死灰

いろは

灰降る世界

 空からヒラヒラと落ちていくのは大小様々な灰色。手で触れると崩れ砂のようになっていく。細かくさらさらと地面に降り積もる。

 大きなシャベルで集めると灰を灰袋に入れる。すくってもすくっても灰はなくならい。

 人は様々なマスクをしフードつきのコートを着て、灰降る街を歩いている。時々会話をしている人はいるが足早に移動している。

 コップの絵がついている建物のドアを開けて入り、フードを外しコートについた灰を払い落とした。寝ていた髪をかきあげマスクを外すと、ズボンのベルトにつけると前の扉を開けた。

 外の静けさとは違い賑やかで、笑顔食事をしている。

 

 「こっちだフォル」

 「ああ、待たせたなトン」

 

 琥珀色の液体の入ったコップにを軽くふるが、フォルは首をふった。


 「旨いのに」

 「ここのおすすめはトナイトだが」

 「それもおいしいがこの琥珀もうまいんだよ」


 手をあげてトナイトを頼み、トンの方に向くとトンは1枚の紙をテーブルに置いた。

 驚いた顔をしつつも紙を受けとる。


  8番の村にて燃え殻3体確認。

  被害は家屋5棟と村人全員が死亡。

  討伐に向かった2名討伐失敗により死亡。

  燃え殻3体は移動中。


 「ランクは」

 「2だが火を上手く使うそうだ。2.5だな」


 フォルの目の前に薄い青の液体トナイトが置かれた。少し飲むとすーとし爽やかな匂いが口いっぱいに広がる。好きな人は好きな味だなと考えつつもう一口飲む。


 「どうにかなるか」

 「今から行くか?」

 「ああ、行こう」


 二人は酒を飲み干すと代金を置いて店を出た。


 先程より多く灰が降り足跡をすぐに消していく。大小様々で綺麗に見える。

 「うわあ」と声をあげ転けたトンは、灰に埋もれた何かにつまずいたのだ。文句をいいながら立ち歩き出す。

 灰を踏む足音が微かに聞こえるなか、二人分以外の音が聞こえ足を止めた。背中につけてある武器を外し、伸縮性のある棒を伸ばし構えた。トンはコート裏につけていた棒を2本出すと、ボタンを押しカタカタと音をたてて細身の剣に変わった。


 「1体1体探す手間が省けた」

 「燃え殻が一緒に行動してたのか」


 さらさらと3方向から音が聞こえていたが、踏み込む音がし2人の前には灰色の人の形をし顔には丸いくぼみがある。

 フォルは1体に向かって棒をふり体に当てようとするが、体に穴を開けて棒を避ける。


こいつ少し知性があるのか。...面倒な。


 かわす時を狙い自分に近いところを当てようとするが折り曲げて避けてしまう。顔の3つのくぼみの口だと思われる丸が大きくなり、くぼみから火が見えフォルは慌てて避けるが間に合わずコートが少し溶けた。

 地面にたまっている灰で滑ったように見せると、燃え殻は近づき口から火を出そうとした。フォルは火をかわす為に灰を滑り股下をくぐり、右手の袖を掴み燃え殻の背中に向けて黄色い液体をかけた。

 液体がかかった場所から徐々に固まっていく背中に棒を突き刺し、手元のボタンを押すと棒はカタカタと音を立て燃え殻全体覆い少しずつ小さい立方体になり灰の上に落ちた。


 「終わったか~」


 声をかけてきたトンに頷き、落ちた立方体を拾った。立方体の中では人の形をした燃え殻が動いていた。

 ベルトにつけていた赤い袋を外し、立方体を入れ口を縛りベルトにつけながらトンの方に歩く。



ある灰降る世界の話

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

死灰 いろは @sikisai12

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ