真面目な殺し屋真堂くん

ウルレア

第1話

 俺の名前は真堂漸。一石高校に通う高校一年生。偏差値は71。(ここに通っているのは家から近いからだが)そんな俺には秘密がある。それは俺が探偵だということだ。俺の家は昔から駄菓子屋を営んでいる老夫婦の上の部屋を借りている。ここは事務所兼自宅。毎日それなりに依頼は来ていて生活はできている。


「漸くーん!おはよう!学校に一緒に行かない?今日は漸君のためにお弁当作ってきたんだよ!」


この元気な女子は俺の同級生で幼稚園からの幼馴染、早間光梨だ。執拗に絡んできて正直困っている。そして困る理由はもう一つ.......


「その...今日もお弁当一緒にたべない?」


頬を赤らめながらの上目遣い、、この見え見えの好意である。俺は探偵だからすぐに気がつく。仕草さ言動、ちょっとした間や雰囲気、高校に入ってからは控えめなネイルやリップ、香水なんかつけて。こういうことしたら誰でも気がつくだろうが。今日も今日とて早間の無駄話を聞きながら登校してる途中である。


「おっはよー ヒカリン!漸!」


こいつは早間の友達の伝道熱海。こいつは見た目とは裏腹に勉強が出来る。


「おはよう漸。光梨ちゃん。」


そして伝道と一緒に登校してきている奴が幽堂寺力也。こいつは見た目爽やかなのにオタクででやたらITに詳しい、、、俺の次に。俺はこの陽キャ軍団に溶け込めているのが素晴らしいと思う。こいつらは自慢の友達だ。


校庭や体育館から朝練をしている部活動の掛け声が聞こえる。


 「危ない!」


朝練をしている野球部からボールが勢いよく飛んでくる。それを俺は右手でやすやすと止め、投げ返す。


「相変わらず運動神経いいな、漸」


と幽堂寺


「ほんっとそうねえ。帰宅部なのになんでそんなに恵まれてるんだか...。はあ、私なんか最近あんまりいい記録出せていないし。なんならうちんとこ来る?」


と伝道。


「そうだね!うちに来てくれたら全国までいけるよ!」


と早間。


「俺は仕事もあるしそういうの興味ないから。」

「そうか、」


とあからさまにしょんぼりしている。


「じゃあまた、漸、光ちゃん、熱海」

「またねー力也君、漸君。」

「またあとで、漸君、リッ君。」

「またな、早間、幽堂寺、伝道。」


幽堂寺はG組、俺はH組、早間と伝道はC組だ。学校が終わっても三人は部活動があるので、四人の都合が合うときに遊ぶくらいだ。



 話を少し戻す。俺が運動神経がいいのは理由がある。探偵をしているというのは表向きで、裏では殺し屋をやっているからだ。殺し屋になったのは親のせいだ。俺の父親は殺し屋で幼少期から鍛えられてきた。なりたくもない殺し屋ではあるが色々役に立っているのは事実であるので、なんとも言いがたい。だが、周りには「探偵には体力が必要だから」と言って誤魔化している。正直なとこと目立ちたくないが仕方ないか。俺は学校でも成績優秀。そしてモテる。異常にモテるのだ。モテないようにかっこいい服は着ずにいつも動きやすいジャージなんだが、、、取り巻きがいるのを羨ましがったり、告白されたりするのが嬉しいと思う奴もいるだろう。しかし、それは実際そうなったことがないから言えるのだろう。うっとうしいし告白に勇気が要ると言うが、断る方も悩むものだ。今日も今日とて放課後に先輩に呼び出された。もちろん告白だろう。


「私と付き合わない?」

「ごめんなさい、先輩のことよく知らないので友達からでいいですか?」

「、、、うん、友達からよろしくね、わざわざ時間取ってくれてありがとう。またね。」


先輩が恥ずかしそうにどこか嬉しそうに去っていく。


「もうでできていいぞ。」


ギクッっという擬声語が似合うほどの驚いた様子と共に光梨が出てくる。


「そ、その、、どうだった、、、?」

「いつも通り断ったよ。」

「相変わらず漸くんは薄情ですな〜」


安心したようににやけんなよ、そういうところが分かりやすいんだよ。ってか、周りが散々告白する割にずっと俺のことが好きなおまえは告白しないのかよ、、まさか俺が勝手に勘違いしてるとかないよな?


「今日も依頼がある。サッサとかえんぞ。」

「うんっ」

「今日の夜の鍋パちゃんと時間通りに来てよ〜いっつも遅れるんだから」

「分かった。」


 今日の探偵のほうの依頼は二つか、簡単だな2〜3時間あればおわる。サクッと終わらせるか。



 、、、まさか5時間かかるとは、いくら俺でも猫が穴に落ちてたら時間食うな。よりにもよって今日かよ、いつも遅れて光梨のお母さんには悪いな。母親のいない俺に光梨のお母さんはいつもよろしくしてくれる。現在時刻20時。ノンストップで家へと飛び、汚れた服を40秒で着替えてそのまま家を飛び出しはしって30秒ほどで光梨の家に着いた。インターホンを鳴らす。聞きなれたメロディー。光梨の足音。これは怒っているな。


「ぜ〜ん〜!今日は遅れないでって言ったよね?!もう待ちきれなくて始めちゃう所だったよ!」

「悪かったって。これお詫び」


そうして差し出したのは今日の猫探しの依頼主のマダムがくれたマドレーヌ。


「ふ、ふ〜ん。もので釣ろうっても私はそんなにチョロくないんだからね!今日の所は許してあげる」


ふっwチョロい。光梨家と共に楽しく鍋パ。あっという間に時間は過ぎ、光梨の部屋。


「今日は悪かった。」

「気にしてないって、でもなんで遅れたのかだけ聞いておこうか」

「依頼が長引いてね」

「依頼か〜、それ責めれないじゃん」

「いや、2〜3時間で終わると思ったんだけどな〜手こずった」


皆で楽しく晩ご飯を食べたあと光梨の部屋でしばらく談笑した。時刻は10時半。


「明日も学校あるし帰るよ」

「そうね」

「早く寝ろよ。おやすみ」

「また明日、おやすみ」


はあ〜さてと今日の仕事第二部の始まりだ。俺の裏の仕事の依頼主は知り合いの刑事やお偉いさん、金持ちがほとんどだ。

 暗号文を読む。ヤクザの組の薬の回収か、比較的楽で良かった。仕事着のスーツに着替え闇に溶ける。事務所の屋上からピッキングで鍵をあけ、見つからないよに薬を探す。やましいことがある奴らは夜に行動するものだ。バカ笑いしながら酒を飲んで騒いでいる。その隙に刑事によると明日の取引に使われるという薬入りのスーツケースを回収した。『任務完了。いつもの所に置く』暗号で手短に報告を済ませ。スーツケースを指定の位置に隠す。

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