小さな百合を咲かせましょう ~穂乃香と細流の場合~ 小学生編

沢鴨ゆうま

たかさごゆり

「わあ、綺麗なお花!」


 集団下校の日。

 分団で下校していた生徒たちは家の近い子から徐々に減っていく。

 最後に二人の少女が残った。

 道端の土手に咲いている花を見上げる少女が一人。

 合田あいだ穂乃香ほのか、小学三年生。


「そのお花の名前、知ってる?」


 もう一人の少女が問う。

 その声の主へ桃色のランドセルを背負った穂乃香は振り返る。


「知らない」


 水色のランドセルを背負った少女が横に並んだ。

 穂乃香と同じ通学団のもも細流せせらぎ、小学四年生。


「う~ん、これはタカサゴユリね」

「たかさごゆり?」

「そう。横から見ると紫色の線があるでしょ?」


 一番近くにある百合を横から見て、穂乃香は線を確認した。


「ももちゃん、よく知っているね!」


 細流は首を振る。


「よく知らないこともあるわ」


 穂乃香は不思議そうに首を傾げる。


「ももちゃんでも知らないことあるの?」


 細流は笑みを見せて答える。


「ほのちゃんのことよ」

「あたし?」


 穂乃香の両肩を軽く掴み、顔を近づける。


「これからもっと色々お話がしたいな」


 穂乃香の黄色い帽子から前髪が出ている。

 左右に分けておでこを出し、軽く唇で触れた。


「何?」

「仲良しの印よ。ほのちゃんもしてくれる?」

「いいよ!」


 細流は帽子を脱いでおでこを差し出す。


「これでいいの?」

「そうよ。これでお話をいっぱいできるようになるの」


 細流は帽子を被りなおして穂乃香と手を繋ぐ。


「これからは手を繋いで歩こうね」


 二人は手を繋いで家路に就く。

 水色と桃色のランドセルが揺れていた。

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