第13話 武器

「この武器は…そうだね、どこから説明したらいいのかな。」


 ツユの目線が宙を泳ぐ。赤いガラス玉がグリグリと動くようなその様子は、見ていて飽きないなと思う。


「まず、今わかっている化物の性質から話そうか。」


 そういうと、ツユは引き出しからいくつかの資料を手に取って、渡してきた。


「奴らが何者なのかは、取り敢えずわからない。棘皮動物みたいなのも哺乳類みたいなのも居る。ちなみに生殖機能は無いらしい。」


 ツユはいつも、身ぶり手振りを交えながら説明してくれる。生殖機能は〜のところまでジェスチャーをつけようとしていたが、流石に気が引けたのか、途中で手を止めて話が終わると咳払いをした。


「まあ、僕は生物学に明るく無いからその辺は差し置くとして、僕たちが考えるべきはその攻撃性だ。」


「奴らの攻撃手段は動物とは異なっている。というより、僕も初めて見るものだった。

 奴らは身体から光を出す。この光は、液体のようにも見えて波のような性質も持っている。この光が、化物に切り裂かれた場合はその部分から、化物が光の弾を放ってきた時はそれがあたった箇所から、対象の生命体に流れ込む。

 それで、この光が一定期間内に、生き物の体に蓄積すると…」


 ツユは手を広げ、「ばぁん」とつぶやく。


「死んじゃう。というより、消えちゃうんだよね。意味わかんないでしょ?」


「でも、私は生きてますよ。ここに来るまでに、たくさん喰らったのに。その光の弾みたいなやつ。」


「そう!!」


 ツユの声が一段階明るくなる。何かスイッチを押してしまったらしい。


「そこなんだよ!我々が作った武器、『ミツドモエ』の真骨頂は。」


「ミツドモエ…?」


「そう、ミツドモエ。まあ、武器の名前の由来は後で話すとして…

 化物の検体を取り、ある機構に組み込むことで、化物が扱う光と同じものを、人の手で扱えるようにした。その技術の結晶がこの武器、ミツドモエ。トライアンドエラーの産物だから、僕も細かい原理はわかってない。」


「ただ、大まかな原理はわかっている。化物が光を放つときには、必ず、化物の身体の中に光を先に貯めておく必要があると判明しているんだ。この前提に立ち、一定時間内に区切って化物の行動を判別すると、およそ3種類に分類できる。攻撃と、防御と、チャージの3種類だ。

 この3種類を、ミツドモエの使用者は打ち分けることができる。もちろんミツドモエの側から攻撃するときも、チャージをしないといけない。でも、相手が防御としている間にチャージをし、攻撃に合わせて防御をし、チャージの隙に攻撃をするなら、理論上一方的に攻撃することができる。」


「要するに、行動パターンが判明している化物を相手するなら…」


「そう!隙をつき続けられればほとんど無敵!ほとんどだけど。


 絶対勝てるってわけでもないんだ。例えば防御では、チャージ2回分の攻撃までしか防げない。相手が何回もチャージして重い一撃を狙っているなら、その間に倒し切るか、特殊な技を使わないといけない。」


「特殊な技っていうのは…」


「色々あるね。威力が低い代わりに防御を貫通できる攻撃とか、相手の攻撃の威力を固定する技とか

 ….いや、とにかく、実践しながら話した方がいいかな」


 そういうと、ツユはゴソゴソと準備を始めた。


「シミュレータがあるんだ。これを使って説明しよう。」


「シミュレータ…?」


「そう!安心安全。思う存分機能を試せる。そしてピッタリ2人分。」


 ツユはクルッと私の方に向き直り、シミュレータと思しき装置に手をかけた。


「だから、今から撃ち合おうか。思う存分ね。」

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