餓狼

@takoika216

第1話 始まりの満月 1


あなたは自分の親は本当に人間だと言えますか。

もちろん言える人がほとんどだとは思うさ。

俺だって自分の親は人間だと信じてるさ

でも時々不安になる時がある。

だって父が手を合せている仏壇には狼の写真が飾ってあるんだもの。。


20xx年


「父さーん。朝飯できたぜー」


仏壇に手を合わせている父に声をかける

仏壇には母の写真はなく、白い毛並みの凛とした狼の写真だ。


「おう。白夜(びゃくや)今行く」


そう言った父は少し目を瞑り手を合わせたあと、俺と父さんの朝食が並ぶテーブルに戻ってきた。


「白夜も…今日で20歳か…」


そう言った父に朝食のパンをかじりながらもごもごとした返事をする。


「ぅえ。あぁ。まぁそうだな。」


普段からあまり喋る父ではないが今日はいちだんと静かだ。そんな父に押されたわけではないが俺もあまり喋らずに朝食を食べ終わる。


「父さん、もう大学に行くから洗い物だけ頼むよ」


そう言い残し大学に向かおうとした俺に父がいつもより重い声で声をかけてきた。


「今日の夜は、満月だ。早く帰ってこいよ。」


俺は少し流し気味に返事をする


「まーた、それかよ。母さんが飼ってた狼が化けてでるって話しだろ。分かってるって早く帰ってくるよ」


そう返事をした俺は親父の方を振り向くことはなく家の外に出た。



俺の父さんはサラリーマンだったり外で働く仕事ではなくネットを使った仕事をしている。アルファプラスだったかアフィリエイトだったか忘れたが、俺にはよくわからん。

普段はそんなこといわないのだが、さっき父さんも言っていたが、うちの親子は満月の夜は2人で家にこもっている。

え?今まで1度も出たことないかって?そんなこと無いわけではないんだが満月の夜がお小遣いの日なんだよ。

この日に家にいないとお小遣いが貰えないわけで基本的には家に帰ってる。

もちろん満月の日に外にいたからって変身したこともないし狼が化けてでたことなんてないぜ?

そもそも仏壇の狼の写真も信じちゃいないがな。

俺の髪の毛ちゃんと黒だもん。


そんなことを思いながら学校へ向かっていると後ろから軽いバックの打撃と声をかけられる


「おーっす!白夜!今日の夜遊びに行こうぜー!あっ…満月だからむりか」


そう笑いながら言うこいつは 澤田 大輝 幼稚園からの腐れ縁で小中高大とずっと一緒だ。


「さわやーん。分かってるくせに毎度誘ってくんなよー。」


少し見上げながらさわやんに対して返事をする

俺だって170cmで小さい訳ではないんだがこいつはなんと190cm近くある。しかもイケメン。

もちろんモテまくる。周りの女子大生も明らかにさわやんのことを見ながら話しているグループがちらほら見えるくらいにはイケメンだ。


「そりゃ誘うだろ〜 満月の夜は外に出ないなんて漫画じゃあるまいし、白夜の家族はおもしれーからな!」


こいつは数少ない俺の家族の事情を知ってる男だ。


「まぁ、そりゃーこんな面白いギャグねーかもしれないけどよー。俺からしたらだいぶ困ってるんだよ。バイトのシフトだって出しずらいし。」


イヤホンを外し会話をしながら大学に向かう。

「でも、満月の夜に外に出るのどーなるんだろうな。やっぱ安定に狼に変身するとか!」


ガオーと言わんばかりのポーズをとりながら話す、さわやんにすこし怒りながら返事をする


「ちゃかすなよ!そう言ってこの前外に出たけど何にもなかったろー?あの月お小遣いなくて大変だったんだぞ。」


前にも満月の夜に外には出たことあったがみんなが望むようなことはなんっっっにもなかった。

あったのは1ヶ月間家事掃除をやらされるくらいだ。


「じゃあさ!今日の夜誕生日パーティーしようぜ!せっかくの白夜の誕生日なんだからパーッと祝おうぜ!」


そう言ったさわやんにいやちょっと待てよと言い始めたくらいに後ろから声をかけられる。


「さんせーーーい!あたしもいく!」


そう元気いっぱいに声をかけてきたのは 桜井 ミキ さわやんの彼女だ。茶色がかったショートの髪に160に届かないくらいの身長。いかにもって感じの美少女なのだがどうもさわやんと並んでいると身長差のせいなのか、子供に見えてしまう


「ミキも賛成か!よーしそうと決まれば俺ん家でするか!」


やる気満々の2人に食い気味に返事をする


「誰も行くとは言ってないだろー。親父に帰ってこいって言われてんだよ」


俺だって別に何かあるとは思っちゃいないが、ただでさえ不規則なバイトのシフト組み方してるんだ。小遣い貰えなくなったらたまったもんじゃない。そう言って反対の意思を示すが、さわやんとミキはもうノリノリの様だ。


「夜になる前には解散するからさー。やろうよー」


そういう言ったミキに対してさわやんが面白半分にこう言った


「そうそう、夜になったら俺がベットで狼になんないとだからなぁ!」


じゃれあっている2人に呆れ気味にわかったよと返事をするがなんて返してもやる気なんだろうな。

そう思いながら大学に着いた俺たちは各々の授業に向かうために別方向に進む。


「じゃあまたメールするわー」


あいよーと軽く返事をして俺とミキの2人になる。

ミキは俺たちとは中学からの付き合いでなんだかんだ長くはある。

もちろんミキのことを好きだったこともあるがさわやんと付き合い始めてからはキッパリ手を引いたさ


「白夜くんの誕生日…去年祝えなかったもんね…」


ミキがそう言うまでは忘れていたがそう言えば去年も満月だったっけな。


「よく覚えてるなーそんなこと」


そう軽く返事をするとミキは


「そんなことじゃないよ!私だって去年楽しみだったんだから!今日は絶対来てよ!」


そう言ったミキは数学の教室に返事を聞くもんかと言わんばかりに入っていった。

あっ…と唖然しながらもまんざらでもない気はしていた。

しょうがねーな。日が暮れる前に帰れば怒られないだろ。

そう思いながら俺は物理の教室に入っていった。



授業も全てを終え補習を残したさわやんを大学にのこしミキと2人でスーパーに寄りながら買い物をする。


「白夜くんケーキはチョコケーキととショートケーキどっちがいいー?」


父さんに夜までには帰るとメールをしながらショートケーキと返事をする。

さわやんにもあんまり遅くなると帰っちまうぞと返事をしながら買い物を続けているとミキが


「お酒も買うけど何飲む〜?」


おいおい。まだ4時だぞ。暗くなる前には帰るって言ってるのに飲む気かよ。と思い


「いや流石に今日はいいやー。また別日な」


と返事をしたが2人で飲むのだろうカゴにはお酒が入っていた。

会計を済ませるとタイミングを計ったかのようにさわやんがスーパーの入口から入ってきた。


「おーっす!補習おわったぜーい」


そう言ったさわやんに1200円と言いながら袋を持たせるミキを見ていると、将来尻に敷かれる感じなんだろうなぁ。と思いながらさわやんの家に向かう。


さわやんは一人暮らしをしており俺の家から近くマンションの一室を借りているらしい。

生意気なことにエレベーター付きの最上階だ。

誕生日パーティーとは名ばかりでいつものようにさわやんのいえに集まって喋る

やってる事はいつもと変わらんさ。

さわやんがグラスを持ち立ち上がる


「では!白夜の20歳の誕生日を祝って!」

「「「かんぱーーいっ」」」


まぁ、なんだかんだ言いつつ俺もお酒は飲んでいる。

いつものように喋りながら最近ハマってるゲームや授業の話し。いつもと違うと言えばお酒があるかないかくらいだ。

普段だったら日付が変わるか変わらないかで帰るんだが今日は満月だ。

もちろん早く帰るさ。

そういった話も織り交ぜながら時間もすぎていき、始めた時間が遅かったのもあるかもしれないがあっという間に外はオレンジ色になっていた。


「わりぃそろそろ俺帰んねーとだ。父さんにも暗くなる前には帰るって言ってあるし」


そう言ったおれは少しふらつきながら立ち上がる

もう泊まっちゃえば?とミキにも言われたが朝の父さんの言葉を思い出しいやと返事をし爆睡したさわやんとミキとお別れをする。

ミキはさわやんが寝てしまっているからか寂しそうな顔をしていていたがまた明日と言い残し部屋を後にした。




満月。俺はもちろん見たことはない。

なんでだろうな。お酒を飲んだからなのかな。満月ってやつを見たくなっちまったのかもしれない。俺は10分で帰れる帰り道をゆっくり歩いていた。


父さんから早く帰ってこいとメールがあったからかな。反抗期ってやつさ。

色んな理由を付けているが見てみたかったのさ

ただの好奇心さ


俺は公園で暗くなった空を見上げた。


とても綺麗だったさ


今日の月明かりは、俺が今までみた月明かりとは違い眩しくて瞬きも忘れるぐらいさ。


忘れて瞬きをし瞳を開くと俺の両手は赤く染っていた。

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