第7話 激闘! 激闘? 魔王戦(2)

 キャンディは、必死にグラスの介抱をしていた。

 炎撃魔法を打ち尽くしたグラスは、気を失い倒れたままだったのだ。

 まだ、魔王と一戦も交えていないというのにである。

 だが、こんなところで倒れていては、魔王の触手の餌食になってしまう。

 キャンディは、回復魔法をグラスにかける。

 魔力回復の呪文である。

 これで、少し魔力が回復すれば、きっと立ち上がることも可能なはず!

「グラス! 起きんかい! 早く起きいというとるやないか!」

 キャンデイは、グラスへと掲げる両の手に力を込めた。

 グラスの体が緑の光に包まれた。

「反応しよった! もう少しや、がんばりや! グラス!」

 バタバタと揺れるグラスの体。

 揺れるというか、もがいているというか……なんだか苦しそう。

 ――あともう少しなのに……ウチの魔力が足りへんのか……

 キャンディは、背中に背負ったバックを降ろすと、その中に手を突っ込んだ。

「魔力回復薬ぅぅ! こんな時のために作っておいたや! キャンディちゃん天才ぃ!」

 その手には黒い物体が握られていた。

 消し炭よりも黒いモノ。

 その存在は、まるで闇から生まれでたかのように、まがまがしい。

 まさにダークマターと呼ぶのがふさわしい物体だった。

 キャンディは、グラスの口を開けると、そのダークマターを一気に押し込んだ。

 抵抗するグラスの手が地面に落ちた。

 一切動かないグラス。

「あっそう! グラスはん! そういう態度とるやね! わかったわ! なら、うちにも考えあるやさかいに!」

 キャンディは、グラスのローブを無理やりと引きはがす。

 そして、何を考えたのか、服を全部脱がしてしまった。

 そこには、すっぽんぽんのグラスが一つ。

「はよ起きんと! 風邪ひくでぇ!」

 しかし、グラスは起きない。

「もしかして、グラスはん……ホンマに気絶してる? まさかね?」

 愛想笑いをするキャンディ。


 そんなキャンディの頭上から、何かドロッとしたものが降ってきた。

 頬を垂れていくその物体。

 キャンディは、それとなく頬を触る。

 手には透明なぬるぬるとしたものがついていた。

 なんやこれ?

 ローション?

 そんなわけあるかい!

 笑いながら上空を見上げるキャンディ

 その目の先には、魔王の触手が三本。

 口のように先端が裂け、その先から透明な液体が流れ出していた。

 まるで、それはよだれのようである。


 ひっぃぃ!

 キャンディの顔が引きつった。

 とっさに逃げようとするキャンディ。

 だが、遅かった。

 キャンディの体が触手に絡まる。

 体中にまとわりついた透明な液体で、触手がぬるぬると滑る。

「やめんかいぃぃぃぃ!」

 キャンディは、手足をばたつかせる。

 だが、触手は、うねうねと行ったり来たり。

「こんなことで負けたらイカン! せや! 回復や!」

 回復魔法を乱発するキャンディ。

 それに興奮したのか触手が暴れる。 

 ついに、魔力がつきた彼女はガクリとうなだれた。

「き……気もちぃぃ……」

 キャンディが大人の階段を半歩上った瞬間だった。


 その下では、グラスが何をされるわけでもなく放置されていた。

 僕は……このままだろうか……

 体がしびれて動けないグラスは思った。

 これって、まさかの放置プレー?

「4014517180……」

 体が動かないグラスは、仕方なく円周率をつぶやき始めた。


 そんな四人のエロい状況、違ったヤバい状況を見ながら、俺は叫んだ。

「マジュインジャーゴー!」

 その掛け声とともに、俺の影から5匹の魔獣が飛び出した。

 レッドのヒヨコ!

 ホワイトの子猫!

 グリーンのミドリガメ

 ブルーのアオダイショウ

 紅一点のピンクスライム!

 そして、隊長はこの俺!


 我ら! 5匹と1人!

 魔獣戦隊マジュインジャー!

 ドーーーーーん!

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