第15話 故障?
全身に疲労感が走り、その場に座り込む。顔を見上げてツユを見てみるが、何か考えたような顔をして、動きが止まっていた。沈黙を破ったのは私だった。
「今の、多分、私が撃ちました。武器もないから、なんで撃てたかわからないけど、撃ちたいと思ったままに光が飛んだから、私が原因な気がします。….ごめんなさい。」
時間が動き出したように、ツユの手がわたわたと揺れる。
「いや!あやまらなくていいんだよ!そっか、それなら多分シミュレータの故障なんだ。いや、原因は何かなって考えていただけ。」
「自分の姿を消せる化物を知っていたからさ、その手合いかなって思ったんだ。….って、そうだ!」
声がでかい。
「言い忘れてた!化物の中には、意思を持っていて、人の言葉を話せる奴がいるんだ。破鏡不照と名乗る、3体の化物。」
「破、鏡、不照をそれぞれ名乗っていて、姿を消せるのは、不照の化物。奴らは意思があるだけに、目的を持って何かをする危険がある。」
シミュレータの点検をしながら話すツユは、難しい顔をしていた。
「特に警戒すべきは、破の化物だ。ブレイアという名の、破壊の化物。とにかく戦闘力が高くて、積極的に人を襲うらしい。一体で町を壊滅させたこともある。」
「だから、当面はブレイアを倒すことを目標にしたい。そう、この話をしようと思って忘れてた。作戦を練っておきたいんだ。」
「それは構わないんですが、その前に…」
一方的に話すツユを、手を挙げて遮る。これは伝えておかないといけない。
「私、破鏡不照と名乗る化物の1人に、会ったことがあります。ミラリオと名乗る、鏡の化物。戦ったけど、特に問題ありませんでした。そんなに強くなかったです。ブレイアがどの程度かは知りませんが….」
今度は、ツユが遮る。
「それってさ、トドメ刺した?」
刺してない。
「いいえ、おそらく無害化?をした後に命乞いで時間を稼がれて、そのまま逃げられました。」
ツユの顔が、みるみると渋い顔に変わっていく。
「あー…目的が変わった。ブレイアに加えて、ミラリオも最警戒だ。」
首を傾げる私に対して、ツユは言葉を続ける。
「トドメを刺せなかったのは仕方ないんだ。ブレイアに関しても、人を襲わない状態にできるなら無理に殺す必要は無い。」
「ただ、一度無害化から復活した化物は強力になるんだ。戦うことに慣れるだけでも十分厄介なのに、さらに面倒なことになる。ミラリオって奴、今は相当強力な化物になってるはずだよ。」
そんなことは知らなかった。もっと早めに言ってくれればよかったのに。いや、知っていても襲われていたのだから、反撃するしか無かっただろう。ただ、あの場でミラリオが言っていたことも思い出す。
「『人を襲わない』と、ミラリオは約束してくれました。嘘ではなかったと思います。破壊の化物はともかく、ミラリオがそれを守る限りは、それほど危険ってわけでも——」
すかさず、ツユが口を挟む。応答を用意してたかのように。
「いや、百歩譲ってミラリオが一切人を襲わなかったとしても、ブレイアを倒すときには支障になるんだ。」
困ったような顔で、ツユは言葉を付け加える。
「奴ら、すごく仲が良いからね。」
Rainpop 霧灯ゾク(盗賊) @TouzokuXYZ
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