第6話 腕が震える
「ロセアちゃん!来てくれたんだ。」
山奥の少し寂れた小屋の扉をノックすると、数秒も経たずにツユが元気よく飛び出した。
「ね、聞いて!その武器の新しい機能が出来そうなんだ。カードをね...」
武器の説明か。私にまた戦えって言うのか?もう散々戦ったのに。
「結構です。おかげさまで、私1人で戦えます。」
キッパリと言うと、ツユは少し残念そうな顔をした。
「そっか。あー、装置壊して欲しいって話なんだけどさ。うん、壊すって言い方は良く無かった。とにかく一時的に機能を停止して欲しいんだ。」
祠が一時的に機能しなくなったら、そんなのは壊れているのと同じだ。
「多少こっち世界に弊害は出るかもだけど、僕が他の世界を行き来して色々物資を持ってくれば...」
「ツユちゃん。」
本題を切り出す。こういうのは、時間が経つほど言いづらくなる。
「私、もう1人で戦えるんです。この意味がわかりますか?2つです。2つ大事な意味があるんです。」
ずっと言いたかった不満をついに吐き出す。鼓動が少し早くなるのを感じた。
「まず一つ、あなたが私を置き去りにしたせいで、私は1人で戦えるようになった。それだけ化物に襲われて生き残ったという事です。」
「そしてもう一つ、私1人で化物を倒せる以上、私にそんな仕打ちをしたあなたに、これ以上協力する必要は無いということです。」
一度話し出すと、堰が切れたように言葉が止まらなくなる。
「雨を止める装置...私たちはこれを祠と呼んでいます。ツユちゃんは、私が祠を知っている数少ない人間であると推測しましたね。」
「じゃあ、なんでそれ以上は考えなかったんですか?私が雨を降らせることを許せるわけが無いんですよ。だって私は祠を管理しているんだから。」
「今こうやってツユちゃんに住処を提供しているような研究者とは立場が違うんです。あなたの事も一切信用してない。わかりますか?」
呼吸を整える。ツユは何も言い返さなかった。何も言わないなら、私もこのまま本題を伝えるだけだ。
「ところで、ツユちゃんが与えてくれたこの武器、対等に戦うための道具って言ってましたよね。」
籠手を構える。カードを並べて、いつでも打てる体制に向き直る。もう慣れた動作だが、化物以外に向けるのは初めてで腕が震える。そして、声すら震わせながら私はこう続けた。
「つまり、私がこの武器を起動すれば、ツユちゃんを倒せるかも知れない。そういうことです。」
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