28.「孫子」第十一章・九地編/4
「九地」の概念は、基本的に兵士の気持ちや士気と連動しています。気持ちが変わり士気が変われば、兵士たちは気合いも心持ちも変わってくるのです。
たとえば、敵地に深く入り込んだら、何があるか分かりませんので、自然と団結するでしょう。一方で自国付近をうろうろしていれば、恐怖や故郷いとしさのあまりに逃げ出す兵も多く出ます。
基本的に、敵地は総て(安全地帯ではないという意味での)「絶地」という言葉にまとめることができます。「九地」の中では「衢地(くち、国境の入り組んだ先)」や「重地(敵国深く入り込んだ場所)」「軽地(国境を少し越えたところ)」「囲地(見知らぬ袋小路)」「死地(行くも戻るもままならない場所)」などが「絶地」に当たる場所です。
この「絶地」は特にリスクの高い場所なので、他の四条件に当たる土地とは別に、慎重に慎重を重ねて行動すべきです。
「衢地」や「重地」「囲地」「死地」ならまだしも、軽地でも気をつけろ、とは不思議に聴こえるかも知れませんが、ここは兵士が逃げ出しやすい場所なのです。ゆえに、兵士がうっかり戻ってしまったり、あるいは意図的に逃走しないように、厳重に軍を管理して、離脱者が出ないような措置が必要なのです。
同様に、「争地(紛争地帯)」では先んじた者が有利なので、軍を急がせましょう。
「交地(街道沿い)」では周りから攻められる可能性が高いので、守備を固めて慎重に動きましょう。
「衢地(国境地帯)」では、迂闊に外国へ介入の意図を与えないために、(君主や文官を通じて)外交ルートを探り、同盟を組んでから進むべきです。
「重地(敵国深く入り込んだ場所)」では補給線の確保を第一に考えます。
「圮地(ひち:森林や山岳地帯や沼沢地など阻碍要因の多い場所)ならば、兵士がそこで攻撃を受けないために、一気に通り抜けます。
「囲地(袋小路)」ならば、戦った方が生き残りやすいので、あえて退路を断ちます。
「死地」については言うまでもなく、「逃げるよりも戦った方が生き残りやすい」と把握させることが重要です。
そもそも兵士の心理として、囲われたら突破するために戦いますし、武器がすぐそこまで迫ったら激鬪しますし、それに、危険であればあれこそ、将軍のような戦いのイロハに通じた者の言うことを素直に聞くようになります。
そうした状況に追い込むことがまず第一、と言うのが、孫子の述べたいところでもあります。
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