世界で唯一、けれども孤独ではない

 とりあえず第一部のラストまで読めたので、そこまでの感想です。


 今年の春に小説を書き始めたばかりだそうで、たしかに文章に気になる点は目立つと思いました。僕も偉そうなことを言える文章力ではありませんが。
 しかし、その不慣れな点を差し引いても余りあるほどキャラクターとストーリーは魅力的。

 女性しか魔法が使えないはずの世界で何故か魔力を持って生まれた少年。強い魔力を持つ男性恐怖症の少女。特殊な家柄らしい隣の席の友人。ふわふわしていて謎だらけの掴みどころがない天才。子供達を見守る周囲の大人もそれぞれに個性があり、しっかりと自分の考えを持って動いていて、彼等がこの物語の世界で本当に生きているのだと感じさせてくれます。

 陰鬱な展開になりそうな不穏な要素も散りばめられているのですが、なんとなく大丈夫じゃないかなと思える優しい雰囲気も作品全体から漂っています。もちろんただの私見で実際にどうなるのかはまだわかりませんが、そんな不安も今のところは楽しみの一つ。

 ファンタジーで学園で女の園に男子が一人。要素を抜き出してみるとまるでハーレム物が始まりそうですが、実際にはそんなことはありません。主人公の香坂 環君は年齢の割に思慮深く、また純朴な性格です。弁えるべきところは弁えているし、なんなら逆に思春期の少年としては気遣いと遠慮が過ぎてやしないかと思うこともあります。
 そんな子なので安心して見守れますし、彼の夢を応援したくもなります。とても大きな才能の持ち主のようですが、彼はきっとその力に見合う責任感も持ち併せているでしょう。

 一読者としては、彼や彼の周囲の人達が幸せになってくれたらと願いつつ、今後も拝読していこうと思います。
 まっすぐな子の一所懸命な姿を見るのが好きな方は、この作品に一度目を通してみてはいかがでしょうか?

 拙いレビューですが、良作がより多くの人に知られるキッカケになれたら幸いです。