知る苦.soleil

沙原芥子

知る苦.soleil

 自由って怖いよ、首元の手、力強いほうがぼく好きだ。

 epidemicな愛を信じていた。ずっとつながってたかった……生命がなかった。なかった? なんでだろう、pussyで飾れば撫でてくれる、でもそれは臆病で勝手だ、膜を破って得意になったナイフ、自分の壁を破らないのずるいよ。


「つないで」


 きみは鵜呑みにしている。鎖でもよかった。きみの手はあんまり弱くてさみしい、あったかい。こんなのうそ……ぼくだけが知ってる温度、じゃない、もうきっと違ってる。140文字で真実がわかる。

 指紋認証、この指とまれ、いらなかったんだ最初からね、こんな手は、ぼくだけじゃないならいらなかったんだ。わかるんだよ、さいころじてくのろじ、振り出しにも戻れなくなっちゃった。帰れないなら殺しちゃお、泣きたいくらい大事だったの、おぼえてるよ。子どものころから子どもだったの。

 神さまならそばにいて、そうじゃなきゃ死んでよ。纏わることが愛なんだ、そうじゃないのかな。定規なくしちゃった。はやさ、じかん。大事な距離ってなんせんちだったの? わかんないな。愛していれば返ってくると思ってた、ふり返ってきらきら、豚の血に煙った焼却炉も、きれいに見えることがあったんだ。きみが光。乱反射で暴走したぼく。割れた硝子の靴がやっと虹色になって、そんなのかなしいな。


 ぼく:嘘ついてたの

 ぼく:やさしすぎるんだよね?

〈既読スルー〉

(つまり彼は籠城した。そうすればだれも傷つけることなく、だれからも傷つけられず、うつくしいままでいられると思ったのだ。しかし彼女はかつてない暴力を受けた。彼女はテクノロジーの擬似暴力に襲われたのである。ネットワークを漂った沈黙はなにより鋭利な金属の姿をとり、彼女の羽化したてのやわらかな肉体を切り裂いてしまった)


 えへへ。撫でられた……その場しのぎで褒められた。うれしいよ、でも信じてない、信じたい。ずっと信じたかった。でもだめだよ。しんじゃうんだよ。ぼくは蛾だったんだよ。きみだけでよかったんだ。ごはんなんか食べなくてもさ。立て籠もったきみと一緒にしんじゃお。だれも助けに来ないよ、そうだよね、ちがうの? どうして? ねえ、そのひとだれ?

 きみが光だったんだよ、だからそばにいたかった、あんまりきれいで焼け死んだってよかった。太陽だ、おそれみお、畏れ見よ! ぼくはだめだったのかな……醜いかな、メイクだってかなり自信あったのにね、がんばってた。でもそういうことじゃない、たぶん。

 その子のほうがよかった? アカウント探した。この服装? この料理? 真似るよ、ううん、もっと上手になるから……だけどぼく、ちょうちょにはなれない。そういうことだよね。わかってる。わかってたよ。


 ぼくは死にゆく、生なんか知らない、きみとゆっくり死にたかっただけなのだ。きみはそれを許さない。でもぼくは生きることなんかできない。生の強要、性の……、半端に殺しておいて、やさしいふりというのはただただ残酷だ。きみはきっと生きたかったのだろう、いつか白い蝶にみちびかれて、城の門を開けるのだろう。ぼくもむかしは生きたかった。でも死んだってよかったんだ。

 あのとき、あんなにきれいだった、きみが見せた景色……ずっとつながってたかった。神さま。飢えた蛾のなきがらを一瞥して、きみが見せる表情というのは、



「ねえ、もうわかんないよ。」

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