第13話 出逢えた奇跡

その日の夜―――




雨はいつの間にかあがっていた。


夜空には


星空が広がり


キラキラと輝いている






「ヤッター!雨があがった!」



私は笹の葉を飾る。




「ダッサ!」



ビクッ


家の前の道路から声がし驚く。


私は視線を下に向ける。



「なぁ、17、18の高校3年生が七夕かよ!」




ドキッ



「ゆ、有っ!?」


「今年の願い事は何にしたわけ?去年の願い事は叶ったのか?」


「うるさいなっ!有には関係ないでしょう!?」


「でも、雨があがったとしても雲の上は大洪水でまだ川の増水引いてなくね?鳥、流されてしまって織姫と彦星逢えないんじゃね?」


「あのねー、有、あんたが、川に流されちゃえ!つーか、あんたが織姫様と彦星様の橋になってあげなよ!」


「残念だけど、俺、橋になれない。俺、織姫に用事があるし」


「じゃあ、その用事済ませ…えっ!?あんた、今、織姫って言った?」


「言ったけど?」


「…あんたの口から織姫って…それじゃ、さようなら!」


「待てよ!」


「何?私は忙しいの!」


「笹の葉飾ってる暇あんのに?」


「うるさいなっ!とっとと帰って織姫に用事済ませなよ。じゃあっ!」


「音葉っ!待てよっ!」


「何?第一、茶化しにでも来たんでしょう?だったら帰って!」


「本当…去年も同じような事、言ってたな…お前…」




考えたら確かに1年前も同じ様な事、言ってた。




そんな私の


今の心には


有が好きという想いに


なっている……




だけど


今の仲を壊したくなくて


告白する勇気なんてない




きっと有は


ただのクラスメイトで


喧嘩友達なだけで


恋愛感情なんて 


あるわけがない……




「あん時は、こうなるなんて思ってなかったけど…なぁ、音葉、俺の願い事叶えてくんね?」


「はあっ!?私が叶えられるわけないじゃん!」


「それがさ…そうでもないんだよなぁ〜…」


「えっ…?」


「どうやら彦星さんが織姫さんの想いに薄々気付いてるみたいで」


「そうなんだ。だったら彦星さんから織姫さんに告白したら?」


「そうだな…織姫さんに告白してみるかな?織姫さんは恥ずかしがり屋の照れ屋さんみたいだし。彦星さんから告白しなきゃ先には進めないかもなぁ〜」


「じゃあ、そういう事で!」


「待てよっ!」


「何?まだ話あるの?」


「あるから止めてんじゃん!織姫さん」


「えっ…?私!?私はあんたの織姫じゃあり…」


「黙って聞けよ!」



「……………」


「俺がお前の彦星なら…お前は俺の織姫なんだよ!」



ドキン



「肩を並べて、馬鹿しあって、喧嘩してるけど…去年の七夕に出逢えたのが奇跡だったんじゃないかって…」


「…有…」


「なぁ…織姫の気持ち聞かせてくんね?俺、織姫との時間がなくなってすっげぇ辛くて寂しいって思ってて…織姫は彦星と逢う前も逢った後も色々あったかもしれないけど…もし…間違ってなければ…織姫も彦星の事…」



「………………」



「なぁ、聞いてる?」




ガチャ


玄関のドアを開け目が合う私達。



「音葉?」


「あなたの織姫は彦星が好きみたいですよ。だけど…勇気なくて今の仲を壊したくないって…思っている…」



駆け寄り抱きしめられた。


ドキン



「…バーカ。仲が壊れるわけねぇだろ?そんな脆い関係じゃねぇだろ?俺達」



抱きしめた体を離す有。



「…それは…」



キスされた。



「お前が好きだ!」



ドキッ



「…有…私も…好…」




再びキスされた。



「これからも宜しくな!俺の織姫さん」

「有が言うと…おかしいよ…違和感あるんだけど」

「うるせーなっ!」



私は笑う。



「俺達…もっと早く出会っていたら、お互い傷付く事なかったのにな」


「…そうだね…二人は逢えたのかな?」



私は空を見上げる。



「大洪水だから無理!」


「有っ!結局、そうやって…」


「だけど…俺達の想いが1つになったから大きい虹の橋と、鵲(かささぎ)が二人を引き合わせてくれてるんじゃね?」



「……………」



「何だよ!」


「ううん…有の口から、そんな言葉出て来るなんて思わなかったから」


「お前のせいでメルヘン馬鹿になったかもな」


「何それ!」




有は、グイッと後頭部を押し、もう一度キスをし、一旦、唇を離すと、再びキスをし何度も何度も唇を交わしキスをする。



「このまま襲って良い?」

「えっ!?な、何言って…」




私は、一気に体が、かぁぁぁぁっ〜!と熱くなった。



「嘘だよ。でも、いざって時、お前、怖がりそうだな」


「えっ?」


「押し倒されたなら怖いんじゃねーの?」

「…それは…多分…そうなるかも…」

「まあ、そん時はゆっくりするから無理するな。二人で乗り越えような」

「…うん…つーか…それ前提?」


「でも、いずれそうなるだろう?俺、男だし。つーか…これ以上傷つくのは…俺も嫌だし…現段階ではお前以外の女はいらねーぞ!それに…これ以上お前を傷付けたくねーから」


「…有…」



再びキスをすると深いキスをされた。



かぁぁぁぁっ!

慣れないキスに戸惑う私は体が熱くなった。



「…ゆ、有…」

「何?」

「…なりふり構わずキス…しないでよ…」


「仕方ねーじゃん!好きな女、目の前にいるんだし。俺も色々あったけど、周り見えなくなるし。傷ついた分、沢山学んじゃって…頭と体が止まらなくなるから」


「あのねー…」



クスクス笑う有。



「まあ、つまり、そういう事なんで沢山愛情表現してあけるから覚悟しておけ!優月 音葉」





カサカサカサ…


心地よい風が吹き笹の葉が揺れ


パサッ


短冊も揺れる。



『八吹 有と両想いになりますように…』

『優月 音葉』



私達の幸せを願うように……





織姫様 彦星様


あなた達は


逢えましたか?



年に1回しか逢えない二人


雨が降って


天の川は大洪水で逢えないですか?



もしそうだとしたら


私の願い事を叶えてくれた変わりに


私が二人の願いを叶えます



私達の想いと


みんなの想いを


空に向かって




二人が必ず逢えてますように・・・




大きい虹の橋と鵲橋が


二人を引き合わせてくれてますように・・・



鵲さん二人をお願いします・・・



幸せでありますように・・・








〜 Fin 〜














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七夕の夜に・・・ ハル @haru4649

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