縄張り争いに敗れた野良猫ブルーノと、その幼なじみの飼い猫トニーの、再会と友情の物語。
猫の視点から猫の人生を描いた、ほのぼの動物もののお話です。いや動物ものには違いないのですけれど、物語そのものは結構ハードボイルドしている、というのが楽しいところ。
アウトローとしての人生(猫生)に滲む覚悟や美学、また幼なじみが一途に寄せてくる憧れの眩しさなど、シリアスな人間模様(猫模様)を描きながらも、しかし「いかんせん猫」という点から生じてしまうほのぼの感。そのギャップが楽しいというか、個人的には非常に気持ちよく読めました。
一般に、アンダーグラウンドな世界には独特の魅力があるものですが、しかし必然的について回るのが、その独特の陰惨さや重苦しさ。しかし本作においては、この「猫」という設定のおかげで、そのネガティブな部分だけが見事にパージされています。それでいて、彼らのドラマや魅力自体は、あくまでアンダーグラウンドに生きる人間(猫)のそれ。
血や暴力やエグみグロみが苦手な人でも、安心して味わえるノワール作品、という意味で、これはぱっと見の印象よりもだいぶすごいお話なのでは、と思わされた作品でした。