子のままに
@kawanaga
第1話
生まれ変われば、この肉体から離れることさえできれば何かか変わるのではないかと夢見ていた。
たいていの人は夢見るだけで終わることが、現にわが身に降りかかり、夢にも思わなかった細部に翻弄され、あろうことか男を好き......いや、そこまではまだ、まだ、置いておこう。ここで問題なのは、これが20年に渡って色褪せないということだ。これが、もしこれからも色褪せないなにかであるならば、私は、
今生では幼馴染というものがいた。そして、ものごころを前世で覚ましていた私は、保護者面を張り付けていれば、子どもらしさを演じやすかろうという思惑もあり、隣の男の子の世話を焼きまくった。焼きまくってしまったのだ。
おはようからおやすみまで、子どものガワを被せられた私は大人からの子ども扱いに耐えかねて大人の自意識が連続しているからこそ、幼馴染の彼以外を拒絶して大人ぶることで平静を保っていた。
この大人ごっこは、なんやかんやで共々の親が実刑を科され、親権をはく奪される7歳の冬まで続いた。実は、7歳まで私は私のことをあの子にママと呼ばせていたし、あの子もなんの疑問も持たず2歳年上の私をママだと思っていたのだ。
うー
あの頃のあの子の可愛さといったら
「グェ」
「こっちを見て」
いや背後から首を絞められているのだが、目が見なくても怖いのだが!?
なんやかんやの養育時代にショタコン属性に開眼したからか、デカい男は正直苦手だ。思わずこごまる私を締め付けるように抱くのが、身長体重頭脳執着がスクスク育つ(私がここまで育てました!!)幼馴染、澄川廉だ。
意識が遠い遠い過去に旅立つ。手がわきわきと胸に伸びていることもあの頃であれば、おやおや可愛いねで済むが、私は35キロしかないのに筋肉わりわり(私がここまで育てました!!)で身長が178.6なのに80キロ近い廉に組み付かれると、鋼鉄で拘束された気分になる。
いやいや意識を飛ばしている場合ではない。体は無理なら言葉で、それが知恵ある獣である人間の武器。なんとかして説得を
「ば、晩御飯をつくるから後で、ね?」
「じゃあ、晩御飯の前にお風呂に入ろうか」
アッハイ。
そういうことになった。
暖かい。人肌と湯の温かさ。膝の上に乗せらせて湯よりも穏やかな温かみの人肌がより一層心地いい。ママとして与えたもの。そして、今与えられているもの。
「つまり、廉はママだった!!」
「いや僕はパパだよ」
ぎえー(ちょうど太腿にあたる感触については記述を差し控えさせていただく)
「まったく木野実は、風呂に入らないでシャワーで済まそうとするんだから。僕は木野実には体を大切にしてほしいな。これからは1人の体じゃあなくなっていくんだからね」
「いやいやいやいや、1人の体ではないとは?! 私は未来永劫一人一生一人人間だが?!」
みりみりと締め付けられる。腕の逞しさに性欲の萌芽を感じるとしみじみと転生したんだなあとなる。
「むらむらしているでしょう」
「しておりませんが」
してはおりません。
「ふふ。大変だったなあ。身体を別人感を引き出すまで改造するのは、でもその甲斐あってこうやってむらむらとしてもらえるんだから大した苦労でもなかったね。幼馴染というのも善し悪しだね。距離が近すぎるせいで、そういうスイッチが入りにくかったから」
「いや、だからしておりません。してはおりませんこと明白明快でございましょう」
にっこり。にこにこ。
あっ
鳥の鳴き声がする。
「ニワトリちょっとうるさいよね」
今ごまかそうとしたのが台無しに、ニワトリでなければセーフだと思ったが。
「はあ。こんな近親相姦人間に育ててしまうとは」
「結婚しているのに、毎回セックスのあと近親相姦言われるのは不本意だな。
澄川木野実さん」
子のままに @kawanaga
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