白い本

葉月すみ

第1話 白

「ねぇあずさ…『白い本』って知ってる?」

 昼休み。何の脈絡もなく燈子とうこが言う。

「また怪談?」

「うん。学校の都市伝説なんだけど。どーもこれがガチっぽくて」

「あんた毎回そう言ってる」

「そんなこと言わずに聞いてくれよ梓氏。オカルト部の一員としてさぁ」

 内心ため息をつくが、梓は大人しく話を聞くことにした。もっとも、『後がめんどくさい』からである。

「……聞くよ」

「やった! じゃあ──」

 燈子の話はありふれたもので、どうやらウチの学校の図書室に、呪いの本と言われている『白い本』があるそうだ。その見た目はその名の通り真っ白で、ここ数年は見た者がいないらしい。でも、

「梓って図書委員でしょ。だから裏の書庫も探れるんじゃないかって」

「で、また私が行けと」

「お願い! ほら、私ってビビリじゃない? 生徒会もあるし」

 じゃなんでオカルト部に入った? 思わず梓は肩をすくめた。


 放課後。梓は図書室へ向かった。

「先生。ちょっと書庫の整理してきます」

 適当に口実を作って、梓は書庫に入る。

 えっと、白い本は…

 と、その時。壁際の棚でやけに白く輝いている本が目に入った。本当に、白い。

 思わず手にとって中をパラパラとめくる。中身は普通。これが呪いの本?

「いや、こんな簡単に…」

 ハズレと思って棚に手を伸ばしかけるが、それを一度引っ込めた。恐る恐る棚の奥を覗き込み……ホッと息をつく。

 よかった。壁際の棚で奥に人の顔があるとかは無かった。


 早く帰りたくて図書室に戻ると、司書の先生を含め、誰もいなくなっていた。少し変に思いながらも、梓は図書室から出るため、ドアに向かう。

 すると、自分より早くドアが開いた。

「……え」



 見上げると、そこに




 真っ白で、目だけが黒い何かが──

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白い本 葉月すみ @HazukiSumi

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