第49話 大樹の決断 if 後編


前編に続きます。


―――――


 大樹と久々に朝からデートだ。今日は、新居を探しに行く。仕事の事もあるから、ここからそんなに離れられない。取敢えず、駅前の不動産屋を当たってみようという事になった。

 

 花屋が開いている。あっ、桂。店の前で、お客さんに対応している姿を見つけた。


 あっ、大樹さん。絵里奈さんと一緒だ。

無視するのも失礼と思い、ぺこんと頭を下げると絵里奈さんもぺこんと頭を下げた。

大樹、私を見たままにしている。私も彼から目が離せなかった。


 あれ、花屋の子だ。挨拶して来ている。私もぺこんと頭を下げてお辞儀した。

大樹は、えっ、えっ。視線が、花屋の子から動かない。

花屋を見た。花屋の子が、大樹を見つめたままだ。二人で見つめ合っている。

えっ、どうしたの。私は、私は、大樹。


「大樹、行こう」

「・・あっ、うん」



絵里奈が怒って、早足で家の方に戻って行く。

「絵里奈、どうしたの。今日は新居を・・・」

「大樹、自分の胸に手を当てて、良く考えてよ。今日は、帰る。新居なんか知らない」


あちゃー。完全に怒っている。さっき、桂と見つめ合ってしまったこと、怒っているんだろうな。


追いかけて、

「ごめん。絵里奈」

「何が、何が、ごめんなの」

「それは・・」

「言えないじゃない。大樹の胸の中に有るものが、言えなくしているんじゃない。私達婚約したんだよね。大樹、私にプロポーズしたんだよね・・・。なのに、何故なのよ。私より、そんなに花屋の子の方がいいの」


大粒の涙が出て来た。家に帰ろう。走り始めると

「絵里奈。待って」


絵里奈の腕を掴んだ。

涙目で、思い切り悲しそうな顔で僕を見て来る。

「絵里奈。ごめん。さっき、彼女を見た時、いや、良い訳はしない。桂の事が胸に有った。いや残っていた。だから、つい見てしまった」


腕を持ったまま、思い切り頭を下げて謝った。

「ばかー。ばか、ばか、ばか。私は、大樹の何なのよ」

頭を下げているから背中を開いている方の手で思い切り叩かれた。遠慮していない。

「ぐふっ」


胸を押さえて苦しそうな仕草をすると

「えっ、大樹、大丈夫」


覗き込む様にしてくる絵里奈の体をしっかりと掴んで、手を背中に回した。

「え、えっ、大樹、何を」


僕は、絵里奈の唇を自分の唇で塞いだ。周りの目なんか、どうでもいい。

「う、うっ、うーん」


絵里奈が、僕の背中に手を回してきた。

どの位、口付けしていたのか、分からない。唇を離すと、

「なによ。いきなり」

「絵里奈は、僕の婚約者。僕と妻となる女性。僕が一生守る人(女性)。これが答えだよ」


・・・・


「ばーか。ばーか。大樹のばーか。私の大切な旦那様・・・」


こんどは、絵里奈から口付けをして来た。


少しの時間の後、唇を離すと、バックからティッシュを取り出して、僕の唇を拭きながら

「私を妻とするなら、もう花屋の娘とは、会わないと約束して。あそこで花を買うのも禁止よ。約束できる」


一通り拭き終わると

「どうなの」

じっと見つめて来る。


「約束するよ。絵里奈」

「じゃあ、新居一緒に探してあげる。ふふーん」


取敢えず、その日は、隣の駅まで歩いて、不動産屋を見た。


その日の夜、

「ねえ、大樹。子供作ろう。結婚式まで、後一ヶ月だし。誤差範囲だよ」

「・・・・」

「だめー?」


僕の体の上に乗っかりながら、行って来る絵里奈に

「だめ。新婚生活楽しめないよ」

「でもー。今日の様な事もあるしー」

「もう会わないと約束したから」

「・・分かったー」


そのまま、口付けをして来た。絵里奈の大きな胸が、苦しそう。



家までと言ってもお向かいだが、絵里奈を送り、自分の家に入った。

「ただいま」

「あっ、お帰りなさい。お兄ちゃん」


妹が、僕の顔をじーっ見て来る。

「どうかした。僕の顔に何か付いている」


「ふふふっ、もう。近所で噂よ。絵里奈さんとお兄ちゃんのバトルと大キッス大会」

「えーっ。誰か見てたの」

「当たり前でしょ。真昼間から、公道で大きな声上げて、キスするなんて。お母さん、お隣さんから聞いて顔赤くしてたわよ」

「あちゃー」

おでこに手を当てながら、絵里奈も同じこと言われているんだろうな」


自分の部屋に戻ると、スマホが震えた。絵里奈だ。

『はい』

『大樹も言われた。朝の事』

『妹から聞いた』

『お母さんが、公道で派手な事は控えてねって、後は・・・・って感じ』

『まあ、あの時はね』

『大樹が悪いんでしょう。でも仲直り出来て良かったけど。あのままだったら・・・』

『ごめん。絵里奈』

『今のごめんは、何に対して』

『絵里奈、勘弁して』

『じゃあ、明日の日曜日も迎えに来てね』

『分かった』

通話が切れると

はぁー、先手を打たれた。尻に敷かれたくないなー。


一か月後、家族や親せき、友人、会社関係者に祝福されて、僕達は、結婚した。

新居は、路線を変えたが、歩いても三十分と掛からない所にした。


桂の事は、あの後どうなったか。分からない。冷たいかもしれないけど、僕は絵里奈を選んだ。これで良かったんだ。


 絵里奈には、内緒にしているこの事は、心の奥に仕舞い込むことにした。



―――――


如何でしたでしょうか。大樹の決断のif編です。

本編分だけだと、どうしてもしっくりこなく、if編を書き上げました。

如何でしたでしょうか。



長い間、お読み頂き、大変ありがとうございます。


次の作品も考案中です。また読んで頂ければ幸いです。



面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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幼馴染と花屋の娘 @kanako_01

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