第8話 マジュインジャー誕生(1)

 マジュインジャー!

 そう、その出会いはあの時からだった。

 

 森から出ることを禁止されていた俺は、森の中が遊び場だった。

 だが、奥深き森の中、俺には友達などなく孤独に一人で遊んでいた。

 一人鬼ごっこ、一人かくれんぼ。

 正直、すぐに飽きた。  


 だがそんな時、俺は、ひょんなことから自分の能力に気が付いた。

 森の中にある鶏小屋の中で巣に座る雌鶏。

 そんなニワトリを観察している時の事だった。

 卵から生まれたヒヨコに手をかざす。

「僕についてきて!」

 本来、刷り込みで母鳥を親と思っているヒヨコたちだ。

 簡単に俺にはついてこない。

 そんなことは分かっている。

 案の定、ヒヨコたちは母鳥のもとを離れない。

 だが、一匹のヒヨコが、母鳥が座る巣から飛び出して、俺の後をついてきたのだ。

 ヒヨコをテイムした瞬間だった。

 なに⁉ ヒヨコはモンスターじゃないって?

 この世界では、動物もモンスターも同じなんだよ!

 だって、その昔、魔王の瘴気によって動物が変異したのが魔獣なんだから。

 これって、面白い!

 ってことで、ヒヨコを引き連れた俺は、次に、池で泳いでいたミドリガメをテイムした。

 もうね、テイムできることが楽しくて楽しくて仕方なかったの。

 こたつで寝ていた白猫の赤ちゃんをテイム!

 次に、天井から落ちてきたアオダイショウをテイム!

 最後に、庭に隠れていた小さなピンクスライムをテイム!

 これで5匹!

 打ち止めだった……

 どうやら、現在、5歳のおれがテイムできるのは5匹のみ。

 これ以上はテイムできないみたいだ。

 ヒヨコとミドリガメと子猫とアオダイショウとピンクスライム。

 これが俺の使役する魔獣たちである。

 これで、どうやって戦えというんですか……


 まぁ、このころの俺はバトルなんてする気はなかった。

 この5匹と楽しく生活できればそれでよかったのだ。

 森の中で、この5匹を連れて遊びまわった。

 何せ初めてできた友達だ。

 かくれんぼや、虫取り、鬼ごっこ。

 泥だらけで帰れば、一緒にふろに入り水を掛け合った。

 疲れて布団に入れば、1つになって丸くなる。

 俺の体の周りに5匹がピタリとくっついて寝るのであった。


 そんな生活が2年ほど過ぎたころであろうか。

 いつも通り森の中で遊ぶ俺たち。

 そんな俺たちの前の茂みが揺れた。

 ガサガサ

 俺は、大きな虫がいるのかなとワクワクしながら近寄った。

 音がどんどんと大きくなる。

 これはきっと大物だぞ。

 俺は笑いながら茂みをめくった。

 そこには虫ではなく、毛が生えた足があった。

 毛虫?

 いや違った、それは犬の前足だった。

 犬?

 俺の足ぐらいはありそうな前足が二本。

 俺は、ゆっくりとその足に沿って上空を見上げていく。


 がっちりと筋肉質の大きな胸。

 立ち上がった俺の視線は、すでにもう、斜め上を見ていた。

 まだ、犬の顔が見えない。

 大きな犬だな……

 もしかして、オオカミかしら?


 俺の顔にその犬の黒い大きな影がのしかかってきた。

 天を見上げる先には、犬の顔が3っつ。

 その口からは、先ほど吐いていたのだろうか、ゲロと共に何やら分からないダークマターが垂れていた。

 ポトリとそのダークマターなるものが、見上げる俺の頬に落ちてきた。

 そのダークマターなるものを手で拭う。

 何やらぷーんと鼻につく。

 なにこれ、なんか薬臭い……

 もしかして、回復薬の出来損ない?

 イヤイヤ! そんなわけないよね……どう考えても、殺鼠剤……いや、殺ケロべロス剤!


 …………………………

 ……………………

 ………………

 …………

 ……

 ⁉


 なぬっ!

 ケロベルス!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る