最終話 悪霊よ永遠に
披露宴は続く。
余興が始まった。
まずは、一つ目小僧。
「さあ、なにもない所から……」
一つ目小僧は火の玉を出した。
「火の玉が……皆、こっち見てよ!」
次に唐傘。
唐傘はタップダンスを踊ろうとしたが、カランコロンしかいわない地味なものになった……。
次に盛貞。
盛貞は、はにかみながら全身を震わせた。ただそれだけだ……。
次は、和尚と観音像。
和尚は唸り声をあげた。
「うぅ! うぅー!」
観音像は「一月一日は?」と言うと、和尚と観音像は声を合わせた。
「うおっしゃー!
場は恐ろしく白けた……。
最後は溶けこっこ。溶けこっこは歌を歌った。
『迷子の迷子の仔猫ちゃん。あなたのお家はどこですか。名前を聞いても「個人情報を無闇に話せにゃい」お家を聞いても「何? 送りつけ詐欺でもする気かにゃ?」にゃんにゃんにゃにゃーん、にゃんにゃんにゃにゃーん』
溶けこっこの歌声を聞きつけたアザラシの大群が封印寺になだれ込んできた。アザラシはたいてい生きていたが、中には幽霊もいた。そして、溶けこっこの歌に合わせて歌い始めた。
『オア! オアオア! オアー』
もはや何が何やら。
溶けこっこが歌い終わると、アザラシ達は食い物を勝手に持って帰った。
それからは、幽霊達は好き勝手し始めた。
外へ出る者。
寺に入る者。
練り歩く奴等。
もはや収集がつきそうにない。
和尚と観音像は泥酔している。
「おい、お前等あれだ……わしの車の運転が見たい?」
「和尚様の運転は最高」
和尚と観音像は車を取りに行った。
お岩さんは「それはまずい! 盛貞、あいつらを止めに行くぞ!」と言うも、盛貞は泥酔。お岩さんは和尚達を見失う。幽霊が人を見失うなよ。
しばらくすると、和尚と観音像が子供の乗る玩具の車で出てきた。
「わしのテクがあれば足漕ぎフィーバー!」
「観音でーす」
お岩さんはズッコケた。
納骨堂のしゃれこうべが楽しそうにうんこをしている。
揚羽蝶の家紋は「お前等覚えとけよ! いちゅか除霊してやりゅ」と言った。
皆墓穴から出てきて大盛りあがり。その晩は大騒ぎをして、全国の新聞の一面に載ってしまうのであった。
翌朝、門将とお菊さんは怪しい馬車に乗り込んだ。馬車を引くのはゾンビ馬。ゾンビ馬は、「俺の溶けたたてがみを見ろよ。ドロドロヒヒーン!」と訳がわからないことを言っている。馬車からは、紐で無数のしゃれこうべがつけられていた。
「それじゃあ行ってくるね」
お菊さんはお岩さんに言った。新婚旅行で富士の樹海に行くらしい。盛貞は「じゃあ、三人で行きましょうか」と馬車に乗り込もうとするので、皆で外へ引きずり出した。
「それじゃあ、行きましょうかお菊さん」
「ええ、門将様」
二人は旅立った。二人を祝福するかのように、空にはどす黒い雷雨と辺りには薄暗い霧がかかった。
これから二人に何があるかは知らないが、こいつらは……幽霊である。
馬車とすれ違った人がどんどん倒れていく。そして、闇の彼方へ馬車は消えて行った……。
呪殺婦人のお見合い噺 化け猫ニャン吉 @18315
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます