セイヨウフウチョウソウ

巫琴莉莉

セイヨウフウチョウソウ

暗くなったばかりの夜空にドンッ!と大きな音を立てて花のようにきれいな光が僕と君を照らす



さわやかな風が緩やかに流れると、君の甘い香りとともに靡いた髪



ジャスミン・コチョウラン・サクラ・モモ



どの花も君に似合う



時は早いもので最後の花のような光が打ちあがった



その光は今までよりも大きく、きれいに咲いた



まるで地球を包み込むように



「きれい」



不意に言った言葉は本当の最後の花の咲いた音に消えていった



まるで今は言うべき時ではないというように



君は地方なまりの言葉で



「なにか言った?」



「どうしたの?」



などと言ってきた



今思うと、本当の最後の花火に助けられた気がする



本人が目の前にいるのに



恥ずかしい...




「今日は花火大会、誘ってくれてありがとう。楽しかった!」



「こちらこそ、一緒に来てくれてありがとう」



「初めての東京、心配だったけど、あなたのおかげで安心して来れた」



「それはどうも。」



「今度はうちに来てね」



「あぁ。空いてれば行くよ」



「いきなりだけど、…君に決めた!」



「えっ?なにが…?」



「それは教えなぁ~い」



「えぇ~」



「とりあえず、私、君に決めたから」



「う、うん」





えっと、今日の手紙…



ん?花?



『初めてなのでびっくりしたかな?これから、毎月あなたの家に花とメッセージを届けます。』



『9月。秋になりましたね。今月はこないだ花火をみたので、花火のように咲く花としてセイヨウフウチョウソウという花を贈ります』



本当だ。こないだ見た花火にそっくり。



『10月。今月は私が好きな花のうちの一つ。コチョウランという花を贈ります。』



『11月。もう、今月で秋があっという間に終わってしましますね。ちなみに私は秋が一番好きなので悲しいです。今月はライラック という花を贈ります。』



『12月。もう、冬ですね。ついこないだあなたと花火を見た気がします。今月はレンゲソウという花を贈ります。間違えても草だと思わないでくださいね』



『1月。今月はマネッチアという花を贈ります。この花はマネッティアとも読むらしいです。』



俺がおかしいのかこの頃からだろうか字が変わってきたのは。



『2月。今月で冬も終わりですね。さて、今月はヘリクリサムという花を贈ります。私はこの花の形が好きです。』



『3月。今月は白いヒヤシンスという花を贈ります。白いヒヤシンスはあんまり見ないんじゃないでしょうか。』



『4月。今月はサクラという花を贈ります。春といえばやっぱりこの花じゃないんでしょうか。』



『5月。今月は一足早いですが夏の花、ブルースターという花を贈ります。』



『6月。今月はハナミズキという花を贈ります。この花は一回は聞いたり、見たことがあると思います。』



『7月。来月でこのやり取りを始めて一年になりますね。今月は私が好きなマリーゴールドという花を贈ります。』



『8月。私の諸事情で勝手ながら、今月で最後にさせてもらいます。ちょうど一年なので区切りもいいでしょう。なんか、最近字が汚くてすいません。


今月は一年記念として、一番最初に贈ったセイヨウフウチョウソウという花を贈ります。


ちなみになぜ今月だけ朝に届いたかは秘密です。


さようなら。お幸せにね。また、逢える時まで。』



また、逢える時までってどういうこと?


まって、今まで届いた花の花言葉って…



スマホをすぐに取り出し、今までに届いた花を全て調べた。


花に隠されたメッセージ


花言葉


毎月届いていた日にち


8日


最初と最後に届いた花


セイヨウフウチョウソウ


8月8日の誕生花


今日


8月8日


7月に届いた花


マリーゴールド


さようなら



気づいたら、彼女の家に行っていた


でも、誰もいなかった


近所のおばちゃんが教えてくれた


近くの病院にいると



「花日!」



「は、花音…くん…なんで?」



「なんでじゃない!最初から教えてくれたらよかったのに」



「だって、言いずらい、じゃん、心配したく、ないし、」



「そんなの関係ない!俺は心配したいんだ!だって、お、俺は花日のことがずっと好きだから!!」



「花音、くん、わ、私も、花音くんの、ことが、ずっと好き、だった、よ」



「花日、それはもっと早く言ってほしかったな」



「ごめんね。私が悪いの、本当に、ごめん、なさい」



「あやまるな!花日は悪くはない!は、花日はいつもきれいなんだから、笑って」



「ゲホッ、ゲホッ、ビチャ、」



バタンッ



「花日!大丈夫⁉」



な、ナースコールを!





20××年8月8日


石井 花日


永眠。





俺は冷たくなった彼女の唇に口づけをした





『もし、来世で生まれ変わったら、次こそ健康で幸せに花音くんと出会って、付き合って、結婚して…って暮らしたい。』




                                             fin.

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セイヨウフウチョウソウ 巫琴莉莉 @mikoto_rirei

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