第50話 ナイショの話 ラスト

「直……」

「……私に言えない事情があるんだろ? それも私を守るための……」

「……」

「嘘の下手なやつだな……」


 直には、いつの時代でも敵わない。今も、未来も、、過去も……。


 直は、俺のことはお見通しなんだ……。でも、、だからこそ……。


「帰ろうぜ! 直」


 いつも通りでなくなった日常の中で、俺はいつも通りを続ける。


「……そうだな……。2学期も始まったばかりだし……明日も学校があるんだもんな……」


 その直の言葉には、色んなものが含まれている……そんな気がした。


 俺は、、きっとこれからも直をこんな風に泣かせてしまう気がする……。


 でも、必ず最後は……どのくらいかかるかわからないけど。必ず直を笑顔にして見せる。


「しかし、薫。浮気はしても構わんが、必ず私にそれ以上の見返りをしてもらうからな」

「おいおい、俺のハーレムは浮気? になるのか」

「当然だ。いくら、星奈や清美や晴美ちゃんや、愛花や花愛、それから静ちゃんや鞠奈ちゃんだって、、例外なんかない!!」


 そこで、かおりの名前を出さないのは直の優しさか……。それとも、存在をまだ忘れているのか……。


 どっちにしても、かおりや由梨と秘密の交流をすることに関しては誤魔化せそうだ。


「むっ……。薫、お前私の知らないハーレムメンバーがまだいるな?」

「なっ、、なんのことかなー?」

「その誤魔化し方……。怪しい!! 白状しろー!!」

「直、やめっーーくすぐったい」

「ハハハ。どうだ! 白状しろ!! こいつ! ほら!!」


 直とこうやって年甲斐もなく戯れ合うこんな楽しい時間をいつまでも、いつまでも続けていたい。


『それまで、俺が付き合ってやる』


かおり……。


『もちろん私も、、ね!」


由梨……。


 直と話しながら、意識だけをこの時空にも飛ばす。


 目の前に扉が現れる。


 その扉の向こうにあるもの……。俺は、それも知っている。


 ゆっくりと扉をーー。


「んぁ?」


じりりと目覚ましが鳴って目覚める。時間を見れば遅刻ギリギリの時間だった。


「マズイ! 今日は!! 早朝会議の日!!!」


 眠気が一気に消えていき。俺は、急いで制服に着替え学校へと走る。


 ぜいぜいと息を切らせつつ、生徒会室の扉を開けば既にみんなは集合して一斉に俺の方を見てきた。


「遅いぞ! 薫!!」

「遅刻した罰は何にしようかしら……」

「薫! もちろん、覚悟できてるわよね?」

「先輩! 罰ゲームです!!」

「ドーン!! キャハハ」

「まったく、、弛んでるな……」


「はっ、、ハハ」


 いつも通りの7人の生徒会室で俺は、味方が誰一人いないことを知り乾いた笑いを浮かべることしか出来なかった。


 まぁ、半数は怒ってるんじゃなくてこの状況を楽しんでいるんだが……。


 さて、、今日はどんな1日から始まるんだろうな……。


 ……まだ知らなかったんだ。


 この文化祭までの期間に俺も知らない新たな展開が待っているなんて。


 この時の俺は……わからなかったんだ。

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とある生徒会の日々に(二学期) 縛那 @bakuna_pana0117

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