親愛なる愛娘へ

影神

置手紙



『小さな頃から、あまり、、




手がかかる子じゃなかったわね、、』






物心がつく頃には、既に。




自分の事が、ある程度。




何でも出来ていた。




世話の掛からないいい子だった。




可愛い、可愛、




私の子、、






私は片親だった。




結婚し、幸せな家庭を築きたかった。






小さな頃の夢はお嫁さんだった。






愛する人が居て、




愛する娘が居て。




犬なんか飼ったら、




夕方には一緒に散歩でもして、






そんな事を考えながら、




私はきっと、




夢を見ていた。






私には好きな人が出来た。




社会人になり、それなりに安定し始めた。




経済的にも、社会人としても、、




その人と付き合って、




何度も愛し合い、夢を語った。






彼もそれに同意してくれた。






けれど、私の妊娠が分かってからは、




彼は家には帰って来なくなった。






蒸発したのだ。






私は酷く両親に怒られた。




父親「どうやって育てるんだ!」




母親「向こうのご両親は、何て、、?」




好きな人の両親は、




「下ろせ。」




ただ、端的にそう、言われた。






「可愛い、可愛い。私の子。」




そんなにこの子の事を悪く言わないで、、




ただ、来てくれただけなのに、、




「大丈夫。きっと、何とかなる、、」






私は痛い思いをしながらも、




何とかこの子を産んだ。






何とも表現のしずらい感情。






"いとおしい"






「産まれて来てくれて、ありがとう、、」






そう胸に、優しく抱いた。




ずっしりとしていて、とても暖かい。






私はその日。正式な形で母親になった。






しばらくはずっと付きっきり。




でも、幸せだった。




そんな時間が、そんな季節が。




娘との幸せな日々だった。






あの子はあっという間に、




オムツが外れ、




一人で歩く様になり、




会話も達者になっていった、、






働かなくては生きてはいけない。






無論、預けられる場所もなく、




両親に頭を下げた。




泣きながら、、




「お願いします、、」






しぶしぶ受け入れてくれ、




何とか生活が回る様になった。




だが、子供との時間はずいぶんと減った。






お金はなかなか貯まらない。






出ていく出費が多く、




働いても、働いても、




潤う事はなかった。






でも、寝顔を見ると、




そんな苦労も平気だった。




帰って、一緒に寝るだけ。






それでも幸せだった。






子供はそうは思っては




いなかったかも知れないが、、






きっと寂しくて、、一緒に居たかっただろうか、




もっと外出したり、おもちゃが欲しかったり、




そんな、いろいろな事を思っていただろうか。






「ごめんね。」






優しく頭を撫でて、側で寝る。






きっとこの子がお母さんになったら、




いつか理解してくれるだろうか。






私はこの子が自立出来るまでは、




きちんとこの子の為に働かなくては、、






小学生になると、一人で留守番が出来た。






孤独だろうか。




両親が私の悪口を言うから、、




きっとあそこには居られなかったのだろう。




「ごめん。」






いつでも連絡が取れる様に、




この子には携帯を持たせた。




子供用だから安心だ。






あの子はすくすくと育った。




けれども、元気で小さかった子からは




想像も出来ないくらい、




おとなしく、静かな子供に育った、、






学校は楽しいだろうか、、




学校で虐められてはいないだろうか、、






子供は大きくなればなる程、お金がかかる。




「頑張らないと、、」




成長する子供と年老いてゆく私。






中学生になると、会話すらしなくなった。




ただ、携帯でやり取りはする。






友達とは上手くいっているのか、、




勉強はどうか、、




学校はどうか、、、




虐められてはいないだろうか、、




好きな人は居るのだろうか、、






そんな心配事を抱えて、四季を過ごす。






けれど、私があの子の事を考えるのも、




もう、無くなってしまった。






あの子は自殺してしまった。






原因は虐めだった。




部屋で首を吊って、、




亡くなっていた。






あぁ、、




私の愛する娘、、






どうしてこうなってしまったのだろうか、、






私はあの子の幸せを願って、、




あの子の為に、、




必死に働いて、、






いつか、、2人で旅行なんか行って、、






いつか、、あの子と一緒に服を選んで、、






いつか、、、。






あの子は、、






もう。






居ない、、、






静かな部屋。




あの子の居ない部屋。






私は、何で、、






愛して居たのに、、






大好きだったのに。






大切だった、、






あの子の幸せを、、




心から願った。






ただ、、、




一緒に、、幸せになりたかった。






あの子と笑って。




あの子と、、、






『ごめんなさい。』






私が、、私が、、、






私のせいで、、、






私が、、、






「今。そっちに行くからね、、






今度はちゃんとするから、、






ちゃんと、、






大好きよ。」










































天井から吊るされた紐には、




母親の身体がゆっくりと揺れる。
























































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