第3話 西暦2117年4月5日の出来事②

「こんにちわ、探偵屋さん」

 その顔は、口から上が大きなマスクで覆われていた。

 防塵用のようなそれは、だが嘴のように僅かにとがり、睨みつけるクガミヤの視線に突き刺さっていた。

 ペストマスク。

 遠い昔に、欧州の大陸で流行した病を治す医者がつけていたとされる防護マスク。もちろんそれ自体ではなく、模したようなそれを、悪趣味にも身に着けるその女から、男は深いため息と共に、視線と落とした。

「またお前か」

「仕事を与えに来たもの。そんな顔をされる謂れはなくてよ」

「施しを与えられて上から気分で満足か、ハイエナ」

「中欧政府から追い出されて、文字通り足をもがれた男は、それこそ負け犬なのかしらね」

「違いない。俺もお前も同種だってことだ」

 しばしの沈黙。

 にらみ合う二人の間で立つシェイフォンは、ややひりつく空気に、幼い顔を更に強張らせながら、やや華奢な体をぎこちなく動かしては、項垂れるクガミヤの方へとすがるような目を向ける。

 そんな彼女を見かねて、クガミヤは、俯いたまま小さく肩をすくめて見せた。

「シェイフォン。俺の寝室から俺の杖を取ってきてくれ」

「は、はい」

 小走りに駆けていく、小さな背中。

 女はペストマスク越しにその少女を目で追いかけながら、ニッコリと笑みを浮かべながら、一歩事務所に足を踏み入れた。

「いい子ですわね。魂の純真さが透けて見えますわ」

「あまり戯れ合う時間も惜しいだろう、お互いに」

「ええ」

「ならさっさと座れ仲介屋。これ以上ここにいたらお前の死臭が染みつきそうでお前の首を刎ねたくなる」

「香水なら毎日変えていますのにね」

 クスクスと笑いながら、クガミヤの向かいのソファーにそっと腰掛ける喪服の女性に、クガミヤは組んでいた足を下すと、視線を上げ、女のマスクを覗き込んだ。

「要件は?」

「あら、世間話もなしですか?」

「お互いに、痛い目は見せ合っているはずだ。今更腹の底を探ることもないだろう」

「では、さっそく本題でも」

 そう告げると、喪服の女性は持っていた鞄をコーヒーテーブルの上にそっと置くと、ジッパーを開いて見せた。

 そうして、取り出したのは、一冊のバインダー。

 女はソファーに背中ら預けるように体を傾けると、開いたバインダーに目を通しながら語り始めた。

「我々の事務所に依頼が来たのは、一週間前の午後8時28分。

 依頼主は、江前区画内、マンション経営者。当該建物の管理人より連絡があり、その部屋の一室から異様な異臭と騒音が確認されたため、住民が不安に陥っているからと確認をしてほしいとの調査を受けました」

 男は、そのくだりを聞くだけで、やや嫌な予感がした。

 その程度の依頼なら、他の業者に回しているだろう。状況が悪化していることに男は頭を抱えながら、女の話を聞き続けた。

「で、我々は都内のテイホン調査事務所に、マンションへの調査を依頼したわ」

「……」

「聞き慣れた事務所でしょうかね」

「界隈では、知らん奴はおらんよ」

「それはよかった」

「……前回依頼先の名前を出していいのか」

 しかも結構な大手の事務所だった。都内で決して少なくない探偵事務所、調査事務所を束ねても、決して資本、人員、横のつながり、どれを比較しても、トップ10に食い込むほどだろう。

 嫌な予感はさらに増していき、男は声が枯れそうな面持ちで、さらに尋ねると、

「本来はダメね。お互いの個人情報ですもの」

 クスクスと、笑って、女はマスク越しに男の心底いやそうな顔を覗き込んでは、ニッコリと口元に笑みを浮かべた。

「でも大丈夫。もうそこは『ない』わ」

「――――――」

「調べてみたらわかるわ」

「……。シェイフォン」

 クガミヤは、苦虫をかみつぶしたような表情はそのまま、部屋の隅で、木製の長杖を抱えたまま立ち尽くしていた少女、シェイフォンを手招きした。

「は、はいッ」

「外部通信ユニットを持ってきてくれ」

 駆け寄るシェイフォンから杖を受け取るクガミヤに言われるまま、シェイフォンは小走りで、事務所の奥へとかけていく。

 その後ろ姿を見ながら、クガミヤはうんざりとした表情を滲ませた。

「……」

「顔色がとても悪いわね」

「……。続けろ」

「一日目。テイホン事務所の調査エージェントが4名、214号室に調査したわ。

 二日目。武装化したエージェントが7名。同じく。、214号室のドアを破壊して、中に突撃したわ。

 三日目から六日目。重武装の職員が中から出てきたアンノウンと戦闘したわ」

「……各時点での行動を起こした職員の顛末は」

「聞く必要ある?」

「……」

「それとも直接見に行った方がよろしいかしら」

「―――――いい」

 駆け寄ってくるシェイフォンに手を伸ばすと、躊躇いがちに渡されるままに、クガミヤは小型の金属リングを手首にはめ込んだ。

 青く光を放つ手首のリング。

 光はやがて立ち上り、眼前に仮想のスクリーンを造り出す。

「テイホン事務所を検索」

 クガミヤの低い声を、手首のリングが拾い上げ、眼前に検索情報が、一覧となって映し出される。

 その情報は些細な違いはあれど、基本は同じだった。

 つい、30分前に、テイホン事務所所長、テイホン・ハッシュバルトが、従業員100人と共に遺体となって、江前区画内高層マンションより、遺体で見つかった。

 写真はなく、否、深く検索すれば映し出されるのだろうが、そんな気力もなく、クガミヤは手首にはめた金属リングに指を這わせ、漏れ出る光を抑えた。

「……駆け込み寺か、それとも人柱の類か」

「両方よ」

「ひどく、性根が腐ってやがる」

「お好きでしょ」

「反吐が出るほどにな」

 コツリと木製の杖を握りしめ、床を先端で叩くと、天を仰ぎのけ反っていた体を起こし、クガミヤは、腕を突き出した。

「出せ」

「何を?」

「お前が求めるものと、俺が求めるものの二つだ」

「お目が高い」

 喪服の女は、そう言ってバインダーを静かに閉じると、鞄の中に手を突っ込み、さらに一冊の本を取り出し、クガミヤに差し出した。

 手に取り広げれば、表題に書かれた文字『契約書』

 様々書かれているが、一番下には、地震の名前と、仲介主の名前であるハンナ・アドリウスと書かれた名前、そして依頼主の氏名。

「ワン・ゴールフリード……」

「ビルの持ち主よ」

さらに突き出された封筒を手に取り開きつつ、クガミヤはじっとその依頼主の名前、住所を凝視する。

「……シェイフォン。依頼主の名前記録しておけ」

「了解です」

「あと、小切手、ゼロが二つ足りん」

 封筒の中から、小切手を一枚取り出しては、渋面を浮かべるクガミヤに、女はニコリと口の端をゆがめた。

「これ前金よ。せめて一つで勘弁して頂戴ね」

「手前が払うわけでもないだろうに。ハイエナが値踏みしやがって。別途経費は請求するからな」

「もちろんよ」

「ならいい。ピンハネした代金はきっちり残しておけよ。払えなくなるだろうからな」

 そう言って、小切手の入った封筒を突き返すと、クガミヤは右足の脛に手を伸ばし、カシャリと金属の擦れる音が響く。

 金属製の義足に格納ラックが開き、折りたたみ式ナイフが取り出されると、クガミヤはその切っ先を親指に押し当てた。

 ツゥと流れ落ちる赤い血。

 滲む親指を抑え、クガミヤは契約書の自身の名前の乱の端にぐっと指腹を押し付けると、契約書を閉じては、喪服の女に突き出した。

「受け取れ」

「ええ。ご利用ありがとうございます」

「で、もう少し話を聞かせてもらおう」

「いいわよ」

 そう言いながら、喪服の女は、折りたたみ式のナイフを右脚の義足の格納ラックに収めるクガミヤへと小切手の封筒を差し出す。

「どこから話したらいいかしらね」

「生きている人間からはどうとでも聞ける。まずは現時点で、テイホン事務所の経緯についてだ」

 クガミヤは、小切手の入った封筒を胸ポケットに差し込むと、手すりに立てかけていた木の杖に手を這わせながら、静かに問いかける。

「市中に流れている情報についての真偽についてだ」

「真実よ。私自身が彼の遺体を見に行ったもの。おかげで違約金を依頼主にたっぷり払うことになって、こちらとしてはさすがに素寒貧よ」

「解せんな。あの事務所、武装した職員だけでも、本部で100人を抱えていた。荒事なら、事案解決割合は、相当よかったはずだ」

「ええ。暴徒鎮圧依頼、海境防衛任務、果ては中央政府を通じての戦地への派遣。もはやPMCもかくやといわんばかりの勢いだったわ。

 戦闘特化部門の事務所の中では、人員、財力、武力共に最大手の規模ね」

「だからこそだ」

 クガミヤは、女の言葉をやや遮るように、自身の言葉で被せる。

「公表されている経常利益だけでも、他のすべての事務所を大きく上回っている。人手も多く、武装は常に最新式の技術を取り入れていた。全身義体装備の職員を起用していたのは、あそこぐらいだ」

「ええ。そうね。その通りよ」

「その事務所の職員やエージェントが死ぬのは、間々あることだ。戦場に首を突っ込めば、どうしても命のやり取りが発生するのは常だ。

 だが、テイホン本人が、死んでいるという事実がどうにも解せん。職員が立て続けにロストしているのなら、その時点でこの案件から撤退しているはずだ」

「――――普通ならね」

「何があった?」

「さぁ」

 飄々とした様子は変わらず、そしてマスクの下に浮かべた笑みは崩れることなく、喪服の女は、足元に置いていた鞄の口に手を伸ばした。

 取り出されるのは、一冊のノート。

 記録メディアによる電子保存が基本のこのご時世、紙製ノートは珍しく、それが、煤と泥でみすぼらしく汚れた様に、クガミヤはやや目を見開いて、驚いて見せた。

「久しぶりに見たな、そんな古びたもの。ソレとボールペンは、もう実家のじい様連中ぐらいしか使ったのを見たことがない」

「クガミヤの本家はそうでしょうね」

「どこで手に入れた?」

「テイホン氏の亡骸から」

 微笑みは崩さず、女は顔を強張らせるクガミヤの下へ、その古ぼけたノートを一冊、テーブルの上に置いた。

「引継ぎ書類よ」

「……中身は?」

「さぁ」

 ポケットから取り出す、布製の手袋。

 両手にきつく手袋を嵌めこむと、クガミヤは、テーブルに置かれたノートを手に取り、その表紙を覗き込んだ。

 灰に煤けた古びたノート。長年使ったかのような手あかのつき具合に、まるで地中から掘り返されたかのような、ざらついた手触りを感じる。

 違和感。

 まるで、遠い昔からこれがあったかのような、異質な感触が、指の腹に伝わる。

「……テイホン社長に、紙に情報を記録する習性はなかった」

「私も何度か、彼と面会していますが、そんな気配は一度もありませんでした」

「……。誰かが持たせた」

「さて」

「内容次第か」

 そう言いながら、クガミヤは、テーブルにノートを置くと、さらに女に問いかける。

「……。テイホンを含めた各職員の遺体は回収できているか?」

「回収できたのは、報道された限りで、120」

「今どこに?」

「中欧政府、内務省地下特殊保管庫内」

「外傷は?」

「見た方が早いでしょう」

 そう言って、女が鞄から更に取り出したのは、半透明の極薄のチップ。

 投げつけられるままに、クガミヤはそのチップを受け取ると、手首にはめ込んだ金属ブレスレットの、中央スリット内にスライドさせた。

 ピピッと電子音が流れ、ソレと共に半透明のチップが、パキンと小さな音を立てて砕ける。

「記憶完了。死体は俺も見に行く」

「お好きにどうぞ。自分の古巣に入るアポイントメントは取る必要はあるかしら?」

「いらん。それより依頼主に話を聞きに行く」

「ええ。手配するわ」

 そう言いながら立ち上がる女に、クガミヤは杖を支えに立ち上がると、踵を返しながら、背中を向けたまま女に告げた。

「後何度か、梃子で動いてもらう。お前ももう失敗は許されんだろうしな」

 ヒクリと女の肩が震える。

 ややひりつく空気。

 女の笑みが失せ、クガミヤはその空気を背中越しに感じたか、都市の風景広がる窓を見つめながら告げた。

「どうした、今更渡した紙きれ一枚、惜しくなったか?」

「……弱小事務所め。お前らなど、いつでも潰せることを忘れないことね」

「現場を知らないバカがよく吐くセリフだよ」

「……」

「やってみろ。狩場で狩りをする度胸があるならな」

「ええ、いつか必ず」

 やや声が強張るのを感じ、クガミヤはフンッと鼻を鳴らしては、手首にはめた金属製のリングをさすりながら、立ち上がる喪服の女に尋ねた。

「おい、ハイエナ。最後に一つ聞かせろ」

「あら、何かしら」

 鞄のジッパーを閉じつつ、立ち上がる喪服の女を横目に捉えながら、クガミヤは俯き加減に言葉を繋げる。

「一か月以上は前か、どこかのニュースだろうか。契約書に書かれていた依頼主の名前を見たことがある。

 名前は、ゴールフリード家の会長であるワン・ゴールフリードだったか」

「……」

「確か、この男、死んでいなかったか?」

 静かな空間に女の足音が聞こえる。

 無言で踵を返す女の背中に振り返ると、クガミヤはコツリと床を杖の先端で叩きつつ、事務所を後にしようとする女の背中を引き留めるように尋ねかけた。

「この依頼主に、あっていいんだな?」

「――――ええ。もちろん」

「ならいい。シェイフォン。見送ってやれ。ついでに入り口に塩でも撒いておいてくれ」

 パタパタと小気味いい足音と共に、事務所を去ろうとする女に、クガミヤはそう言うと、再び窓の向こうの都市の風景を見つめた。

 何も変わらぬ、古いビルと新しいビルが乱立する風景。

 ビルのビルの隙間には、人すら通れぬほどの狭さで、建物の中には、たくさんの人が住んでいることだろう。

 否。人は住んでいないのだ。

 事実、この雑居ビルすらも、このフロア以外、人は使っておらず、ほぼ廃墟のようなビルを間借りているようなものだ。

 当然だ。

 人口減少に伴い、貧富の格差が激しくなり、多くの人間はこの都市の外で暮らすことを余儀なくされているのだ。どれだけ建物の中が穴だらけの空虚であろうと、この町に、人が住むことを政府は許していない。

 では、この景色にあるビルには、一体何が入っているのだろうか、

 景色の向こうに広がる建物という名の、空洞には、一体何が詰められているのだろうか。

 その空虚な世界には、一体何があるのだろうか。

「――――随分と重たい話だったな」

 背後から聞こえてくる低い笑い声。

 床に伸びた影から伸びる、気配に、クガミヤは首をやや横に振って見せた。

「主よ。あえて聞かなかった質問があったな?」

「……。ああ」


 ―――――依頼主は、なぜ、死んだのか。


 クガミヤは、小さなため息と共に、踵を返すと、太陽を背に、床に広がる自分の影を見下ろし、杖を下した。

 コツン、木製の杖にしては、やや重たい衝撃音が響き渡り、その後静寂が広がる。

 男の語り掛ける声が、だだっ広いビルのフロア一帯に広がる。

「トウテツ。お前に問いかける」

「差し出そう。知識と力、我が持ちうるリソース。その底まで開こう」

「件のマンションの一室についてだ」

「ほぉ。お前らしからぬな。答えを直接欲しがるとは」

 男は、一泊呼吸を置いて、尋ねた。

「その建物の地下、どこに繋がっている?」


 ―――――影は、ニィと嗤う。


「……この街は、ある目的をもって造られた。

 150年前、たった一つの望みを以て作られた贖いの街。街という形は単なる、記号に過ぎない」

「……」

「テイホン・ハッシュバルトは答えを得ていたのだ。あの塔に欲望によって拍動する繭ががあると。

 答えよう、あの地に眠るのは揺籃の地だよ」

「なるほど、アイツが急いだわけだ」

 手に、彼が遺したノートを握りしめ、クガミヤは光を背に、自らの影を踏み、歩き出す。

 フロアの壁に掛けていた古ぼけたコートを一着、羽織り、杖で地面をたたき、不自由な右脚をやや引きずり気味に、事務室のドアを開いた。

 そのドアの前には、フロアに入ろうとしていたシェフォンが、驚いた様子でドアノブから手放していた。

「あ、先生」

「出かけるぞ、シェイフォン」

「あ、はい。配送車両を手配しますッ」

「頼む」

「はい、でもどちらに行きます?」

 手首にはめ込んだ金属環をさすりながら、シェイフォンが尋ねるのを横目に、クガミヤは、眠気の滲む欠伸をかみしめながら答える。

「まず、昼飯かな。それから適当に考えたいところだが」

 そう言っていると、クガミヤの手首にはめ込んでいたリングが、青くライトを放つ。

 嫌がらせのようなタイミングである。

 そんなことを考えながら、クガミヤは手首のリングを摩ると、空中に映像が浮かび上がり、漢字の羅列が目のまえに浮かび上がった。

 それは、先ほどの喪服からのメッセージだった。

『今日のPM5時30分。依頼主から、面会の許諾を受けたわ。場所はあなたの助手のリングにロケーションデータを送信しているわ。

 

時間厳守。

 

間違っても、だらだら昼飯食べながら、行くことのないようにお願いしますね』

 うんざりとしたため息が自然と漏れる。

『なお、中央政府の交渉は現在始めています。しかし外部の人間が、となると結果を出すのにも時間がかかると思われます。

 

 古巣に戻るのなら、そちらの方が顔を聞くのではないでしょうかね


 お互いの健闘を祈って』

 文章による通信データは以上。

 クガミヤは腕を下すと、その苦虫をかむような顔をする男の顔を覗き込み、怪訝そうに首をかしげるシェイフォンに掌を伸ばした。

「シェイフォン。あの女からデータチップをもらったな」

「はい、旧式のものですが」

 シェイフォンはそう言って、握りしめていた小さな黒い金属片を差し出す。受け取ったチップをポケットに突っ込むと、クガミヤは事務所のドアに鍵をかけた。

 ガタリと揺れる安物のドア。

 ――――猫から子供の迷子、戦地の行方不明まで。クガミヤ総合探索事務所。

ドアに掛けられた看板が揺れる。

不意に振り返れば、相変わらずセンスのないセリフと事務所の名前に、クガミヤはクシャリと髪を掻きむしると、踵を返した。

「……さて、何が見つかるかな?」

 コツリ。

 杖で床を叩く音が、波紋となって、薄暗い廊下に広がっていく。

 男は目を閉じ、暗闇に心を浸す。

 見えるものは何もなく、真実など、見えるはずもない。

 だが、その足跡は、見える。

 その先に―――――

「……行くぞ」

 

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