兄と妹

バブみ道日丿宮組

お題:鈍い兄 制限時間:15分


兄と妹

「だいぶ遅いですよ」

「なにせ走ってきたからな」

「車のってきてよ。帰りどうするの?」

「安心しろ、タクシーを呼んである」

「でかした。とでも言うと思った? 私はお兄ちゃんの車に乗りたかったの!」

「今修理中なの知ってるだろ」

「代わりの車借りてるでしょ」

「あれ運転しづらいからあんま気持ちよくなれない」

「お兄ちゃんが気持ちよくなるかどうかなんて知らないよ。私はお兄ちゃんの車に乗りたいの」

「そうか……じゃぁ明日からはそうするよ。待たせてるタクシーの場所行くぞ」

「……今日は歩いて帰る」

「そうなのか? タクシーは?」

「返しておいて。今日はお兄ちゃんと歩いて帰りたい」

「変わったやつだな。楽をしたいのかしたくないのか、お兄ちゃんよくわからないよ」

「安心して。なにもお兄ちゃんは理解してないから」

「それはどういう意味なんだ?」

「自分で検索して。それがわかったら、お兄ちゃんがお兄ちゃんじゃなくなるけれど……」

「なんだよ、まるでお兄ちゃんが鈍いやつみたいじゃないか」

「……はぁ」

「こっちがため息だよ。毎日朝夕のお迎えを欠かさず行ってきたのに」

「それは当然ことでしょ。妹が危なくないように兄が支援する。どこにもある日常風景」

「そうなのか? まぁわがままは昔から変わってないから、特に気になるようなものはないだろうが」

「……はぁ」

「深いな! ため息!」

「そういうのいいから、ほら行こう」

「手は繋がなくていいのか?」

「まだいい」

「そっか」

「今日ね。クラスの友だちが死んだんだ」

「……そうか。仲良かったのか?」

「ううん、いじめっ子だった」

「いじめられっ子じゃないのか」

「負の念に捕らわれた……わけじゃない。やり返したから」

「やり返したって、お前いじめられてたのか」

「いじめだとは思ってなかったけど、なんかやられたままにするのは釈然としなかったから、同じことをしてあげたの。ううん、倍以上」

「お前それは殺人に近いぞ」

「大丈夫。生きてるから」

「でも、さっき死んだって」

「社会的に死んだってことだよ。全裸でピースサインしてる画像が学校に広まったから」

「それって、お前もされたってことか?」

「ううん、私はただ写真撮られただけ。○○ちゃん、今日も可愛いとかいって」

「それは褒められてたんじゃないのか」

「違うよ。嫌がらせだよ。私なんか普通なのに」

「……そうか。あまり気にするなよ。お兄ちゃんはいつでも味方だからな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

兄と妹 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る