
GM:ちなみにウルフとスチームポッドはそれぞれ二体ずついるぞ。ウルフは腹具合によって敵対するか変わるけど……キミたちが見る限りウロウロと獲物を探している様子ですね。
クリム:嫌だなー。でも近付かなければ襲ってこないでしょ。
グラウム:それはそうかもしれないが……もしかして、あのポットの袋の中に探し人が入ってるとか……ありえるんじゃないか?
一同:——あ。
普段狩場にしているという場所に明らかに人が入るほど巨大な袋を持った植物が鎮座している。もしかして——グラウムの言葉で、そんな不安な可能性に全員が気が付く。
クリム:で、でも足跡は続いてるんでしょ?
GM:開けた場所に入ってるところまではわかるけど、その先はわからないね。スチームポッドの横で途切れてるかどうかまではここからじゃ見えない。
アザレア:袋の中から〝ずるっ〟と出てくるとか嫌だよ?
クリム:——よし、無視して他を探そう!(一同笑)
グラウム:ダメに決まってんだろ!
アザレア:足跡も続いてるし、確認するしかないよね……。
グラウム:それに、道を外れると足跡が追えない上に俺たちが迷子になる可能性もあるからな。
アメリア:それに、倒せばお金になる素材も手に入るしね♪
クリム:うう、個人的には行きたくないけど……。どうせ僕は戦えないし、みんなが頑張ってくれるなら行くとしようかな。怪我したら治すくらいはするよ!
不意打ちで攻撃などできないか考える一同だが、アメリアの魔法も射程は長くないため断念。真っ向から勝負を挑むことに決める。
GM:キミたちが前に出ると、ウルフたちはキミたちの存在に気が付き、敵意をあらわにしてくる。——では、戦闘開始だ!
◇ ◇ ◇
GM:戦闘ですが、今回は基本1に記載されている「基本戦闘ルール」を使用します。
基本戦闘ルールは「自軍後方エリア」「前線エリア」「敵軍後方エリア」の三つのエリアのみを使って戦闘するルール。前線エリアで戦士たちが殴り合い、互いの後方エリアから遠隔攻撃や支援を行う、シンプルな戦闘ルールだ。
GM:まずは戦闘準備から。使用できる魔法や戦闘特技があればどうぞ。
グラウム:【ビートルスキン】があるが……先制取れると1ラウンド無駄になるのか。ここでは使わない。
GM:OKだ。続いての魔物知識判定はさっきやったので省略して先制判定に移ろう。先制判定はスカウト技能と敏捷度ボーナス。こっちの先制値の最大はウルフの11だ。
この判定にスカウト技能を持つグラウムとアザレアが共に11と同値を出しギリギリで成功。PCたちが先制を取ることに。
GM:続いて初期配置だ。まずは先制側から前線エリアと後方エリアのどちらから始めるか決めよう。
アザレア:単純に前衛職の私とグラウムが前線エリアかな。
クリム:あ、ちょっと待って。【フィールド・プロテクション】を前衛の二人にかけたいけど、これ自分のいるエリアしか対象にできないんだけど……。僕が前に出なきゃダメ?
グラウム:うーむ、さすがにクリムには前線に来るなと言いたいな。
GM:ああ、今回はキミたちが先制取ってるでしょ? だから初期配置を全員後方エリアにして最初にクリムが【フィールド・プロテクション】をかけてから移動して攻撃することもできるよ。通常移動が必要になるから前線で魔法とか使うなら別だけど。
グラウム:なるほど。【ビートルスキン】は……補助動作でできるか。それで問題ないな。
相談の結果、初期配置はまずは全員が後方エリアに。【フィールド・プロテクション】をかけてから前線に殴りに行く形だ。一方の敵はウルフ二体とスチームポッド二体の全員が前線エリアに配置された。
GM:では配置も終わったので戦闘開始だ。PCが先制だ。
クリム:それじゃあ【フィールド・プロテクション】! 魔法行使判定は……(ダイスを振る)成功! みんな被ダメージ1点軽減してね。
アザレア:効果時間は……3分(18ラウンド)か。それまでには戦闘も終わるでしょ。
グラウム:アメリアも先に行動するか?
アメリア:私は乱戦になっても攻撃できるから大丈夫。《ターゲッティング》取ってるから。
ここでソード・ワールドの戦闘の特徴的なルールである「乱戦エリア」について触れておこう。近接で戦い合う敵同士は「乱戦エリア」というものを作るのだが、乱戦エリアの外から乱戦中の敵を狙う場合〝誤射〟の危険——味方に当たる可能性があるのだ。弓矢などの武器はもちろん、魔法でも射撃のように撃ち込む魔法は誤射する可能性が出てくる。
アメリアが言っている《ターゲッティング》はその〝誤射〟を起こさず乱戦中の敵を狙える戦闘特技。遠隔攻撃するには必須とも言える特技だ。
グラウム:それなら順番は自由で大丈夫だな。あとはどれから倒すかだが……。
クリム:倒しやすいのはウルフじゃない?
アメリア:でもスチームポッドのデバフ(不利な影響を受ける効果)が厄介なのよね……。二体いるけど重複する?
GM:いや、同じ名前の効果は基本的に重複はしない。二体いても効果が二倍になったりはしないけど、一体でもいれば効果は残るね。
スチームポッドは「不快な蒸気」を常に吹き出していて、周囲を生物にとって不快な環境にする能力を持っている。そのためスチームポッドのいるエリアにいるキャラクターは命中力と回避力にマイナス1のペナルティを受けるのだ。
ただし、「森」や「湿地」などに生息する生き物にはそこまで不快ではないらしく効果は無い。敵のウルフは森に生息する動物なのでこの効果は受けていないぞ。
クリム:確かに蒸気は面倒だけど、ウルフの方がHPが少ないし弱点に「物理ダメージ+2」があるから、すぐに倒せると思うんだよね。
アザレア:なるほどね。確かに攻撃が当たれば倒せそう。
アメリア:確かにそうね。なら前衛組に先にウルフを攻撃してもらうのがよさそう。
グラウム:よし、なら俺から行こう。——補助動作で【ビートルスキン】を使用して防護点+2。前線エリアに通常移動して……宣言特技で《全力攻撃1》を使用。 自分の回避がマイナス2される代わりにダメージが+4点! ウルフAに攻撃!
GM:いきなり全力だな! ……あ、言い忘れてたけどこの戦闘では敵は全員判定のダイスを振りません。なのでウルフの回避力は9で固定ね。
通常の処理では敵に攻撃する時は、まず攻撃側が命中力に2dを足した値を出し、その後対象が回避力に2dを足した値を出す。それで攻撃側の合計値が回避側の合計値を上回っていれば攻撃は命中、同値か下回っていれば回避成功で攻撃は当たらない、ということになる。
ただ、毎回ダイスを振るのは時間がかかるため魔物側は判定にダイスを振らず固定値で処理するルールが用意されている。この戦闘ではウルフもスチームポッドもそのルールを採用するため、回避も命中もデータに記載の固定値を使用するぞ。
グラウム:了解だ。ではウルフAに命中判定!(ダイスを振る)……スチームポッドのペナルティも含めて命中は11。命中!
GM:当たったか! ダメージをどうぞ。
グラウム:ヘビーメイスを振り下ろすぞ。(ダイスを振る)16点ダメージ!
アメリア:ちょっ(笑)。
クリム:オーバーキル(笑)。
アザレア:筋力高いし《全力攻撃1》だもんね……(笑)。
アメリア:あ、弱点の「物理ダメージ+2」は足した?
グラウム:足してない。じゃあ18点ダメージ。(一同笑)
GM:ウルフの防護点で1点軽減して17点ダメージ、HPは12点なので……倒れた。
グラウム:おらぁ! ごしゃ。
アザレア:余裕のオーバーキルだね(笑)。
クリム:怖いよー。
アメリア:もうあいつ一人でいいんじゃない?(一同笑)
GM:グラウムのヘビーメイスの一撃でウルフは「ギャウ」とわずかな断末魔をあげつつ頭部が凹まされた。一撃でダウンだ。
アザレア:よし私も続くよ! 通常移動で前線に移動して、特に宣言するものはないのでそのままヘビーアックスでウルフBに攻撃!(ダイスを振る)えーっと……あれ?
アメリア:……小さいわね。
アザレア:命中値8……ペナルティもあるから7か。当たらないじゃん!?
GM:それは当たらないな。アザレアのヘビーアックスをウルフは華麗に回避。
アザレア:くっ、空を切ったか……もう、蒸気が鬱陶しい!
クリム:本当に蒸気?
グラウム:蒸気無くても当たってないだろ。
アザレア:じょ、蒸気のせいで目測を誤ったの! 蒸気のせいで私は悪くない!(一同笑)
GM:突然突っ込んできて斧を振るってきたアザレアに対し、ウルフは敵対するように唸っている。グルル。
アザレア:地面を耕しただけで終わってしまった……悲しい……。
アメリア:(笑)ま、ドンマイね。——ウルフは物理組に任せてよさそうね。私はスチームポッドを狙うわ。スチームポッドAに【ファイアボルト】。まず魔法行使判定は——(ダイスを振る)13。
GM:魔法だから精神抵抗か。スチームポッドの精神抵抗力は10なので成功。抵抗できずそのままダメージだ。
ソード・ワールドの魔法は(攻撃魔法であろうと)基本的に回避する手段は無く、精神による「抵抗」を試みることになる。抵抗に失敗すれば当然ダメージを受けるが、抵抗に成功した場合の処理は魔法によって異なり、多くの攻撃魔法は「半減」——つまり算出したダメージの半分は抵抗に成功しても受けることになる。この【ファイアボルト】も抵抗成功時は「半減」のダメージを受ける攻撃魔法だ。
アメリア:(ダイスを振る)9点の炎属性魔法ダメージ!
GM:くっ、魔法だから防護点も関係無しか。9点くらって残りHP9点だ。
グラウム:よし、良いダメージだ。
アメリア:妖精魔法に雷が無いのが残念ね。せっかく雷属性が弱点なのに。
GM:だが、今度はこっちの手番だ。まずは生き残ったウルフが目の前で斧を振り下ろしてきたアザレアに反撃。牙で噛み付くぞ。命中は9で固定。
アザレア:(ダイスを振る)……8。ペナルティが無ければ避けれてたのにー!
グラウム:妖怪「いちたりない」が出てきたか(笑)。
(今度こそ)不快な蒸気にやられたアザレアにウルフが噛み付く。
が、2dの打撃点は6点でアザレアの防護点は6点。命中はしたもののダメージは一切通らず防がれる。
GM:くっ、噛み付いたものの牙が通らない。
アザレア:盾で牙を防ぐよ。……盾持っておいてよかったー。これで大ダメージ受けてたらダサいもんね。
クリム:ウルフ、盾に噛み付いたままぶら下がってそう。(一同笑)
GM:次はスチームポッドだ。植物に知能は無いので近くにいるやつからランダムにツルを叩きつけるぞ。
一体目はグラウムに攻撃。《全力攻撃1》に「不快な蒸気」で回避がマイナス3されてるグラウムは回避に失敗。ツルを叩きつけられる。
ウルフよりもレベルが高いスチームポッドはウルフより大きい10点のダメージを出すが……金属鎧に【ビートルスキン】、クリムの【フィールド・プロテクション】も受けているグラウムはぴったりノーダメージでこれを耐える。
二体目もグラウムに攻撃して命中。今度は出目が高く出たが、それでも3点の被ダメージで終わる。
GM:うぐぐ、硬い。
クリム:前衛がこんなに硬いとは僕も思わなかった(笑)。
グラウム:一応ダメージはくらったぞ。HPが十分の一くらい削れた。(一同笑)
GM:く、くそう。——なんにせよこちらの手番は終わりだ。次はPCたち。
クリム:……ねえGM。そよ風吹かせたら「不快な蒸気」消えたりしない?
GM:え? そよ風くらいじゃ消えないと思うけど……どれのこと?
クリム:フルシルの特殊神聖魔法【ウィンド・サーキュレイション】。
GM:えーっと……(ルールブックの記述を見る)……「適温のそよ風を発生させて温度や風の影響によるペナルティ修正を1だけ軽減する」?
アメリア:ちょっと判断が難しいところね。不快な蒸気って湿度の問題って気もするし。
GM:そうね……(しばし考えて)……まあでも、スチームポッドは「蒸気で高温多湿にする」とあるし、高温多湿をなくせると考えれば使えるとみていいかな。OKとしよう。
クリム:やった! じゃあ先に僕が行動する。【ウィンド・サーキュレイション】! フルシル様、彼らに快適な環境を!(一同笑)
魔法行使判定は無事に成功。適温のそよ風がスチームポッドの不快な蒸気を押し流していく。
GM:スチームポッドは蒸気を出し続けているが、高温多湿を維持できなくなった。「不快な蒸気」のペナルティが1軽減、ゼロになります。
グラウム:よし、助かるぜ。
アザレア:快適になったわ。
クリム:これで普段通りの力が出せるはず。グラウム、アザレアあとは頼んだ!
グラウム:それじゃあ俺から、今ダメージくらってたスチームポッドAに《全力攻撃1》!
この不快な蒸気を無効化されたところで大勢は決した。
ペナルティも無くなったグラウムの攻撃は無事に命中。既にHPが下がっていたスチームポッドが全力攻撃に耐えられるわけなく、ダウン。
続くアザレアも今度こそとウルフBに攻撃し命中。ヘビーアックスはウルフを一撃で真っ二つにする。
残ったスチームポッド一体で何ができることもなく、最後はグラウムのヘビーメイスに茎を叩き折られて倒れるのだった——。
グラウム:よし、終わったか。
アザレア:ふー。それじゃあ剥ぎ取りかな?
クリム:その前にスチームポッドの中に人が入ってないか確認しよう?
アザレア:それだ。チェックするよ。
GM:地面に落ちているスチームポッドの袋を確認しますが、中に何かが入っている様子はありません。
グラウム:足跡は奥に続いているのか?
GM:そのまま奥に続いているね。ここで途切れたりはしていない。
クリム:よかったー。
アザレア:中からズルズルっと人が出てくる光景を目にせずに済んだわ。
アメリア:でも出てきてくれたらそれで依頼終わりになったのに……。(一同笑)
GM:それでは戦利品判定をどうぞ。特に周囲に危険な様子はないから大丈夫だろう。
グラウム:敵は四体だから、一人一回ずつだな。
倒した魔物には「戦利品判定」を行うことで、お金になる「戦利品」を得ることができる。2dを振った出目によって得られるものが変わり、当然高い出目の方が高価な戦利品を得ることができる。
ちなみに戦利品判定には10分の時間がかかるので、皆で分担して行うと無駄な時間をかけずに済むぞ。(ここでは四人で一体ずつ戦利品を取ったので、10分だけで終わっている)
クリム:(戦利品判定が終わり)……狼の皮と蒸気の嚢二個で、合計八〇Gかな。
グラウム:おや、戦利品が三個しかないな。四体から取ったはずだが……。(一同笑)
アザレア:うぐっ。(←ウルフの戦利品判定で何も出せなかった)
アメリア:真っ二つにしちゃったから、使える皮の部分も無くなったのかしら?(笑)
アザレア:そんなにぐちゃぐちゃにしたつもりはないのに……。
クリム:じゃあウルフは元から一体しかいなかったってことで先に進みますか。(一同笑)
アザレア:あうう……。
アメリア:回復とかは大丈夫?
グラウム:いらんいらん。ほとんどくらってない。
アメリア:頼もし過ぎる(笑)。まあ本人が大丈夫というならいいわ。
GM:それじゃあ足跡を追っていこう。キミたちはさらに森の奥へと進んでいく——。
【後編】へ続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます