紙づくりと活版印刷で財を築いた目利きの商人が隠居してから移動貸本屋を始める――それだけでも本が好きな人間にはわくわくする設定である。
ご隠居はただのがめつい守銭奴ではなく、どうすればもっと本が売れるか(儲かるか)を考えつつ、貧しい人々に教育を受ける機会を与え、村の人々に雇用だけでなく知識と本を読む喜びをもたらし、彼等の生活を向上させている人物で、図書館なる商売敵(?)の出現にも非常に協力的だ。
人格者なので、当然御者を務める下働きの小僧にも慕われている。
ご隠居と小僧が雨宿りの途中で、大きなお屋敷を訪れることになる。大きなお屋敷には、当然の如く大きな書斎があり、天井まで届く書棚には、ぎっちぎちに本がつまっていて……
いやもう、胸躍るでしょう。