性別のない人

月影いる

白か黒か。グレーはありませんか?


 ——どっちかじゃないとダメですか?

 

 

 僕は幼い頃、普通の女の子でした。可愛いものが好きだし、スカートやワンピースだって好きで着ていたし、フリルの付いたものが好きで喜んで買っていました。

 でも、それは突然でした。二十歳を超えてから僕自身に性別に関して疑問と違和感が湧いてきたのです。とかと言われることを極端に嫌い、不快感さえ覚えるようになりました。こんなことは初めてでした。そして何故か昔大好きだったはずのスカート等を履くことを躊躇ためらい、基本ズボンばかり履くようになりました。そして化粧に関しても嫌で嫌で仕方がなくてファンデーションや眉毛を書くことくらいで精一杯でした。不思議でした。同年代の女性はバッチリメイクをしてパンプスとかヒールのある靴を履いてオシャレに着こなし、流行とかにも詳しくてしっかりされている方が見られる中、僕は真逆と言っても良いくらいでした。どうしても流行りものとかに興味が持てず、よく言うと言われること全般に興味が向かなくなってしまいました。かと言って自分が男性だという自覚がある訳ではありません。女性だとも思いません。僕は一体何者なのか、普通では無いのかと分からなくなりました。どちらでもなく、中間でもない人。自分の中で肉体との矛盾が日々不安と戸惑いを増幅させていました。そんな中、一人の葛藤など知らず周囲の人間は僕の地雷をことごとく踏んでいきました。ワイドパンツを履けば、

「それスカート?いいね。」

 と言われ、後は「彼氏つくらないの?」とか「、しっかりしろ。」とか。女性だという認識がない僕にとっては、このようなよくあることでも本当に苦痛で

仕方がありませんでした。この時『女性』として見られることが絶望的に嫌だったのだと実感しました。男性から『女性』として見られた時、恐ろしいほど血の気が引いたのを覚えています。しかし男扱いを望む訳ではありません。もう、どうすればいいのか分からないのです。

 

 何故僕には性自認がないのか、分かりません。一つだけ理解したことといえば、生きづらくなるだろうという事だけです。そして僕は僕として、一人の人間として生きていくしかないという事実だけでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

性別のない人 月影いる @iru-02

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ