真昼のデッサン

オダ 暁

真昼のデッサン

・・・・

ここはどこ?

・・・・

ここはここさ

ここって?

君と僕のいる所さ

あの木を見てごらん

お日様に微笑んでるよ

葉っぱがさざ波のように揺れているだろう

嬉しいんだよ、光と風をいっぱい浴びて


少女は少年を指さした

川の向こう岸に

ぽつんと立っている木を見ました

しなやかな贅肉のない幹の上半身は

つやつやとした青緑の葉で

おおわれています

日光はやわらかな縞模様をそれに描き

地上を薔薇色に染めています


ねえ、どうして木の足は一本なのかしら?

少年は、少女の問いに少し考えて

それから答えました

そこが彼らの場所だからさ

人は自分の足で自分の場所をさがすんだよ

わたしも?

そうさ君も、僕だって


二人は川岸にしゃがみました

足元には小さな石ころがたくさん

転がっています

それを拾って水面に落とすと

しぶきをたてて波紋をつくりながら

ゆっくりと川底へ沈んでいきました


あの石のほんとうの場所はどこなの?

土の上じゃないの?

・・彼らは為されるままに生きているのさ

居場所を自分で決めることを

許されてないんだ


少女は悲しげに

消えかかった水の輪を見つめました

せせらぎの透き通った音が

川といっしょに泳いでいきます


あなたは、だあれ?

少年は少女の真剣な瞳に

一瞬とまどいました

鳥たちが雲をついばみ

真っ青な空の運動場で遊んでいます

少年は笑顔を浮かべて言いました

僕は他の誰でもない・・

僕という、ひとりの人間さ


その頃川の底では思いがけない来客に

昼寝をじゃまされた魚たちが

寝ぼけまなこで

大きなあくびをしていました

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真昼のデッサン オダ 暁 @odaakatuki

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