第8話 でえと

 「わー!すごい!!」


 俺とユイはショッピングモールに遊びに来ていた。

 ユイにこの世界を教えておこうと思って。ユイは中学生の妹が着ていた服を着ている。

 そういえば、アイツが中学生になってから一緒に遊びに行けなかったな‥


 「結城さん、ここの人って髪の毛や目って黒いんですね!」

 「ああ、そうだね。」

 「結城さんの髪や目の色、私と同じだったので気づきませんでした」


 ユイが俺を見てにっこりと笑った。

 そう。俺は銀髪で目は灰色だ。

 銀髪‥というよりはプラチナブロンド?色素の薄い金髪といったところだろうか。

 普段は目立つから黒く染めているのだが、タイムスリップ?したときに元の髪色に戻ってしまった。

 自分では見えないから気づかなかったが、鏡を見てようやく気づいた。‥引っ越しのために鏡を片付けていたから気づくまでに一週間ほどかかった…

 気づいてから染め直そうとしたが、なぜかうまく染まらなかったので地毛のままだ。

 まあ、ユイとお揃いだし。それなら「兄妹」に見えるかな。外出するなら「恋人」より「兄妹」の設定の方が楽だろうから。

 ちなみに俺の家族、親戚は純日本人で黒髪、黒目だ。家族一同首をひねったものだった。

 …一応補足。夫婦仲は良好。こっちが恥ずかしくなるくらい仲は良い。

 色素を作れないわけではないのでアルビノではないらしいけど。

 …うーん。謎だ…


「結城さん、結城さん、すごいです!」


 ユイは色んな商品を見るたびに歓声をあげている。

 その様子をほほえましく見ているとユイが頬を膨らませて俺の方を見た。


 「なんか、私が小さい子供のように愛でられている気がするんですけど…」

 「ごめんごめん。なんか新鮮で。」


 まだ若干不機嫌そうだったのでアイスクリームを買ってやったら一瞬で笑顔になった。

 二人で座って食べていると誰かが俺の肩に触れた。


 「あの、蓮だよね?」


 振り返ってみると、


「彩矢?!」


 俺の元カノがいた。


 「やっぱり蓮だ!久しぶりだね。」

 「おう。彩矢も元気そうで。」


 彩矢は俺が高校生の時の彼女だ。…俺の「初めて」の相手でもある。そして、すごい可愛い。(ココ大事!)

 色々あって別れたが、俺に原因があったので仕方がない。今は連絡はとってないが家が比較的近いのもあって、稀に話したりする。友達、というには少し遠くて、ご近所さんくらいの距離、といったらわかるだろうか。まあ、そのくらいの関係だ。


 「その子は?」


 彩矢がユイの方を見て聞いてきた。


 「中学生か、高校生に見えるけど…まさか、」

 「違う違う、そーゆーのじゃないから!」

 「なーんだ」


 俺と彩矢は笑った。ユイはきょとんとしている。

 ああ、なんか懐かしいな…


 「彩矢は?今なにしてんの?」

 「私?私もデートだよ」


 彼氏できたのか。安心したような寂しいような…っていうか、さっき「私も」っていったな?!「も」って‥


 「おい!さっきから違うって」

 「ごめんごめん、冗談だよ、あーおもしろい」


 ひとしきり笑ってから彩矢と別れる。

 大体見えなくなってからユイが話しかけてきた。


 「結城さん、あの方は?」

 「あー、俺の元カノ。」

 「元カノ?」


 元カノと聞いてユイは首をかしげた。


 「えーと、ユイの世界でいうとなんだろう、結婚する前の段階で付き合った人?ってことか?」

 「‥え、こ、婚約者ですか?」

  

 話をきくとユイの世界には交際がなくていきなり婚約から始まるらしい。


 「うーん、そんな感じか、な?」


 ユイはこの世界の恋愛に興味をもったみたいだ。


 「結城さん、ちょっと思考を覗いていいですか?」

 「え?」

 「結城さんのいう元カノと私のいう婚約者にはなんだか違いがあるように感じるのですが、言葉にしづらいのでしょう。私が直接、確認します!」

 

 ユイの目がキラキラしている。


 なんか断りづらいし、いっか。


 「どーぞ」


 ユイは喜ぶと、目を閉じた。


 …えーと、俺はこの間何してればいいのだろうか。


 待っている間、ユイの顔を見つめる。

 うん、綺麗な顔してるな。やっぱり17歳って言われても頷くくらい大人っぽい。

 …あれ?だんだんユイの顔が赤くなってきたような。

 するとユイが目を開き、俺と目があった。

 だが、さっとそらされる。


 「…なんて、破廉恥な…!」


 あー、もしかして…


 「けっ、結婚する前にあんなことをするなんてっ!」


 ユイの声が上擦っている。


 「やっぱりか…ちょっと考えたけど、時代が違うし、」

 「でも!あんな…!」


 真っ赤になっている様子をみるとやっぱり15歳だなと思った。


 「でもさ、ユイ、結婚してんなら慣れていたり‥」

 「するわけないでしょ!」

 「スンマセン‥」


 おっと、セクハラだったかな今の質問。

 ユイをみると赤くなった顔を伏せていた。


 「もう、帰りたい…」

 「死ぬかもしれないのに?」

 「う…でも、このままじゃ結城さんや他の人のことを直視できない…」


 思春期男子かよ?!…あ、男子じゃないけど思春期だった。

 俺は軽くため息をついた。


 「しょうがない。慣れろ。要らなく興味をもって詮索したのは自分なんだから。」

 「ううう…」


 少し赤い顔をうつむけて、ユイは小さく頷いた。




 


 

 



 


 


 


 




 

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タイムトラベラーと魔女 柳瀬 新 @shinjun

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