くじの世界

バブみ道日丿宮組

お題:安全な真実 制限時間:15分

くじの世界

 この街にはレッドフィールド、ブルーフィールド、イエローフィールドというエリアが存在してる。

 種類分けは信号機と同じで、赤がやばい、黄が安全?、青が安全という感じ。

 それは学校内でもわかるように線引きが床にされてる。

 まぁ……赤は暴力、陵辱、いじめなんでもありといった感じ。される側も赤、黄と指定されてる。

 それがわかってるからこそ、みんな青の席に座りたがる。けれども、くじ引きという神の一手によって安全は失われる。それは社会でも同じ仕組みがとられてる。決まった席という運命はしばらく変えることはできない。

 もちろん、赤でも安全な人は安全だ。そういう地位につけてるといえるだろう。力こそ全てと昔の人がよくいったものだ。

 私はどうか。

 あなたはどうか。

 あっちはどうか。

 こちらはどうか。

 誰しもが顔を見合わせる。

 どうか自分ではありませんように。くじ引きがいいものでありますように。

「存在が赤なやつはくじ引きじゃなくて自分から赤へ行けよ」

 くじ引きが始まる前に唐突に男子が口走る。

「なんだ。やるか? こっちは青でも関係なくやらせてもらうぜ」

 当然のように力のあるやつは挑発行為に及ぶ。

「ダメです。法律は運と決まっています。必ずくじ引きの結果に従うようにお願いします。青で犯罪行為は死刑と同じ行為にあたります」

 教師が間に入ると、すぐに静かになった。

 誰だって死ぬのは嫌だ。

 でも、赤にもなりたくない。誰かを赤に落とし込みたい。

 そんな悪に満ちた欲望に支配されてる。

 赤が犯罪行為を行うため、事故事件は必ず解決にいく。

 犠牲者も、犯罪者も赤。もしかしたら黄。

 ある種の平和がそこに出来てる。

 決まった犠牲という名の真実に。

「センセー、はやくひかせろよ。はやいところ、赤引いてバイク乗り回してぇんだわ」

「無免許運転は駄目ですよ」

 すると、力のあるやつ。

「青のときにとってまーす」

 手に運転免許証をちらつかせる。

 怪訝な顔をするのは、周りの生徒達だ。

 誰がつきあわされるのか、あるいは轢かれるのか。引っ張られるのか。

 想像するだけで鳥肌だ。

「それじゃあ配りますねぇ」

 一番前の席の生徒に5枚の紙が渡され、次々と後ろへと回されてく。

 そう……ここにも運が必要だ。

 前の方の席の生徒はくじを選ぶことができるが、後ろの席はできない。

 当たりかハズレかはどちらかでも同じかもしれないが、自由はない。

 かくして、私がひけるのはなんだろうか。赤く染まった制服がこれ以上滲むことはあるのだろうか。

 それはきっとくじによって決まるだろう。

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くじの世界 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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