第6話サキュバスはじまりました
ステータス。
お話の中でよく登場する、キャラの状態をわかりやすく見せてくれる便利なやつ。
モノによってはステータスポイントを割り振って速さや防御力も上げられるが、現状を数値化してくれるという利点は色々とメリットがある。
魔法が使えるようになった世界ではあったが、ステータスの発見というのはまだ報告されていなかったはずだ…
そんなステータスらしき物が…今僕の目の前にある。
世紀の大発見、とまでは行かなくてもこの仕組みを解明すれば一攫千金も夢じゃないかも知れない。
「早速見ていきたいんだが…これって僕以外の人にも見えてるんだろうか?」
ちょうど、今いる公園には僕以外誰も居ないから…って居た!
普通に居たわ。
小学校3年生くらいの男の子だろうか
公園に子供なんて、最近では見かける方が珍しくって、居るのはホームレスか怖いお兄さんお姉さんくらいだったせいで脳が認識出来ていなかった
子供ならちょうど良い
万が一ステータスを見られたとしても騙しやすいし、誰かに話されたとしても社会的信用度が低いから誤魔化しが効く。
小学生に声をかける事案になる可能性は…
男同士だし大丈夫だろ!知らんけど
ということで
「こんにちは〜」
今の僕は、公園に1人でいる子供を心配して声掛けする優しいお兄さんだ。
優しそうな顔で獲物へにこやかに近づいていく。
「!!」
僕の声で振り向いたと思ったら、声にならない叫びを漏らして尻餅をついてしまった
「あー、いきなり喋りかけてごめん驚かせちゃったね」
マズイ、逃げられる!と内心焦りつつもフォローを入れる。
相手のことを慮っているという姿勢だけでも重要だ
割と優しく言ったつもりではあったのだが、男児は泣きそうな顔で首を横にブンブン振っている。
これじゃあまるで僕が恐喝しているみたいだ。
一旦引いた方が良いかも知れない。
とはいえ、転んだ子供を放っておくのも外聞が悪い
「大丈夫かい?ほら立てる?」
駆け寄って、ひとまず手を貸しつつ立たせる
「ごめんごめん。なんか一人で居たから心配して声掛けちゃった。驚かせちゃったみたいだね。」
「…大丈夫、です。お母さん待ってるだけ、だから」
「そっか…」
一先ず警戒は解けたようで、喋ってくれるようになった。
ちなみに、ステータスは僕の前に浮いているのだが、男児に気にした様子が見えないので他人には見えていない可能性が高い、多分。
ステータスボードをそのままにしているのは、見せるためというよりも、ただ単に消し方も出し方もわからないからだ。
「じゃあ、お兄さんもう行くね。気をつけてね」
「えっ、どこ、いくんですか?」
確実ではないが、知りたい事も知れたのだから戦略的撤退だ。
と思ったのだが、なぜか男児に行き先を聞かれる。
「いや、特にどことかは無いけど…おうちに帰るくらいかな」
「ここら辺の人?」
「いや、違うけどまあまあ遠くかな」
「名前はなんて言うんですか?」
いや、めっちゃ聞いてくるじゃん!
お見合いかよ!
「けい君!」
終わりの見えない質問の無間地獄に辟易しているところに母親の登場
地獄に仏な状況を
「どちら様ですか」
警戒心マックスで、けい君と呼ばれていた子供の手を引き自分の後ろに隠すとこちらを睨みつけている
「ただの通りすがりです。迷子かと思って声かけたんですが、いらぬ心配でした」
子供を心配するのはわかるが、いくらなんでも警戒しすぎじゃないか
と思ったけど、さっきの尻餅のせいか少し汚れているし、少しズボンが濡れているのでびっくりして漏らしちゃったのだろう。
僕でも気がつくのだから、お母さんも気づいたはずだ。
そう考えればこの警戒も納得だろう。
「けい君何か変なことされてない?」
「うん。転んだところ、助けてくれた」
「息子がお世話になりました。失礼します!」
捨て台詞を吐いて風のように女性は去って行ってしまった。
ステータスボードにも全然気づいたそぶりは無かったのでおそらくこれは人には見えない物なのだろう。
って待てよ、僕って確か魅了持ってたじゃん。
それ使えばあんな険悪にはならなかった?
ってか、魅了はパッシブじゃなくてアクティブのスキルなのか〜
そう思いながらスキルボードに目をやると、ふと種族欄が目に入る
「ん?サキュバス?」
サキュバス…魅了…
もしかして、僕の魅了って男限定!?
魅了と威圧のハートアタック @HouseFoods_TC
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