4.「孫子」第二章・作戦篇/1
孫子は、「戦争は、人もカネもモノもそれ以外もムチャクチャ消費するよね」と言っています。
特に遠征などは、物凄く、湯水のようにドカドカ国力が消費されます。
戦闘機や輸送車の準備、充分な兵器や膨大な数の兵士、それらが費消するさまざまな補給、などを計算すると、電卓を抛り投げたくなるような莫大なリソースがかかります。ちょっとでも良い装備を頼む、となればなおさらです。
そうした装備充実、補給充分の戦線を、前へ前へと動かす――となると、前線も銃後も疲弊するばかりです。
そんな状態で長期遠征に出たらどうなるでしょう。
まず、国家財政は目に見える形でどんどん悪化します。
そして兵士といえども人、長年戦場にいれば疲れますし、鋭気もみるみるうちにくじかれていくでしょう。
そこに補給不足や報酬遅延などの報告が入れば、そうした情報をつかんだ諸外国はそこに付け込んで襲いかかり、戦線はカオスになります。
もうそうなったらダメです。どんなに頭の良い人間がいても、こればっかりはどうにもなりません。どう後始末つけるのか、どう収拾をつけるのかすら目処が立たなくなるでしょう。「あかーん」状態になるわけです。
ですから、戦争には『拙速』――多少抜けたところはあっても攻略速度が命、みたいなところはあっても、『巧久(こうきゅう)』――長く強く戦い続ける、というのはありません。それほどに、戦争は短期決戦が是というところがあります。
充分に考えられた長期戦よりも、粗はあるがすぐに終わらせる短期決戦こそが、国の状態を良い方に維持するための大事な部分です。
そもそも長期戦――とは言っても、そんなものが国家の利益になったことなど一度たりともないのです。だいたいはさっと出てさっと戦い、終わればすぐに引っ込む(もしくは合法的に駐屯して平和な状態を保つ)。これが大事なのです。
戦争にはそうした『長期戦リスク』や『財政破綻』の危険が伴います。
ですから「戦争を知る、戦争の厄介な部分を知る」というのは非常に大切なのです。
厄介な部分を知らない人に、戦争の本当の『利益』などは分かりません。
戦争の持つ正の部分も負の部分も知り尽くしてこそ、国家は戦争へと至る道を辿ることができるのです。
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