第8話 真実ですわ!?
更に三日をかけて王都から戻ってくる。
馬車から家を見ると今乗っている馬車よりも一回り大きなのが玄関前に止まっていた。
嫌な予感がしながらも馬車から降りて玄関に入る。
「ただいま戻りました」
「帰ったのか」
お父様が玄関で執事と話をしていたが、声を聴いて視線をボクに移した。
やはり全く見覚えがない。
それに怒りさえも感じる。
「はい、王都から」
「そうか。お前も八歳になって、二年後には社交界へ出ることになる。ゴウゲルハイト家の人間として恥ずかしくないように努力しなさい」
そして、すぐに執事の方へと視線を戻す。
「かしこまりました」
ボクはこの人とは精神的に関わりたくないので足早に部屋に戻ろうとした時だった。
公爵は小さなため息をこぼす。
「……。悪魔のような人間を代償にした時はどうなるかと思ったが、これでうまくいくだろう」
それと一緒に漏らした言葉をボクは聞き逃さなかった。
「あくま?」
「気にしなくていい。もう行きなさい」
聞き返したボクから逃げるように公爵は部屋の奥に逃げてしまった。
でも、その言葉に嫌な予感がした。
本当は知らない方がいい。
その方が、幸せなままでいられる。
「悪魔って、あの悪魔だよね」
ボクは自分の部屋に入るとその後を追うようにアンネが入ってきた。
そういえばアンネは禁忌の魔法の魔法についての研究をしているはず。
もしかしたらアンネは教えてくれるかも。
自分の予感に逆らい、興味本位で聞いてしまった。
「アンネ、悪魔のような人間って何?」
「悪魔、……。ああ、たぶんですがお嬢様の魔力もとになった少女の事ですね」
「は?」
案の定、アンネは何の考えもなしにしゃべりだす。
「禁忌の魔法を使うにあたって、平民など足が付く人間を使うのは不味いってことで、別のところから用意することになったのですよ」
ボク自身の唇が渇き、声が震える。
でも、ここまで聞いて後に戻ることはできなかった。
「それって」
「お嬢様は知らないかもしれないですけど、その昔勇者召喚というものがありまして、その研究を私はしているのです」
誇らしげにどのような研究をしてきたかなど話すが、ボクの中には入ってこなかった。
「それで、禁忌の魔法は?」
「今いいところですから。おっほん。その実験の過程で、異世界から人間を呼び寄せる召喚までは行きついたのです。ですが、魔力が強かったりする人間を呼び寄せることはできても、勇者を呼び寄せるのは未だできていなくて」
その予想があってるとは限らない。
まだ、その時では。
「つまりは」
「はい。異世界の人間を使って禁忌の魔法を使用しました」
泣き出しそうな自分を必死に堪える。
唇を噛み、爪を当て、血がにじむような痛みがボクを襲う。
でも、まだ聞かなくてはいけないことがたくさんある。
深呼吸をして気持ちを静めた。
「ねえ、その素材になった少女ってどうなったの?」
「魔力を強制的に空っぽにしたので、亡くなりましたよ」
あっけらかんと言うアンネに憎しみが沸きだす。
本当はこの場で首を絞め殺してやりたい。
でも、この悪魔はタダでは殺さない。
まだ、殺してはいけない。
「……、死体は?」
「ゴミ置き場に捨てましたが」
その言葉を聞いたボクは走り出していた。
そして、ゴミ置き場に入るとあたりを見回す。
そして、残飯等の生ゴミがそのまま捨てられている中に一際大きな麻袋が捨てられていた。
ボクは震えた手で中を開く。
すると、大量の虫が出てくる。
中は腐って虫の餌になっていたのだ。
それでも、無視を払いのけ硬い何かを持ち出した。
「お、お嬢様!!」
少し遅れてアンネが入ってきた。
「お嬢様! どうされましたか?」
ボクはそれを握りしめる。
全てが納得いった。
そうか、だからこの中にまだあいつがいるのか。
「ははは! 前提が違ったのね。そういうこと!」
「おじょう、さま」
アンネはボクを見て驚きを隠せないようだ。
だが、こんなものを見てしまったら。
正気でいられるはずがない。
でも、麻袋にはあれもあった。
あの死体がが持ってるはずがない。
「ねえ、他に召喚されたこはいなかった?」
「はい。いました」
ボクの質問にアンネは怯えながらうなずいた。
怒りが自分の中で抑えられない。
「そのこはどうしたの?」
「研究所に「すぐに連れ戻して」
声を荒げなかっただけ自分をほめてあげたい。
落ち着け泣くのは今じゃない。
全部終わらせてからだ。
「なぜ?」
その為にはアンネを怖がらせてはいけない。
こいつの態度を見れば誰もが感づいてしまう。
それだけは絶対にダメだ!!
「すごい研究ができるわよ」
ボクは悪役令嬢のように笑いながらそう言うと、馬鹿な彼女は何を思ったか怖がっていた表情が新しくおもちゃをもらった子供のような無邪気な顔になった。
「何か秘密が! すぐに連れ戻します」
ボクは手にスマホのケースを開ける。
そして、間に挟まっている写真を取り出した。
それはボクとパパ、ママが一緒に笑っている写真だった。
「ねえ、シセリーナ」
それなのにボクの死体から出た体液で。
「邪魔だけはしないでね」
泣いてるように見えた。
その令嬢、自ら悪の道を突き進む ~ヒロインの顔が気に入らないので、イジメてやりますわ~ 矢石 九九華 @yaisikukuka
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