第7話 ユイ・ラギリエカ視点-1-

 きっとこれだけ結界を張れば見つからないはず…


 私は魔女狩りの手を逃れるために結界を何重にも張り、じっと壁を見つめた。

 結界を張るために伸ばしていた手を下ろす。


 「私、何やってんだろ。」


 ぽつんと一人残され、ただ立ち尽くす。


 目を閉じれば、妹や弟たち、叔母、叔父、そして両親の、あまりにも残虐な方法で殺されていく姿が。

 耳を塞げば、魔王の高笑い、苦しみに耐えきれず殺してくれと叫ぶ国民の声、そして子を失った母親の慟哭が。


 もう、何も感じない。


 私は、何で生きているのだろう。

 私の大切な人たちは皆、死んでしまったのに。

 死ぬべきなのは、私なのに。


 私は、史上最強の結界を造り出した「手」を見つめる。


 小刻みに震えている。

 この力がなければよかったのに。

 魔王に嫁がなくても生きていけるような世界だったら良かったのに。

 いっそのこと、私が生まれなければ。


 ーー魔王は死んでいたのに。


 なんで、私は「ユイ」として生まれてしまったのだろう。


 自分を支えていた何かが切れた。

 足から力が抜け、地面に膝を付く。

 もうすでに枯れたはずの涙が溢れる。

 

 ……もう、止めよう。


 今更泣いても、今更後悔しても、もう、何もかわらないのだから。

 最期くらい、後悔しないように。


 「ユイ・ラギリエカとして、死のう。」


 目元を拭った。

 その時。


 「あのー」


  ……っ!!


 「なんでここがわかったの」


 私の残りの魔力をつぎ込んだものなのに。

 そいつは少しおどおどしていた。


 ふう、と肩の力を抜く。


 この人に殺されるんだ。





 ーーなぜか、嫌じゃなかった。

 

 

 

 

 

 

 

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