第12話 相合い傘〜近付く距離〜
それから数ヶ月が過ぎた、ある日の放課後、教室での事だった。
「うわぁ〜…雨だよ…」
「今日は、7月7日の七夕なのに織姫と彦星、逢えねーな。年に1回のデートだっつーのに可哀想に」
「あんたが言うなっつーの!」
「でも知ってるか?雲の上は晴れてるから逢えるらしいぜ?」
「逢えない、逢えない。馬鹿にしているあんたに言われてもねぇ〜…第一、晴れていても天の川が大洪水で濁流状態だから」
「えっ…?天の川が…大洪水の濁流状態って…その発想は俺にはなかったんだけど…。いや、でも、あれって鳥が橋になってくれて二人は逢えるんじゃねーの?もしくは虹の橋とか?」
「鳥は流されちゃうから。虹の橋は…地上も雨が止まない限り無理だよ…だから…今年は…逢えないんじゃないかな…?」
「お前が…まさかの反抗的でマイナス思考…とは…相当ショック受けて重症か?」
「…だって…本当に叶えてほしい願い事だったから…今年は…」
「………………」
「な〜んて」
「………………」
「去年は、天気良かったから今年は雨。自然だから仕方…」
ドキン
おデコにキスをされた。
「……………」
「雨、あがると良いな」
ドキン
優しく微笑む有。
「今からでっけぇテルテル坊主でも作るか?」
「…そ、そうだね…作ったら雨止むかな?」
音葉は、恥ずかしそうに顔を反らし窓の外から空を眺める。
私達は色々話をしながら雨が止むのを待つ事にした。
しばらくしても雨が止む様子がない。
「帰ろうか…」
ポツリと私は言った。
「えっ!?雨なのに?」
「うん。置き傘位あるよ」
私達は帰る事にし下駄箱に向かう。
「ほら!あったよ!有の分もあるよ」
「俺はいらない」
「えっ?でも濡れちゃう…」
グイッと肩を抱き寄せる。
ドキッ
「同じ帰り道なのに別々じゃなくても相合い傘すれば良いじゃん!」
「えっ!?相合い傘っ!?」
私は押し離すようにする。
「いやいや、あれはカップルとか好きな人と…」
「別に恋人同士じゃなくても良くね?そういう限定に縛られなくても。俺は別に構わないけど。まあ…お前が嫌なら辞めるけど」
「私は…」
「どうする?」
別に構わないけど…
でも…
有と相合い傘なんて緊張してしまう
「ブッブー。はいっ!時間切れー!」
「えっ!?じ、時間切れ!?」
バッ
私が持っている傘を奪うようにする。
「あっ!」
バンッ
傘を差すと私の肩を再び抱き寄せる。
「帰ろうぜ!音葉。つーか、考えるだけ時間の無駄だから」
私達は相合い傘をして帰る。
相合い傘
好きな人の名前を書いてみる
だけど
今は私の隣にいる好きな人
肩を並べて一緒の傘に入って……
7月7日
七夕の特別な日
今日だけじゃなく
ずっと
あなたの隣で笑って
肩を並べて
歩きたい………
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