リスト・カッターゲーム

道正

第1話 出会い

 今日から大学生活が始まる。一日目の長いオリエンテーションとサークル見学を終え、唯一の高校が同じ友人の夏目隆をサークル勧誘に放置し、やっとの思いで帰路につくことのできた夕刻17時。

 「いいじゃんかよぉ~。一戦だけでいいからさぁ~」

 大学の校門付近を歩いているとそんな声が聞こえた。大学にもなれば性に脳が侵食されてる者がいるとは分かっていたが、こうしてあからさまに勧誘されている姿を見ると、どうも気が滅入る。しかし、「普通」をモットーに生きてきた俺は無駄なことに巻き込まれないように無視をする、、、はずだった。。。

声のする方を見ると、5人の髪を染めたこれぞ悪役と呼ばれそうな体格の良い男たちが歩道をふさぎ、とある一人の女の子を囲んでいた。親の特殊な職業が故この5人を無力化することは可能な実力を持っていたが、そんな見ず知らずの少女を助けることで自分の穏やかな日常が脅かされてはならない。こうしてスルーをする…つもりだったのだが。。まぁ一言でいえば一目惚れだ。なんの特徴もない無地のTシャツにロングパンツという地味でも派手でもない服装とは裏腹に美しすぎると直感で感じてしまった黒髪。顔への執着心。この自我には逆らえず。

「男が5人。寄ってたかって恥ずかしくねぇのか?」

 こう言ってしまったのである。顔を見ればわかる。いやぁ怒ってる怒ってる。カンカンですよ。今にも殴ってきそう…ではなく、殴りかかってきた。人間は、短気なものほど口よりも先に手が出るのである。まぁしかし、一般人程度なら俺もそこそこ鍛えられている身、1人2人と順に避け、少女を連れて逃走を図ろうと彼女の手をつかみ一歩を踏み出したその瞬間、視界が一気に揺らいだ。


「ねぇ!早く逃げるか態勢を整えないとあなた死ぬわよ。奴ら全員Cランク以上の強さの持ち主だから!」

 場所に変化はない。先ほどの強いめまいのような現象とは打って変わり体調も良好。しかし、何かおかしい。だって、さっきの5人が様々な拳銃を持って笑顔を向けているのは何かと質問したい。

「こ、これはどういった状況…」

「はぁ?何言ってんの『リスト・カッターゲーム』が始まったのよ!あ、あんたまさか…」

 状況が分からず混乱していると、男が拳銃をこちらに向けた。撃たれる⁉そう思った矢先、なぜか彼女に抱きしめられ…ることもなく荷物のように抱きかかえられ、彼女はどこからか取り出したワイヤーのような物を使い離れたビルの屋上まで俺を連れて行った。

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リスト・カッターゲーム 道正 @mitimasasanndesu

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