12.「孫子」第六章・虚実篇/1
戦場の奪い合いは、大変です。
もちろん先に有利な陣地を見つけてそこへ駆け付けられるのが一番ですが、これは動きや勢いよりも、純粋にスピードの問題です。スピード勝負に勝った者が有利になり、負けた者が不利になる。
ですから、相手の軍を攪乱して動きを牽制できれば、それに越したことはありません。
相手の攪乱は、少なくとも陣地の有利不利を覆すほどには大事です。
主導権は自分が常に握っていなければ、なりません。
それは相手から見る利害のコントロールと言い切ることもできましょう。
利あれば向こうはおのずから動く。
害あれば向こうはおのずから止まる。
究極的には、そういうことです。
◇◇◇
攪乱は、大事です。それをするのとしないのとでは、向こうの疲労度が違います。充分に攪乱してやれば、十全の敵を疲労困憊にすることも難しくはありません。
相手の兵站を崩してやれば、補給線が途切れて資材の補充もままならなくなるでしょう。
誘い出すのも足止めするのも、総てはこの「どう相手を攪乱してやるか」にかかってきます。
攪乱の主軸は、どう神出鬼没を「演出」するかです。
相手の裏をかいて、出る筈のないところに出て、しかも疲労度は低い。
そのためには、「ここを通れば相手に見つかることなく進軍できる」という場所を真っ先に見つけることです。そうすれば、相手は「いつの間に近づいていたんだ!」と驚いてくれることでしょう。そこに付け入る隙ができます。
同じように、攻撃も守備も、相手が予想だにしていなかったところを突き、相手が思いもよらない抵抗ぶりを見せてやることが肝要です。
相手は、こちらが戦争上手であればあるほど、どこを攻めて良いか分からず、どこを守れば良いかを見抜くのが難しくなる筈です。
それはすなわち「無形」と「無音」の神髓の如し。
ひたすら叮嚀な運用を考えれば、相手はどう攻めれば良いか分からぬ陣を前に困惑するでしょう。同じように、ひたすら相手に情報を与えぬような戦い方を心がければ、相手の機先を制することができます。
「相手の運命を制する者になれ」
孫子はそう述べています。
大事なのは、必要な情報は相手に攫ませまいぞ、とする慎重で大胆な運用です。
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