風邪と彼女
バブみ道日丿宮組
お題:幼い風邪 制限時間:15分
風邪と彼女
一人っきりのベッドで眠ってると、昔を思い出す。
といっても、物心ついたときの記憶で大部分は記憶にない。
あの頃は、まだ一人で眠ることはなく、親か、あるいは姉と同じ部屋で眠ることが多かった。
聞いたところによると、寝かしつけるということはなく、夜になるとスイッチが切れたかのように眠りについたので、運搬するくらいであまり手がかからなかったという。
逆に姉は寝かしつけても寝てくれることが少なく、童話を読んであげたり、運動させたり、歌を歌ってあげたりといろいろなことをしたとのことだ。
「……暇だ」
高熱が出てるというのに、うなされることも眠気もやってこない。
かれこれ、1時間ほど天井を見つめてる。
もちろん、スマホをみたりタブレットをいじったりはしてるがそれでも限界というものがある。というか、病気なんだから大人しく寝ていろという精神が強くてあまり手応えを感じなかった。
「……」
彼女が帰ってくるまであと5時間ほど。
私が熱を出したと発覚すると、彼女は学校を休むといい始めた。成績優秀の彼女を休ませるわけにもいかないので、大丈夫だからと何度も連呼した。
しぶしぶ彼女は学校へと向かい、私は部屋に残った。
そういえば、彼女とは幼い頃同じベッドで今のように眠ってた気がする。幼馴染がいったいいつから幼馴染なのかはわからないが、何度も見てる顔がとなりにあるのはとても安心できた。
「……」
病気だからだろうか、少し心細くなってきた。
ただの風邪なのだから、寝てればいい。でも、構っても欲しい。
欲求不満なのだろうか。
行為に及んだのはほんの数時間前。そう考えてみると、彼女にも風邪がうつってる可能性が高い。
どうだろうか。
幼い頃からずっと一緒にいるのに、彼女が風邪で休んだという記憶は残ってない。いつでも元気に登校して、元気に挨拶を交わす。
それが彼女という人間だった。
私といえば、下手をすると、一ヶ月に二回休んでたかもしれない。
「はぁ……」
少し憂うつ感が増した。
ほんと早く帰ってこないだろうか。
あの元気な彼女を見てると、こちらまで元気になれる……気がするので、本当は学校に行ってほしくなかった。
私の手、足、指、爪、唇、耳たちを優しく包み込んで欲しい。
あぁ……ほんとに欲求不満なのかもしれない。
風邪と彼女 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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