第36話 J.C.ポゼッション!(2)

 そして俺は、颯爽と目の前に立ちふさがる魔王を指さす。

「さぁいけ! 【チョコットクルクルクルセイダーズ】! 今のお前たちは、魔獣たちの力で強化されている! 思う存分、戦うがよい!」

 カッコよく四人の女の子に命令した。

 もう、頭の中は、戦隊ヒーローの隊長さん!

 崖の上から巨大な敵を指し示し命令するのだ。

 まぁ、ここは崖の上ではなく、ただの平地だけどね……


 俺の言葉に反応するかのように4人の女の子は身構えた。

 そして走り出す!


 俺の方向へ……

 なんで……


 四人の目は怒りの炎に包まれていた。

 もしかしたら、これは、魔王の洗脳攻撃なのか?

 魔王の触手攻撃を撃退したまではよかったが、それ以降の魔王の攻撃が襲ってこない。

 じーっとこちらを睨みつけているだけなのだ。

 やはり、物理攻撃ではなくて、精神攻撃を仕掛けてきたのか!

 やるな魔王【ドゥームズデイエヴァ 】!


「お前ごときが、ワラワに命令するとは片腹痛いのじゃ!」

 あれ、もしかして魔王の洗脳攻撃ではなかったの?


 アリエーヌのこぶしが乱れ飛ぶ。

 無数のこぶが残影を残しヒットする。

 ふごぉぉぉぉぉ!

 俺の体に次々と拳の跡が刻まれていった。

 俺は毒にかかった!

 俺はマヒかかった!

 俺の力が2減少した!

 俺のバナナがマイナス10度傾いた!

 その鉄拳が俺の体を穿つごとに、俺の体にデバフが埋め込まれていく。

 あまりの威力に拳を放ったアリエーヌが、驚ききょとんとしていた。

「ワラワって、こんなに強かったんじゃな……イエイ!」


 イエイじゃねぇよ……

 今のお前は朱雀の力でスピードが上がっとるんだぞ……

 しかも、他三匹の魔獣たちの影響もプラスアルファで受けてるんだ!

 その、拳! いつものお前だったら、ちょっとコツンと打ち付けただけで痛い痛いと大騒ぎだろうが!

 それが、玄武の力で鉄壁の耐久力のおかげで、まるで無傷。

 白虎の力で、無双の攻撃力。

 青龍の力で、追加デバフを叩き込む!

 そりゃ、これだけの力を一気にまとえば、キサラ王国の騎士隊長だってぶっ飛ばせるわい!


 ……あ……ばれた……


 俺が、騎士養成学校の練習試合で騎士隊長をぶっ飛ばしたからくり……

 まぁ俺の場合、マジュインジャーの4匹の力を俺一人が受けていたから、もっとすごかったんだけどね! エッヘン!

 って、石投げないで! 石!

 この詐欺野郎! 卑怯者! 藤木〇ん! そんなふうに言わないで……

 だって、いいじゃん……

 勝てば官軍負ければ賊軍!

 要は勝てば何でもいいんじゃい! 


 だが、当然、俺を狙う攻撃はアリエーヌ一人だけであるはずがなかった。

「なんで、俺が、裸の変態に命令されんといかんだ!」

 グラマディが聖剣パイズリア―を振り上げる。

「そんなに俺を支配したいのであれば、お前の強さを見せて見ろ!」

 渾身の力を込めたパイズリア―が一直線に振り下ろされた。

 まぁ聖剣を使いこなせないグラマディ。

 魔獣の力を得たとしても、剣聖のステータスなんて得られない。

 要は、聖剣を使いこなすことなんて不可能ちゅーことや!

 だが、バカの一つ覚え、力任せのその一撃。

 大したことないと思うだろ……

 確かに、今までの奴の攻撃であれば、箸で受け止めることができる自信がある。

 だが、今はダメだ! ダメなのだ!

 グラマディが身にまとうコスチュームは白虎のそれ。

 今や奴は白虎の力で、パワーがアホのように跳ね上がっているのだ。

 そもそも、脳筋の筋力馬鹿だ。

 それに、白虎の攻撃力が加算されているのである。

 いや、加算というより、乗算といったほうがいいかもしれない。

 もしかしたら、ただの金属のこん棒でも、世界最硬度を誇るダイヤモンドゴーレムぐらい、訳もなく叩き割るかもしれない。

 しかも、そんな奴が手に持っている武器、それが聖剣パイズリア―なのだ。

 分かるよな……もう、分かるよな……

 グラマディがいくら聖剣パイズリア―を使いこなていなくとも、その一撃は大地を割る。

 これは死ぬ! この一撃を食らったら確実に死ぬ!

 マジでヤバイって!


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