第9話 ヒント
イクアから中堂を裁くのに自分の罪が使えないことを言われた僕は焦りだした。
僕以外の罪.....それは即ち他に中堂の犠牲者となっている人を探し出さなければ行けなかったからである。
僕はこのクラス全員からいじめを受けており他のクラスにも僕がオモチャにされていることは皆知っているため協力してくれる人は、当然いなく相談できる相手なんて学校には誰1人としていなかった。
そんな中でも頑張って情報を集めたが、
有力な者はない。
中堂の性格は生徒に良く知られているがそれ以上の情報も無いしましてや罪として裁ける物など無かった。
打てる手立てが無くなり途方にくれている僕をイクアは嘲笑する。
「本当に友達がいないんだねぇ君は(笑)
助けてくれる人が誰もいないとは、
そんな人間がいるなんて思わなかったよ。」
(誰のせいで困っていると.....)
僕が心で悪態をつく。
「おやおや?責任転嫁は宜しくないなぁ....
確かにルールを決めたのは僕だが、
皆から無視され誰も相手にされないのは僕のせいではなく君のせいじゃないのかな?
オモチャに成り果てて友人すら作れていないことと今回の事は全く関係ないよ。」
言い分を聞き言い返せないでいる僕を見てイクアが哀れみながら言った。
「まぁ、魂を喰えないのは僕にとっても
不利益だからね。
少しヒントをあげよう。」
(ヒント?)
「悪意は伝染し大きな集合体となりやすい性質がある。
特にこの学校の様に"異常な量の悪意"を抱えているのなら尚更だ。
個人としての悪意を見つけられないのなら、集合体としての悪意を探してみると良い。」
(集合体としての悪意?)
「今日は放課後まで学校に残って、
色々と調べてみなよ。
そうすれば僕の言葉の意味が分かるだろうからね。」
そう言うとイクアは姿を消した。
イクアは良くも悪くも正直に物事を語る。
しかし、今回は悪意と言う言葉を使い暈しながらヒントをくれた。
ここから先は自分で調べろと言うことなのだろう。
それに放課後まで残れと言う指示......
間違いなく今日何かが起こるのだと僕は、
理解しそれを調べようと思った。
例えそれが、
どんなにおぞましいものであっても......
授業が終わり放課後となり部活の無い生徒は皆、下校し始めた頃.....
僕はイクアの出したヒントを元に学校内の
捜索を始めた。
僕はこれまで苛められ続けた影響からか自分の存在感を消して行動することが上手くなっておりそのおかげで先生や他の生徒に気づかれないように隠れながらある程度行動することが出来た。
教室や家庭科室、音楽室など色々と捜索しているが特に怪しいところは無い。
(イクアはああ言ってたけど本当に何かがあるのかな?)
すると、一つの教室の前で、
僕は足を止め柱の裏に隠れた。
その教室の扉の前で二人の学生がまるで、
ボディガードのように立ちながら周りを警戒していたからだ。
その異様さが気になり注目しているとその教室の扉が開き中から担任の中堂と女子生徒が中から出てきた。
女子生徒に僕は見覚えがあった。
同じクラスの生徒である菊地
中堂は笑顔で菊地と少し話すと部屋を後にし菊地は部屋の中に戻っていった。
(これがイクアの言っていた事なのか?)
僕は中で何が行われているのか調べようと覗き込もうとする。
「誰だ!」
しかし、そこでボディーガードの様に立っていた生徒の一人に見つかった。
僕は顔を隠しながらその場から逃げた。
逃げる僕を追ってきているのを理解し僕は振り切る為に全速力で逃げた。
しかし、僕の体力が少ないため速度が段々と落ちてきた。
後ろから追いかけてくる奴との距離が縮んでいるのを感じ僕は何とかしないとと思い、
窓を見上げた。
(ここは三階....だけど捕まるわけには行かない!)
僕は意を決して窓から飛び降りた。
その瞬間、落下し頃されかけた過去がフラッシュバックする。
しかし、前と違うのは落下する景色が空ではなく今は地面だと言うことだ。
僕は両手足を地面につけることで衝撃から身体を守ろうとする。
ドカッ!と言う音と共に身体に激痛が走る。
恐らく骨が折れたのだろう.....普通の人間なら動けない程の痛みだが僕は動くことが出来た。
イクアの能力により不死身に近い身体を得たおかげで苛めで受ける攻撃にも耐えられる様になっていた。
そのせいで暴力のレベルも上がり、
普通の人間なら大怪我しかねないことも、
やられるようになっていた。
しかし、その時はイクアは僕を助けようとせずただ笑っていた。
しかし、そのおかげで死ぬような激痛にも馴れて身体を動かせるようになってしまっていた。
(まるでゾンビだな.....)
僕は自分が人じゃないような存在になっているような気分になりながら痛みを我慢して走り学校の門の裏の壁に隠れる。
僕を追ってきた奴らは窓から飛び降りたのを見て窓から僕を探そうとするが見つけることは出来ず、僕は逃げることに成功した。
逃げれた事に安堵した僕は息を吐き呼吸を整えようとして身体の痛みを再認識する。
さっきまでと違い安心したせいか身体の痛みをダイレクトに感じる。
すると身体がまるで内部から治されているかの様な激痛の後、痛みが消えて僕は動けるようになっていた。
(今回はイクアに感謝しないとな。)
そんな事を考えつつ僕は教室に置いてきた自分の荷物をどうやって取ってくるか考えるのであった。
何時もの"仕事"が終わり菊地は姫奈と会っていた。
「今日はお疲れ様ー!!亜弥ちゃん♥️」
「あっ.....ありがとうございます。」
「はい!これ今日の分ね。」
そう言って姫奈は菊地にお金を渡した。
「あの、この前よりも少なくなっているんですけど.....」
その言葉に姫奈の取り巻きの男が言う。
「あ?姫奈ちゃんに文句でもあんのかこのブスが!」
そう言って殴りかかろうとする。
菊地が腕でガードすると姫奈が止めた。
「止めなよぉ〜この子中堂のお気に入りなんだからさ.....
亜弥も亜弥でさ我が儘言っちゃダメだよ?
誰のおかげで楽しく学校生活出来てるとおもってるのぉ?」
「もっ!勿論、姫奈ちゃんのおかげです。
姫奈ちゃんのグループに入れて貰ってるから....」
「なんだぁ...分かってるじゃん!
ならさ、あんまり文句とか言わないで欲しいなぁ......でないと」
「あの、"ゴミ"と同じところに行って貰うよ。」
ゴミとは内のクラスで苛められている鈴原の事でその意味を正しく理解している菊地は、姫奈の言葉に頷くしかなかった。
金を貰った菊地は荷物を取りに教室に戻る。
彼女にとってこの学校は地獄そのものだ。
苛めを容認している学校、生徒の事を全く考えていない教師....だがそれよりも恐ろしいのは姫奈だった。
彼女は外面が良く本性を知らない生徒や先生からとても良い生徒と言う印象を持たれている。
私の親だってそうだ。
家に姫奈が来たときなんて娘の私の事なんてほっぽりだして夢中になっていた。
姫奈が帰っても「彼女綺麗ね」とか
「そんな子と友達になれて貴女幸せね」とか
そんな事ばかり言ってきた。
最初の頃は彼女に歯向かおうとする奴もいたけど皆、潰されて学校を去っていった。
担任にも相談したらしいが聞いて貰うどころが姫奈の悪口を言ったとして怒られた。
学校の全てが姫奈の言いなりとなっていた。
(彼女はこの学校の女王だ。)
そして、私達は付き従う従者。
従順で的確に命令をこなさないと行けない。
でないと、"ゴミ"《鈴原》として扱われ人としての尊厳を失ってしまう。
そうならないためにも私は全てを差し出さないと行けない。
菊地はこの学校のルールを理解し、
それに順応しようとしていた。
全ては"生きて学校"を卒業するために......
そして、教室に着いた菊地はゴミと言われている鈴原と顔を会わせる。
鈴原は菊地と目を合わせると話しかけてきた。
「あっ.....菊地さん。
放課後まで残ってたんだね。」
菊地はその言葉を無視して自分の荷物を取り帰ろうとすると鈴原に呼び止められた。
「待って!菊地さん。」
菊地は無視して帰ろうとするが鈴原の次の言葉で足を止める。
「あの部屋で一体何をしてたの?」
続く
悪魔はそれでも笑いかける。 のいん @noin933
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