情報の提示の手順はさすが熟練のミステリー作家というべきでしょうか、安心と信頼の引きが最後まで続きます!
加えて今作は、ミステリーの王道を散りばめられた道をキャラに歩かせるのではなく、キャラの距離感と魅力を、ミステリーという推進力を使って強く描いているのが印象的でした。
前情報をみるとあくまで動機が主だと思ったのですが、六章の情報を踏まえてからから過去の各キャラの登場シーンを見てみると、フーダニットもよく練られてる事が分かって楽しいです! マジで動機が全員あるように錯覚します!
またジャンピング・ジャック・ガールのように、推理をしながら追従する読者に対するミスリードや仕掛けも多く、ゲームミステリーとして遊んでも最後まで楽しめました!
大詰めともいえる九章以降の展開も、伏線回収だけに留まらない演出や男の子が大好きなカタルシスも集約されていて最高でした!
秋田川さん最高!
高校に入り野球を辞めた平凡な高校生の深山樹はある日、中学の同級生である沢本遥と再会する。彼女はサボテンの種を撒くことでこの町に復讐をすると話していて――。
衝撃的な青春ミステリとして、カクヨムというWEBサイトを超えて、より多くのミステリ好きに読まれるべき作品だと強く思います。
連続殺人鬼ハンマーキラーの正体。樹が野球を辞めた理由。そして、遥の言う復讐とは……。
作品内では様々な謎が展開されますが、構成がものすごく緻密ですし、樹と遥の掛け合いが楽しかったり、他のキャラクターも魅力的だったりで、読みやすさ、読み心地の良さは保証します。
ミステリである以前に、青春ものとして非常に面白かったです。
樹と遥を中心として話が進んでいくのですが、とにかくこの2人が素敵なんです。
終盤の樹、めちゃくちゃ格好良いです……マジで。妹とのやり取りもかわいくて好き。
遥はタイトルにもあるサボテンみたいな女の子で、外側はトゲトゲしているのに、本当はすごくいい子であることが読み進めるとわかってきて、どんどん好きになってしまうこと間違いなしです。
そんな2人の組み合わせ、関係性が尊いんですよね。最高ですありがとうございます(合掌)
……と、青春要素を語ってしまいましたが、本作はしっかりミステリミステリしてます。
次々に回収されていく伏線と、予想を裏切る真相に、読者は何度も驚かされます。
この辺りは、詳しく書くことはできません。
なぜなら優れたミステリにおいて、作者と、すでに読んだ読者とは共犯関係にあるからです。
このレビューを見ているあなたも、この作品を読んで、私たちと共犯関係になりませんか?