第6話 激闘! 激闘? 魔王戦(1)

「よけろ! アリエーヌ!」

 俺はグラスの炎撃魔法によってできたクレーターの中で叫んだ。


 こちらを見ながら後ろ向きで走るアリエーヌ。

 その背後から魔王ドゥームズデイエヴァの触手が伸びる。


 えっ!


 とっさにアリエーヌが振り返る。

 だが遅い。

 鋭く伸びる魔王の触手がアリエーヌを貫く。

 だが、幸いなことに、振り向く瞬間アリエーヌは、足を滑らしていた。

 そのわずかなずれ。

 触手は、彼女の頬をかすっただけだった。


 だが、それで終わりではない。

 次々と伸びてくる触手。

 アリエーヌがミスリルのレイピアで応戦する。

「ワラワの騎士養成学校トップの剣技を見せてやるのじゃ!」

 伸び来る触手に、無数のレイピアの残像が打ち付けられた。

 だが、所詮は、姫様の忖度剣技。

 チョコッとついたぐらいでは、魔王の触手はちぎれてくれない。

 さすがに騎士養成学校の生徒のように簡単には倒れてくれないのだ。


 遂に、アリエーヌの足に触手が巻き付いた。

 そして、その触手は勝ち誇ったかのようにアリエーヌの体を逆さづりにした。

「きゃぁぁぁ! えっちぃなのじゃぁぁぁぁ!」

 アリエーヌは、逆さにめくれるミニスカートを必死に抑える。

 しかし、スカートは無慈悲にも垂れていく。

 その太ももの付け根に白いラインが姿を現す。

 そうか、そうか、アリエーヌ姫様は白色が好みか!

 だが、アリエーヌも最後の抵抗を見せる。

 乙女の純情、白き丘だけは決して人目にさらすまいと、懸命にスカートを押さえた。

 そんなアリエーヌに手を伸ばす俺。

「白だと……可愛い……」


 グラマディは、森の中で聖剣パイズリア―を振るっていた。

 立ち並ぶ幹の間から、触手が伸びる。

 四方八方から伸びてくる。

 まるで周りを触手に囲まれているかのようである。

「次はどこから!」

 グラマディは、聖剣をまっすぐに構えた。

 ガシン!

 彼女の背中を触手が打った。

 彼女の長い金色の髪が、その反動で舞い広がる。

「後ろか!」

 グラマディはとっさに振り向く!

 しかし、そこには何もない。

「クソっ!」

 ガシン! ガシン!

 そんな彼女をあざ笑うかのように、その背中を続けざまに触手が打ちつける。

 ついに、彼女の唯一の防具であるビキニアーマーのひもがぷつりと切れた。

 今まで抑圧に耐えていた彼女の大きなおもいがプルるんと揺れた。


「クソ! 俺の背後ばかり狙いやがって卑怯者が!」

 だが、グラマディは、にやりと笑う。

「俺の奥義を見せてやる」

 グラマディは聖剣を中段に構え、静かに目をとじた。

「ボインジェンヌ家奥義 得無の境地!」

 この技は心を無にすることにより、敵の気配を感じるというボインジェンヌ家に伝わる剣技である。

 その間合いに入ったものは、瞬時に寸断される。

 見えざる敵を、その気配ごと断ち切るという神技。

 その瞬間、木々の間から一斉に魔王の触手が伸びる。

 その数、十数本。

 ボインジェンヌの技を警戒したのか、寸分たがわぬ全体攻撃であった。

 だが、得無の境地の前では、数など大した問題ではない。

 その絶対領域踏み込めば、いかなるものでも瞬断される。

 まさに達人。

 そう、グラマディが達人であれば、無敵であったのかもしれない。

 だが、所詮、無能の筋肉バカである。

 見よう見まねで奥義を真似してもうまくいくはずはなかった。


 無数の触手が、グラマディを締め上げる。

 そして、無数の触手が彼女の肌をめった打ち。

「やめろぉぉ!」

 逆さづりにされたグラマディは叫んだ!

 そして、むち打ちの痛みのせいなのか、ついに痙攣を起こした彼女はガクリとうなだれた。

「き……気もちぃぃ……」

 グラマディがエムの境地に目覚めた瞬間だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る