毎度のことだがモンスター考えるのってかなり大変なんだよ
なんだ、この街は。マジで街全体が野球のグラウンドになってるな。
“そこかしこで練習してますね”
俺は野球好きだけど無茶苦茶過ぎだろこの街。まあ散策は後だ金が無い、とにかく金がない。よっ、ほっ、と、手荒い歓迎だな。
“そりゃそうですよ。サーラ様に手持ちの財産全て贈与してしまったんだから”
あんなすぐ使えねぇ金なんてどうだっていいんだよ。手持ちの金がねぇ。これじゃ飯食って木賃宿泊まったら終わりじゃねえか。
「ほいっと、よう足拭きマットかい? サービスが行き届いた街だな。ついでにハンターユニオンはどこだか教えてくれるか?」
ジャノピーを駐車させマダックスに入った錫乃介は頭部に向かって来た数球のビーンボールを躱し、明らかにゲッツー阻止の脚部破壊を狙って来たようなスライディングをひょいと飛び避け、踏みつけたヒョロい三下の足をねじる。
「そ、そっちだ!」
「サンキュー」
うめき声を上げながら指を差すのは街の外壁を担い幾つもの建造物が並ぶ客席スタンド側ではなく、錫乃介達が入ってきたスコアボード側であった。何事もなかったかのようにそちらへ歩みを進めながら残金を確認する。この街に到着する前、月に向かおうとしてる女性と出会い一悶着も二悶着も経た後、旧新宿の交易利権や現在取り組んでいる任務の報酬(現地妻を作るための費用をハンターユニオンに経費として落とせる)権利書を全て譲渡してしまっていたため、財布デバイスには995cしか残っていなかった。
“ずいぶん余裕ですね”
いいかげん新しい街でのサプライズイベントなんぞもう慣れたわ。超音速の砲弾が飛んでくるより余っ程マシだろこの程度。どういう掟があるのかわからんけど、野球異常者共が集まった街だっつーうのは出会って2秒で即把握だぜ。
“AVタイトルみたいな表現止めてください”
まぁ、でも野球のレベルは低そうだな。さっきまで大谷選手のプレー集見てたせいかもしれないけど、当時のメジャーに比べたらさっきのスライディングもビーンボールも練習してた奴らもカスだな。俺が昔やってた草野球の方がまだマシだぜ。
“まあ、それは否定できないですね。スイングもキャッチボールもまるで素人でした”
電脳が発達したくせに野球レベル落ちてるなんて情けねぇな。データに頼りすぎてちゃんとした練習が疎かになってるんじゃねぇの?
“錫乃介様の当時もデータ野球が発達し過ぎたことに、イチロー選手は苦言を呈してましたね”
知らん、なんて?
“データに雁字搦めになって感性が消えていってる、と”
へぇ、さすがイチローだねぇ。
スコアボードの上部はハンターユニオンとして改築されていた。その造りは今まで立ち寄った街ではどのユニオンも堅牢で要塞のような建造物であったのにたいして、ここではボールパークのVIP観覧席のようにグラウンドが一望できるようなガラス張りの施設であった。無論対空砲や大小の重機銃、機関砲などで武装されていることは言うまでもない。
☆ハンターユニオン リクエストボード
球拾い 人足 1日 50c
野良ドローン ハント 1台 50c
球食い機獣犬 駆除 1体 50c
暴走レーキ 駆除 1体 50c
無差別ピッチングマシン ハント 1体 100c
使い捨て乱闘要員 人足 1体 150c
ビール売りアイドルゾンビババア 駆除 1体 150c
ボールボーイボーグ 駆除 1体 200c
ポンコツベンチウォーマー 駆除 1体 250c
ぴのクローン 駆除 1体 300c
貝バズーカ ハント 1体 500c
クレイジーホッシー 駆除 1体 500c
グレネードバッピ ハント 1体 500c
ブリブリブリカススキー ハント 1体 1,000c
ロージンスモッグ 駆除 1体 1000c
トラ・トラ・トラッキー ハント 1体 1,500c
バッティングピッチャー 経験者優遇 人足 2000c
ドアランチャー ハント 1体 3000c
増殖スラィリー ハント 1体 5000c
デッドフォックス ハント 1体 5000c
代走 経験者優遇 人足 5000c〜
外野 経験者優遇 人足 10,000c
ショート 経験者優遇 人足 15,000c〜
先発ピッチャー 経験者優遇 人足 20,000c〜
武装リリーフカー ハント 1体25,000c
バッファローベルヴェルファー 討伐 1体30,000c
釘バットマン 討伐 1体50,000c
万能戦艦クラッチャー 討伐 1体100,000c
多砲塔ジャヴィーノート 討伐 150,000c
畜ペンのツヴァイクロー 討伐 200,000c
複葉機シャオロン 討伐 500,000c
低翼単葉機ハリーホーク 討伐 600,000c
ワイルドレオポルド ハント 3,000,000c
廃棄物集合体グリーンモンスター 討伐 5,000,000c
オータニコピー 討伐 10,000,000c
ステロイダーポンズ 討伐 10,000,000c
スパイクジョーズ 討伐 1体 30,000,000c
フライングオクトパス 討伐 50,000,000c
鉱山開発陸上戦艦エクスカベーたん 討伐 80,000,000c
なあ
“はい”
球拾いとかバッティングピッチャーとかの仕事があるのはまだ理解出来んだけどさ、先発ピッチャーとかショートとか、あきらかにスタンディングメンバー募集してんのなんで? それも結構高給でよ。
“人手不足じゃないですか? よく荒川や多摩川の草野球リーグ登録チームでもメンバー足りずに余所のチームから助っ人募集したりすると記録に残ってます”
やたらローカル草野球事情に詳しいなお前。その通りだけどさ、こんなそこらで野球の練習してる街で人手不足? 変じゃね?
“あの人達のレベルが低すぎて使えないんじゃないですか?”
まあ、その辺が理由か。んじゃそこそこ経験ある俺ならソッコーでレギュラーじゃね? 俺ならピッチャーもショートもいけるぜ。一撃で高給とりじゃん。
“確かにリクエスト内容は年俸ではなく一試合あたりの報酬ですね”
いいじゃん、いいじゃん、外で危険に身を晒してドンパチしてわけわかんねぇ機獣相手にするより草野球やって金稼げるなら楽勝じゃん。
“そうですね。リクエストの機獣達も今までに遭遇してない者達ばかりですからね。一応機獣のデータはDLしておきますが”
そうそう、だってヤバそうなのばかりじゃん、何この『ぴのクローン』って? ファミスタかよ。
“仰る通りファミスタ由来のようです”
はあ? ゲームから具現化したとでもいうのか?
“ご説明しましょう。まだこの世界にスクラッチが起きる前、野球界、いえスポーツ界では大きな変革がありました”
ナビは滔々と語りはじめるのであった。
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