本レビューでは、ここで連載された短編に限らず、『好きって言えない彼女じゃダメですか?』全体へのレビューを企図しています。
まず、本作はラブコメです。ラブコメというゲームの要件を規定すると、
⑴ある一定の状態を維持すること(またはある状態に至ること)をキャラクターは目指している(目的→恋人になるまたは維持するなど)
⑵だが、そのための最も効率的な手段は禁じられている(本作でいうと素直に好きということ→ゲームを創り出すルール)。
⑶このゲームにおける勝利とは、上記のルールに従って、非効率的な手段によって目的を達成すること(好きと言わずに目的を達成する)。
以上となります。
本作において、ヒロインである帆影歩は滔々と極論を語ります。これは、一種のラブレターとしての機能を有していますが、それは第三者として読んでいるはずの読者にすら伝わることはありません。しかし、読み進めるごとにその機能が果たされていることに新巻天太を通すことで気づいていきます。ここには、ゲームにおける敗北と勝利があります。われわれはラブレターを解読するに従い、このゲームの趨勢を読むことができるようになるのです。そして、こうして小説に浸っているとき既に私はこの小説を好きになっているのでした。