それでは、新しいクラスの皆さん自己紹介をしましょう!
小田急線の西口改札機に残った爆薬を設置して吹き飛ばし、道を広げる。
「おいおい、こんな地下でそんなドッカンドッカンやって大丈夫なのかよ」
図体に似合わず、心配性なのか山下が不安そうな顔をみせる。
「大丈夫だって、この地下丸ごとメイドインジャパンだぜ。北朝鮮のテポドン落ちたって耐えられるって。知らんけど」
「お前今知らんけどって最後付けたろ。だいたいメイドインジャパンって、お前のいた時代から130年経ってるって忘れてないか?」
山下の言葉に、え?という表情が一同に浮かぶ。
「そういやそうだな。ま、大丈夫だったんだし、良いんじゃん」
「イセタン、撃っていいぞ」
「わかった」
イセタンは躊躇なくトレホマシンピストルを錫乃介に向けている。
「待て待て待て待て待て待て!落ち着け。ちゃんと躯体には衝撃いかないように考えてるから!ちゃんと電脳ナビゲーションに確認しながらやってるから!な!」
「全くこんなあぶねー奴になると思わなかったぜ」
あぶねーのはどっちだ!
“どっちもどっちですね”
黙りねぃ!
「と、とりあえず、先に進む前にこの地下世界の状況と仲間の確認でもしようや。山下さんとシンディ以外俺知らねえし、ガキどもも仲間になった事だしよ」
「何だよ今更。でもま、確かにそうだな」
イセタンに今の新宿の状況を聞き込むが、あまり有益な情報は得られない。先に山下が述べていた通り、末端の少年兵達はただ命ぜられるまま動いていただけのようだった。
わかったのは、新宿を牛耳るのは同志と呼ばれる者たちだということ。リーダーはわからないし、本部的な場所も知らないらしい。
他には同志以外にも地下世界に住む者はそこそこ多く、街としての機能はある程度は生きているという事であった。
「んで、お前ら親は?生きているのか?」
「わからない。同志達が親という事になっている。小さい頃は信じていたが、流石にこの歳になれば違うことに気付くさ」
「そうか……ま、そう言うことなんだろうな。生まれた頃から兵隊だったってわけか?」
「そうだ。少なくとも俺たちは同志達の子ども、いや手駒として育てられている」
子供達は皆親を知らない。元々孤児なのか?それとも親から引き離されているのか?
もし後者だとすれば、エグい事をすると錫乃介には怒りが込み上げるが、努めて陽気に振る舞う。
「そんじゃ次いこう。マスク外して自己紹介な!山下さんからね」
「何で俺からなんだよ……行方不明捜索部隊隊長ラオウ山下だ。アスファルトのハンターで守備隊少佐もしてる」
「え、少佐?マジ?知らなかった」
ぶっきらぼうな山下の自己紹介に錫乃介が反応する。
「あぁ、そういや言ってなかったな。別に隠してるわけでもないんだがな」
「少佐って響きカッケーな。はい次シンディ」
「先に名前言うなよ、シンディだ。山下のバディをやってる。ジークンドーが得意だ」
「え?山下さんのカキタ…ヘボォァッ!」
錫乃介が口を開いた途端、5〜6メートルは距離があった筈のシンディが一瞬のうちに踏み込み錫乃介を殴り倒す。その速さは正に雷光の如し、であった。
「何だよ、お前らずいぶん仲良くなってるじゃねえか」
「ああ、錫乃介にはアンタを助けて貰った恩があるしな、仲良くしてるぜ、な、錫乃介」
余計な事言うんじゃねぇっ!と、獣よりも鋭い目で睨むシンディ
「あっつつっ……え?仲良くって、あれ?今殴り飛ばされた気がするんだけど俺」
少し呆気に取られている子供達だが、その錫乃介の滑稽な姿に笑い始めている。
「ほら、次」
シンディは何も聞こえていないのか、次の人間にバトンを渡す。
「エメリッヒだ。近接格闘と狙撃が得意でバギー乗りだ」
「ローランドだ。同じくバギー乗りで銃器は大体使える。エメリッヒと組んでいる」
「フランシスだ。マーシャルアーツと拳銃を組み合わせたオリジナル格闘技が武器だ」
「フォードだ。軍用格闘術システマが得意だ」
「コッポラだ。フランシスとフォードをピックアップトラックに乗せている。ナイフ格闘術とドライビングテクニックは誰にも負けねえ」
「トムエイツだ。銃器全般格闘技全般、あとオルガンも弾く」
「ジャームッシュだ。トムと組んでいるサイドカー乗りだ。銃剣術使いだ」
「コルトレーンだ。クラブマガが得意だが、機械化された手足そのものが武器でもある」
「セロニアス。銃器、特にランチャー使いだ。コルトレーンと組んでいる。ミニバン乗りだ」
「ウォーターズだ。近接格闘、超振動ブレードを使った二刀術をやる」
「デイヴィスだ。ウォーターズのバディだ。ZIS-5(ソ連製トラック)乗り。重火器による後方支援、物資調達が主だ」
「なんつーか、全体的に脳筋でむさ苦しいですな。あれだろ、シンディちゃんを連れてるのは男ども皆んなを羨ましがらせる為に……あだっ!」
「くだらねえ事言ってんじゃねえ」
わざとらしく飄々と語る錫乃介に拳骨を落とす山下。皆んなクスクス笑っている。
「ほら、次お前らだろ。イセタンから」
錫乃介が殴られた頭をさすりながら、イセタンに自己紹介を促す。
「イセタンだ。この年少組のリーダーをやっている。ほら次」
「キャブです」
「キャロウェイです」
「ベルーシです」
「エイクロイドです」
「ブラウンです」
「ローハイドです」
「ブルースです」
「ゴマダレです」
なんかつーか、最後の奴だけ不憫な名前だな。
「そんで、俺様がソロハンター、『ドブさらいの赤銅錫乃介』だ!宜しくナッチャン!」
「ぼっちか……」
と言う小声がイセタン達の方から聞こえて来た。それを聞いた周りの奴らはゲラゲラ笑う。
「お、誰だコラ?今俺の事煽った奴。やんのかコラ!あだっ!」
ボコっと、ジャイアンがのび太を殴るかの如く、錫乃介の脳天に拳をゴチンと音が出る威力で落とす山下。
「やめねえか。アホは置いといて、イセタンは俺のコブラに乗って先導。キャブとキャロウェイはセロニアスのミニバン。ベルーシとエイクロイドはピックアップの架台。対空砲は触るなよ。残りのブラウン、ローハイド、ブルース、ゴマダレはZIS-5の荷台に乗れ。物資に悪戯するなよ。ほれっさっさと動く!」
山下の掛け声で子供達は俊敏に動く。矢張り訓練されている動きだが、どこか楽しそうになっている。
ニヤつきながら、他のハンター達も車両に乗り込んでいく。
頭をさすりながらジャイロキャノピーに乗り込もうとする錫乃介に山下はそっと声をかける。
「道化師、ご苦労さん」
「いいってことよ。シンディのパンチはガチだったけどな」
「効くだろ。アイツはワンインチパンチを習得してる。あの若さでな」
「ああ、効いた効いた。さ、行こうぜ」
「おう錫乃介は次鋒に回っておけ」
「へいへい」
イセタンの乗り込むコブラが先導する。錫乃介はそのすぐ後ろ二番手で進む。
さあ出発だ。今、日が登る♪
“母を訪ねてる場合じゃないですよ”
ガキどもにとっちゃ、3,000里より長い旅になるかもだぜ。
これからな。
“確かに”
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