もう一つの誕生日
比良
元気な男の子です!
俺はまだ生まれてなかったんだ。さっき生まれたんだ。
家に引きこもってる間の暇つぶしだ。軽い気持ちで物書きの真似をしてみた。最初の作品は目の前にあったタペストリーを眺めながら書いた。せっかく書いたんだからと思ってツイッターに上げた。いいねはつかない。そもそもフォロワーが少ないのだから、誰も読むはずがない。だけど、不思議と興奮して寝付けなかった。寝れないから、暇つぶしにまた書いた。次は大学時代の思い出を文章にした。思ったより長くなったから、カクヨムに上げた。震える手でアカウントを作って、予約投稿機能を使ってアップした。結局アップされる直前まで推敲していた。誰か読んでくれるかなとわくわくしながら寝た。
起きたら世界が変わっていた。薄目でカクヨムのマイページを見る。自分の作品の星の後ろに0以外の数字。誰かが読んで評価したんだ! ぼーっと口を開けて、じーっと星を見つめる。頭の中がぐちゃぐちゃだ。混乱した挙句、口からでたのは「おぎゃあ」。本当なんだ。誰かが自分を認識したから、今生まれた気がしたんだ。
物を書いて誰かに読んでもらう喜びを知ってしまった。もう戻れないんだろうな。
もう一つの誕生日 比良 @hira_yominokuni
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