第14話 シミュレータ
シミュレータが起動すると、ツユの右手についた武器が光り出した。化物や、私の武器が放つ光と同じ光り方だ。ただ、色が少し違う気がした。
自分の手元を見る。私の武器が放つ光も、いつもとは少し異なる色だった。
「この状態だと、お互いの光は人体に無害だ。ただ、武器であるミツドモエの方は普段と同じように光を放つし、本来の光を受けた時と同じ挙動をしてくれる。」
そう言いながら、ツユは少し溜めて、2発ほど私を撃った。バシッ、バシッと当たる光に呼応して、武器が点滅する。
「今のが、生身の人間を消し去れるくらいの量だね。ちょっと撃ち返してみて。」
そう言われて、構えてみるが、撃とうと動かした腕が空振りする。手元を見ると、いつのまにかカードが消えていた。ツユはおだやかに笑って、言葉を続けた。
「その状態はミツドモエにおける負けを意味する。武器の方が先にやられて、一時的に戦えなくなっている状態。これを僕は”無害化”と呼んでいる。
光は、対象の本体を消すのに優先して、攻撃性を排除する性質があるんだ。だから、攻撃手段を備えておけば、それを身代わりにして攻撃を防げる。
化物も、これだけ撃たれれば無害化されて、一定時間反撃できなくなる。そして、その間に一度撃てば化物を消し去ることができる。」
「ただ、無害化はあくまで一時的なもので…」
ちょんちょんと指を向けられたので、手元を見ると、再びカードが並んでいる。武器が元通りになったのだ。
「時間が経てば治るから、トドメを刺すなら急いでね。」
「じゃ、そのまま撃ち合ってみようか。練習も兼ねてさ。」
そう言い終わる頃には、ツユの体は光り始めていた。一回分の行動の先を越されているのだ。慌てて溜め直している間に、一撃分をモロに食らう。
「ほら、構えて。今までだって、よーいどんだけで戦ってきた訳じゃないだろ?」
横暴だ、一方的に仕掛けたクセに。無性に腹が立って何発か撃ってみるが、すべてタイミングよく防がれる。それとは対照的に、ツユの弾は必要最小限。私がちょうど溜め直している隙を狙って的確に命中し、私の武器は動かなくなった。
「これで決着。僕はあと1発分の溜めを残して無傷だ。一手早かったことを差し引いても———」
突然、ツユの体に、1発ぶち当たる。当たった光は、いつもと同じ色。ツユはキョトンとしていた。周りを見渡しても、ここにいるのは私とツユだけ。私の武器は動かないままだった。
それでも、見間違いが無ければ、弾は私の手元から放たれていた。
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