ロボットアニメが苦手な私によるロボットアニメについての一考察

ととむん・まむぬーん

四半世紀エヴァンゲリオン

 正直に言います。私はロボットアニメがそれほど好きではありません。


 人生も半ば過ぎ、もう落ち着いていてもよい年齢ですが深夜アニメは大好きです、同じ時間帯に放映されているやかましいバラエティーよりもずっとずっと。それでもロボットアニメには今も食指が動かないのです。


 それは私が高校生の頃、クラスの一部の女子、それはたかだか数人だったかも知れませんが、の間でやたらと盛り上がっている作品がありました。

 その名は「機動戦士ガンダム」、やたらと気になったので帰宅してすぐに放映時間を調べてみました。今と違ってスマホはおろかインターネットすらない時代のお話です、情報源は新聞のテレビ欄と書店のテレビガイド誌の立ち読みでした。するとどうやら平日夕方に再放送されているではないですか、ならばどんなものかと私も観てみることにしました。

 それでその「ガンダム」なんですが、そのときの自分にはどうにもピンと来なかったんです。絵柄もそれほど好きになれなかったし、たまたま観た一話だけではストーリーもよくわからなかったし。それ以来、私は未だにガンダムをまともに見たことがないのです。なので現在でも「ガンダム」と付く作品はなんとなく避けてしまう次第です。


 ちょうどその頃からでしょうか、ロボットアニメを中心とした作品に熱烈なファンが付いて専門の雑誌も発売されるようになったのは。主題歌もニューミュージックとして聴ける作品になって、かつての「テレビまんが主題歌」から「アニメソング」というジャンルになっていったのも。

 大学の音楽サークルあたりでもそんなアニメソングをコピー(当時はカバーなんて言わなかったんです)する連中が現れ始めましたね。私はそんな彼らから漂う独特の雰囲気もあまり好きになれなくて、批判なんぞすることはありませんでしたが、しかし少しばかり距離を置いていたことは確かでした。


 時は流れて一九九〇年代、私はアニメとはすっかり疎遠になっていました。ドラマや深夜番組は観ていたので、その頃は単に興味がなかったんだと思います。

 そんなある日のこと、職場の同僚が飲み会の席にてあるアニメ作品についてやたらと熱く語るわけです。いい大人がまさに熱弁でした。

 実は同じころ、我が地元の友人も職場の彼と同じ作品にハマっていました。

 なんと、その友人は深夜に流れた再放送をビデオに録画して、それを自分が主催するホームパーティーで流したのです、とてもとても熱く語りながら。

 その作品こそが「新世紀エヴァンゲリオン」でした。


 私にとっての第一印象は「ああ、ロボットアニメね」でした。なのでまともに観ることもなく歓談していたのですが、会話の合間合間に目にする映像がやたらときれいだったのが印象的でした。

 それから件のビデオは友人たちの間を転々と巡ることになります。そして最後の最後に私の下へ流れてきました。それでも観ませんでしたね、私は。だってロボットアニメなんだもん。

 そんな私も友人の熱意にほだされてついに観ることになります。とにかく最初の三話だけでもいいから、それで面白くなかったらそれはそれでいいから、と。



 一九九〇年代後半のコンピューター業界(まだITという言葉はありませんでした)では、これまでのMS-DOSからWindowsへの転換が加速していました。企業で運用されているシステムも、稼働しているプラットホームの入れ替えに合わせてアプリケーションのWindows対応が進みました。

 当時バリバリのシステムエンジニアだった私も受託したWindowsアプリの設計を何本も担当しました。もちろん同僚たちもまた同様でした。

 やがて彼らが設計する画面デザインに似通った特徴が現れ始めます。

 とにかく漢字を多用する、それも極太の明朝体で。特にエラーメッセージ画面においてそれは顕著でした。

 まるで工事現場のような黄色と黒のレイアウト、オレンジ色と黒の強いコントラス等々。それこそまさにあのアニメ「エヴァンゲリオン」の影響であることは明らかでした。

 そして私が設計したシステムの画面設計もまた……そう、自分もすっかり影響を受けていたのでした。

 気が付けばサブカル系書籍も缶コーヒーすらも、とにかくエヴァ一色でした。続く劇場版公開、深夜枠での再放送などなど、自分も周囲もエヴァを楽しみ、少なからず影響も受けることになります。


 そんな人気も一段落した西暦二〇〇一年、インターネット博覧会(以下、インパクと表記)なるものが開催されます。

 そこで目にしたもの、それは六角形が多用されたデザインの数々でした。

 とにかくインパクと言えばやたらと六角形デザインのサイトがあるイベントという印象でした。もちろんそのデザインには既視感がありました。

 そう、エヴァです。特務機関NERVに使徒が侵入したときの警告画面、一面に六角形が表示されたあれです。

 インパク参加の企業やデザイナーの全てがエヴァの影響を受けたとは言いません。しかしながらあのハニカムなデザインにはその影響が少なからずあったのではないか、なんて思ってしまいました、当時は。

 そしてその頃の自分は、と言えば、もうすっかりエヴァ熱は冷めてしまって、深夜アニメこそ観てはおりましたがそれほど夜更かしすることもなく仕事に明け暮れる毎日でした。



 時代は流れて西暦二〇二一年、エヴァンゲリオン劇場版が完結を迎えました。しかし私は一連の新劇場版を未だ観ていないのです、一作たりとも。まあ慌てることなく全作品のDVDが出揃ったらまとめて買ってイッキに観ればいいや、くらいに考えていました。

 でも、いつの間にか「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」の公開から十年以上の時が経ってしまいました。さすがにこうなるともう、今さら、ですね。

 それに私事ですが、あの当時に熱く語り合った仲間の幾人かは既に鬼籍に入っています、それは年齢的なものではなく不慮の事故やら突然の病などによるのですが。なので私にとって「エヴァ」なるものは作品のみならず当時の全てがもう過去のことなのです。


 さあこれからどうしましょう。

 それは私にもわかりません。ガンダムシリーズのようにこれからも観ないままでいるのか、はたまたボックス版が発売されたら購入して視聴するのか。

 とは言え、自分にとっての熱はすっかり冷めてしまってるんです、おそらくこのまま観ることはないのかな、なんて思ってもいます。二十数年ってのはそれだけの年月なんです。


 そう、今の私にとってエヴァは「四半世紀エヴァンゲリオン」なのです。



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